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稲作

飼料用米の密播疎植及び深耕・多肥栽培による収穫向上とコスト低減効果の検討 (新潟県・平成24年度)

背景と取組みのねらい

 上越地域では、遊休地の解消と農家経営の安定を目指し、採卵鶏向けに飼料用米(籾供給)生産を推進しており、新規需要米の主要な取組として定着している。
 一方、飼料用米生産により所得を確保するには、生産コストの低減が必須であり、低コスト、多収穫生産技術の確立が急がれている。一方、全国的な生産拡大に伴い単価は下落傾向であり、単価の維持には実需者から求められるタンパク質含有率の高い高品質な飼料用米の生産が必要となる。

 低コスト、多収穫生産に向けた栽培体系を確立し、上記課題の解決を図るため、以下の組み合わせによる栽培体系の実証を行った。

① 密播疎植(播種量乾籾240g(計画量)/箱、栽植密度37株/坪)による使用苗箱数削減(10a当たり7箱以下)
② 深耕(15cm)による根域拡大及び多肥の組み合わせによる収量増加とタンパク質含有率向上
③ 粗耕起の追加による重粘土壌における耕うん作業効率の向上

 目標は、収量 800kg/10a(籾)、タンパク質含有率 7.0%、籾1kg当たり生産費:80円以下。

実証した作業体系(作業名と使用機械)

●品種 :どんとこい+いただき(主食用への転用防止のため5%混植)
●作型 :水田移植
●水管理  :地域の主食用品種の移植栽培に準ずる

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作業別の能率と効果

播種 能率と効果

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播種(4月18日)
実証区:播種量乾籾217g

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播種(4月18日)
慣行区:播種量乾籾137g

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緑化期(4月25日)
左:実証区 右:慣行区

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硬化期(5月1日)
左:実証区 右:慣行区


・実証区・慣行区とも緑化期間の気温が高く、軽度のヤケが発生した。硬化期も高温が続き、両区とも軟弱傾向となった。

・実証区では、慣行区に比べ苗丈がやや長く、乾物重がやや軽かったため充実度がやや低下したが、マットの形成は問題なく、田植えで特に問題となることはなかった。

・一部密播の苗箱を露地プールで育苗したところ、ハウス育苗に比べ苗丈が短く、乾物重も慣行区並の充実度が高い苗が育成された。

・このことから、育苗期間中、低温の心配が少ない地域では、露地育苗が密播の育苗に適していると推察された。

粗耕起 能率と効果
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 パラソイラによる粗耕起

・パラソイラは、一般的なチゼルプラウに比べ、作業後の凹凸が少なかった。

・消雪の遅れ等により土壌の乾燥が進まず、土壌水分が高かったことから、作業速度は時速2.5kgと、目標の速度より抑えての作業となった。
また、田植え以降の作業機の沈降を回避するため、作業深は15cm程度にとどめた。
当地域のような積雪地域では、収穫直後の9月上旬からの実施が望ましいと推察された。

・粗耕起の実施により、実証区の耕うん作業効率が向上し、粗耕起の効果が確認された。

●型式
パワクロトラクタ
KL53ZHCQMANPC2-P 53ps
パラソイラ(ニプロ)
170cm EPS400-K

耕うん 能率と効果

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耕うん前の圃場

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パワクロ+アースロータリー


・土壌水分が高く、両区ともロータリーの爪に土塊が付着するなどして作業効率が低下したが、目標の耕深15cmを確保できた(慣行12cm)。

・粗耕起の効果により、一般的な重粘土壌における耕うん(耕深15cm)速度(時速1.5km程度)に比べ、時速1.7~2.0kmと作業効率が向上し、慣行に対する作業時間比率は114%と少なかった(昨年度パラソイラを実施しなかった時は148%)。

●型式
パワクロトラクタ
KL53ZHCQMANPC2-P 53ps
アースロータリー(コバシ)
FTF200RT-OS
移植 能率と効果

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移植時の苗
実証区(上)と慣行区(下)

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田植え機

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水口側枕地が柔らかい


・移植当日は強風だったことから、欠株や一本植えを抑制するため、苗のかき取り量が少ない実証区は作業速度をやや落とし、移植精度を確保した。

・実証区は、疎植により苗補給回数が少なく、機械・人力の合計作業時間は慣行区に比べ少なくなった。
・密播のため、かき取り量を最低に設定にしたことから、使用苗箱数は10a当たり6.5箱と、慣行の半分以下に低減でき、目標の7箱以下をクリアした。

・移植直後の欠株や転び苗は、実証区でやや多かったが、栽培上問題となる程度ではなく、茎数確保への影響はなかった。

●型式
田植機(8条) EP-8D-F-R
こまきちゃんHSY85
(ロングキック1キロ粒剤)
箱まきちゃんCS-20
(DR.オリゼプリンス粒剤)
収穫 能率と効果
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コンバインによる収穫作業

・10a当たり作業時間は、実証区15分0秒、慣行区17分24秒で、倒伏の少ない実証区の方が短かった。

・実証区は、実収でも慣行区とほぼ同等の収量(875kg/10a)を確保し、目標(800kg/10a)及び前年実績(845kg/10a)を上回った。

•深耕により、根の分布が拡大したことで、土壌養分吸収量や生育後半の稲体活力維持に効果があり、
①疎植でも、慣行を上回る穂数を確保
②慣行に比べ㎡当たり籾数が多かったものの、後期栄養が高まり登熟歩合と千粒重が向上
③8月中旬以降の用水不足に伴い、干ばつの被害発生が懸念されたが、収量への影響はなかった。

•深耕に加え穂揃期追肥の施用により、玄米タンパク質含有率は目標の7.0%を確保できた。

•これらの要因により、密播疎植による飼料用米の高品質・多収栽培が実証できた。

●型式
コンバイン
ER108NSD4MSQW-C 

成果と考察

1. 重粘土壌において、深耕の作業効率を高めるため粗耕起を行ったところ、一般的な重粘土壌における深耕作業に比べ、耕うん作業効率が向上し、慣行区との比は114%と少なかった(昨年度パラソイラを実施しなかった時は148%)。

表1 耕耘時間及び作業速度
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2. 坪37株の疎植に加え、密播により植付け時のかき取り量を最低設定にしたことから、使用苗箱数は10a当たり6.5箱と、慣行の半分以下に削減できた。移植当日は強風だったため、苗のかき取り量が少ない実証区は、欠株や一本植えを抑制するため、移植精度の確保を図り、作業速度をやや落としたが、苗補給回数が少なく、10a当たり作業時間(機械作業+人力作業)は慣行区より少なくなった。欠株の発生は慣行区に比べやや多かったが、その後の生育に問題はなかった。

表2 移植作業の比較
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(クリックすると拡大します)

3. 深耕の効果により、慣行を上回る籾数を確保し、登熟歩合も向上したことから、収量は坪刈りで989kg/10a、実収75kg/10aと、慣行と同等以上となり、目標を上回った。タンパク質含有率は、目標の7%を確保した。
 また、疎植により無効茎の発生が少なく茎質が向上したことや、深耕の効果により後期栄養が維持されたことから、倒伏の発生はみられなかった。

表3 収量及び収量構成要素
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(クリックすると拡大します)

4. 苗箱数の削減により育苗にかかる費用が減少し、収穫量が増加したことから、籾1kg当たりの生産費は77円に抑えられ、10a当たり事業利益は慣行に比べ2,072円増加した。

5. 作業時間は1ha当たり47.7時間で、慣行に比べ6.6%低減した。特に使用苗箱数の低減による育苗期の軽労化効果が大きく、規模拡大効果も期待される。

対象場所

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 上越市三和区は新潟県の南西部、上越市の中央に位置し、ほぼ平坦な地形に水田が広がる農村地帯で、稲作を中心とした農業が主要産業となっている。
 冬期に降水量が多く快晴日数が少ない典型的な日本海型気候で、季節風の影響により大量の降雪がある。
水田は、基盤整備事業により、ほぼ全域で大区画化されており、生産の効率化が進んでいる。また、農地の流動化が進んでおり、1戸あたりの経営面積は3.8haと、新潟県平均(1.78ha)及び上越市平均(1.9ha)に比べ大きく、20haを越える大規模農家が多い。基盤整備事業等を契機に、農業生産法人の設立も進んでいる。

(平成24年度 新潟県農林水産部経営普及課、新潟県上越農業普及指導センター)