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大豆・麦

大豆の収量・品質向上を実現するための栽培技術に関する調査(福岡県 平成29年度)

背景と取組みのねらい

 福岡県京築地域の大規模農家、集落営農組織は、水田の戦略作物として大豆を作付している。しかし、当地域は県内でも収量が低く、その最大の要因は、ほ場の排水不良による播種作業の遅れや出芽不良、生育量不足と考えられる。そのため、ほ場の排水性の向上で適期播種を実現し、湿害を回避することで収量を上げ、収益性を改善することが地域の重要な課題となっている。
 そこで、平成29年度に以下の取り組みをおこなった。
(1)放射状集水暗渠による、ほ場排水性の向上
 湿害回避による収量性の向上
(2)一工程(一発)播種による播種作業の省力化
 トリプルエコロジーによる正転一発耕起播種及びアップカットロータリによる耕うん同時うね立て播種と、通常ロータリ二工程播種との比較

対象場所

●福岡県築上郡築上町
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 築上郡築上町は、福岡県北東部に位置し、周防灘に面する平野部と、山間部の谷沿いの農地に水田が広がる、稲作が盛んな町である。小原地区は町中心部から東に約3kmにあり、標高30~60mで平野部と中山間地の境目に位置し、真如寺川に沿って農地が開けている。気候は瀬戸内海式気候に属し、温暖で梅雨を除き降水量が少なく、夏期には干害を受けることもある。一方で冬期には日本海型気候の特徴も見られ、降水日数がやや多く、日照時間が少ない。
 近隣の市町で自動車産業をはじめとする工業が盛んであり、南北にJR日豊本線、東九州自動車道、国道10号線が走り交通の便が良いため、兼業農家の割合が高いのが特徴である。

実証した作業体系(作業名と使用機械)

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暗渠の施工状況

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※クリックで拡大します

試験区の概要

●主な栽培基準
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●試験区の構成
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作業別の能率と効果

集水桝施工能率と効果
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集水桝の施工

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降雨後
初めて蓋を開けた時の様子


・集水桝の設置に塩ビパイプや砂利(バラス)などの資材費、バックホーの賃借料、人件費がかかるものの、ブロックローテーションで麦・大豆栽培を行うため、1作当たりの費用は実際に係る金額の10分の1程度と思われ、排水性向上に伴う生産の安定と、収量増により、所得の向上につながると考えられる。
・7月20日から記録した土壌体積含水率は、慣行区より常に低く経過しており、特に深さ20cmでは慣行ほ場が降雨後の含水率低下が少なく、排水されていないのに対し、施工ほ場では10cm同様に低下し、排水されていることが明らかとなった。

穿孔暗渠能率と効果
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カットドレーンmini

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集水桝から放射状に施工


・地表面から50cmの深さに、カットドレーンminiで穿孔暗渠を施工する計画であったが、もっとも硬い層にあたると上に押し返され、地表面から30cm程度の深さまでしか溝を掘ることができなかった。
・カットドレーンmini施工後のサブソイラの相乗効果で、ほ場の排水性は非常によくなった。


●型式
パワクロトラクタ(SL48PC)
カットドレーンmini

播種 能率と効果
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トリプルエコロジーによる播種


・降雨後の高水分土壌でも播種が可能であった。
・平うねだが、出芽は良好であった。
・トリプルエコロジーは、正転ロータリでー発播種ができるため、アップカットロータリでの一発播種よりも播種スピードが速く、作業効率が上がった。
・ロータリ幅が2.2mと広すぎるため、大型トラクタが必要となる。普及のためには、中型のトラクタでも播種できるよう、ロータリ幅を1.5m前後にした小型の播種機の開発が必要と考えられる。

●型式
一発耕起播種機トリプルエコロジー(KTBM2200E)

※写真・図はクリックで拡大します

成果

(1)播種について
・各区とも7月5日播種予定であったが、実証区1以外は3日前倒しで7月2日、実証区1はその9日遅れの7月11日に播種した。
・この間、台風及び活発な梅雨前線による集中豪雨で、7月4日から8日にかけ、5日間で   300mm以上の降雨があったため、7月2日播種は播種後2日以降大雨に遭う形となり、出芽率がやや低くなった。しかし、放射状集水暗渠を施工した区の出芽率は62%、慣行区では56%と、6%の差が出たことから、豪雨時の排水効果はあったと考えられる。
・また、実証区1は集中豪雨の3日後の土壌水分がやや高い条件下で播種し、播種翌日の7月12日にも12mmの降雨があったが、出芽率は71%であった。これは豪雨後の播種にもかかわらず、放射状集水暗渠及びトリプルエコロジー、サブソイラによる排水性向上効果と推察される。
・播種量は7月2日播きで3.6kg/10a、7月11日播きで4.3kg/10aとなるよう事前に調整したが、実測すると実証区1で4.7kg/10aと予定よりやや多く、実証区2・参考区・慣行区で6kg/10a前後と多くなった。

(2)生育について
・中耕培土は2回行う予定であったが、1回目の中耕培土で十分な土寄せができたため、2回目は省略した。
・主茎長について、生育期間を通して、播種日の遅かった実証区1が低く推移したが、最終的には慣行区との差は見られなかった。
・最下着莢高は排水対策を行っていない慣行区のみ低く、実証区間の差はほとんど見られなかった。
・㎡当たり莢数について、実証区1が少なかった理由は、開花期の過乾燥による花蕾の減少が原因ではないかと推察する。
・実証区1の開花期が他の試験区より遅れたのは、播種日の差であるが、成熟期は他の区と同じもしくは早くなった。
・8月下旬から9月にかけての降雨と台風の影響により中から甚程度の倒伏が見られた。
実証区2、参考区は生育量が多く主茎長が伸びていたため、風の影響を強く受け倒伏程度が大きかった。

(3)収量、品質について
・収量は、実証区2が最も多く、次いで実証区1、参考区であった。排水対策を行っていない慣行区は湿害を受け、㎡当たり稔実莢数、粒数が少なく、百粒重も軽かったことから、最も低収となった。排水不良による生育量不足のためと考えられた。
・品質について、実証区1、2、慣行区に差はなく大粒は1等で、参考区が悪く、大粒は2等であった。しかし、参考区の大粒比率が最も高かった。

成熟期及び収量調査
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(注):( )内の値は慣行区100に対する比率(%)
10a当たり 県および地域の平均収量はそれぞれ約170kg、90kgの見込み


品質調査
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経営評価
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実証区1:トリプルエコロジー一工程播種   実証区2:アップカットロータリ一工程播種
参考区 :アップカットロータリ二工程播種  慣行区 :正転ロータリ二工程播種


(4)病害虫および雑草について
・収穫時にはカメムシ被害による青立ち株も散見され、収穫物にはすべての区でカメムシによる吸汁害粒が多かった。また、参考区では紫斑病害粒がみられた。
・雑草では、ヒロハフウリンホオズキの発生が多く見られた。初期除草剤によってある程度の発生は抑えられたが、後期に発生したものが目立った。当初、万能散布バーを使用した雑草防除を計画していたが、大豆の生育が早く、また旺盛であったこと、万能散布バーを使用できる時期には目立った雑草がなかったことで、今回使用できなかった。よって、2回手取り除草を実施せざるを得なかった。大豆が大きく生長してからの散布はリスクを伴うことから、散布時期についての検討が課題である。

今後の課題と展望

(1)放射状集水暗渠
・カットドレーンminiは、硬い耕盤がある場合に施工深度が浅くなるため、改良が必要と思われる。また、表面の土壌水分が高い場合は施工が困難である。
(2)一発耕起播種機(トリプルエコロジー)
・トリプルエコロジーは、ロータリ幅が2.2mと広く、大型トラクタが必要である。普及のためには中型のトラクタでも播種できるよう、ロータリ幅を1.5m前後の小型播種機の開発が必要と考えられる。


●実証年度及び担当指導普及センター
(平成29年度 行橋農林事務所京築普及指導センター、農林水産部経営技術支援課)