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農業用ドローンによる薬剤散布技術確立に向けた取り組み(鹿児島県 令和元年度)

はじめに

 農業用ドローン(以下、ドローン)の農業分野での利用は、農薬散布を中心に拡大してきており、特に水稲においては実装化が急速に進みつつある。
 鹿児島県農業開発総合センター大隅支場では、ドローンを利用した農薬散布技術の普及促進を目的に、液剤や粒剤の散布特性やダウンウォッシュ特性把握等の各種試験を実施している。この一環として、自己拡散型水稲用除草剤の散布、液剤散布時のアジュバント(展着剤)の効果について検証を行ったので紹介する。

ドローンによる自己拡散型水稲除草剤の散布

1.試験条件
(1)供試機
 ●ドローンMG-1K
 ●粒剤散布装置GS110

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(2)飛行方法
 ●M(手動操作モード)及びM+(手動強化操作モード)

(3)供試資材
 ●試験剤①:バッチリLX400FG (自己拡散型)
 ●対照剤①:バッチリLX1キロ粒剤
 ●試験剤②:ツルギ250粒剤(自己拡散型)
 ●対照剤②:イッポンD1キロ粒剤
 ●試験剤③:エンペラー豆つぶ250(自己拡散型)
 ●対照剤③:エンペラー1キロ粒剤
 ●試験剤④:レブラスエアー粒剤(自己拡散型)
 ●対照剤④:レブラス1キロ粒剤

(4)飛行速度
 ●試験剤:7~15km/h
 ●対照剤:15km/h

(5)飛行高度
 ●2~3m

2.供試薬剤の操出量
 水稲用除草剤1kg剤は散布幅4mに均等に散布することが求められるが、自己拡散型水稲用除草剤は速やかに必要量を投下することが求められる。
 供試した粒剤散布装置はシャッタ(薬剤タンク出口)と操出口(インペラへの落とし口)の位置が1kg剤用に設定されており、試験剤①の場合、操出量は、シャッタ開度60%でほぼ上限(760g/min)となり、その後、詰まりが発生した。操出口をシャッタ直下に変更することで操出量はシャッタ開度に比例し、2,190g/min程度まで増加した。供試した試験剤すべてが同様の傾向であった(図1)。
 また、粒径が特に大きい試験剤③は、インペラ回転速度を落とすことで破砕を防止することができた(図2)。

R1_sys_kagoshima_z2.jpg R1_sys_kagoshima_z3.jpg
左 :図1 操出試験例(試験剤①) / 右 :図2 破砕率(試験剤③)
※操出口位置3:通常位置、操出口位置15:シャッタ直下


3.作業時間
 試験剤はほ場のセンターラインのみに散布するため、作業時間は8.3min~22.8min/haで、対照剤の17.8~21.8min/haに比べ40~104%で作業が可能であった。
 また、操出口の位置を通常位置からシャッタ直下に変更し、時間当たりの操出量を増加させることで、試験剤③'散布の作業時間は16.4min/haとなり、試験剤③の22.8min/haに比べ72%で作業が可能であった(表1)。

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散布作業の様子

表1 ドローンによる除草剤散布の作業時間
h1_sys_kagoshima_z3.jpg

4.防草効果
 除草剤散布1ヶ月後に抜き取り調査を行ったが、各試験剤処理区において雑草の発生は認められず、除草効果が確認された。

 以上のことから、試験剤の散布は、対照剤と比較し短時間で作業を行うことができ、操出口の位置を通常位置からシャッタ直下に変更することで操出量が増加し、更なる作業時間短縮が可能となる考えられる。
 また、今回の試験結果に基づき、操出口の変更が取扱説明書に記載された。

ドローンによる液剤散布時のアジュバント(展着剤)の効果の把握

1.試験条件
(1)供試機
 ●ドローンMG-1K

(2)供試資材
 ●アジュバント

(3)試験時期
 ●1回目:2019年3月27日
 ●2回目:2019年4月23日
 ●3回目:2019年5月10日
 ●4回目:2019年8月21日

2.供試したアジュバントの特徴
 ドローンによる液剤散布は、高温低湿の条件下では液剤が蒸発しやすく散布精度に影響をもたらす。供試したアジュバントは、薬液の濡れ・浸透・固着・付着機能を高めたもので、植物葉での被覆率向上・散布液の蒸発抑制・ドリフト抑制の効果が期待できる。

3.アジュバント加用による散布特性把握
 本試験は時期を変え4回実施した。4回目は2機のドローンを用いて実施し、気象条件は、温度は32.3~33.4℃、湿度は57%程度、日射量は0.37MJ/m2であった。風速は1m/s前後で飛行方向左後方からの風であった。薬液及び農薬成分の付着確認に、感水紙とプラスチックシートを利用した。感水紙とプラスチックシートは地上から60cmの高さで、1試験区に27カ所設置した(図3)。飛行高度は地上から2m、散布量は0.8L/10aとした。
 感水紙の被覆率はアジュバント区が2.9%で慣行区の1.5%と比較して高かった(図4)
 農薬成分の付着量はアジュバント区が19.4ng/mm2で慣行区の8.4ng/mm2と比較して多かった(図5)。

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 図3 感水紙・プラスチックシートの設置方法

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※画像クリックで動画再生

R1_sys_kagoshima_z5.jpgR1_sys_kagoshima_z6.jpg
左 :図4 感水紙被覆率 / 右 :図5 農薬成分の付着量

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感水紙の付着状況。慣行区(左)とアジュバント区(右)

4.湿度の違いによる散布精度
 1回目から4回目までの散布精度を慣行区とアジュバント区で比較した。
 慣行区では湿度が低下すると感水紙の被覆率が低下する傾向が見られたが、アジュバント区では湿度の影響が小さい傾向が見られた。また、慣行区4月23日の試験において0m(ドローン直下)の被覆率はほぼ0%であったが、アジュバント区においては、0mの被覆率が約5%と高くなっていることから、アジュバントの加用でドリフトが低減するのではないかと推察されていた(図6、7)

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図6 慣行区感水紙被覆率

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図7 アジュバント区感水紙被覆率

 以上のことから、アジュバントの加用により湿度や風の影響を受けにくくなり、被覆率が高まるとともに、ドリフト抑制の効果も期待できることが考えられた。

(令和元年度 鹿児島県農業開発総合センター大隅支場農機研究室)

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