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その他

水田における土地利用型作物(小豆)の生産性向上に関する実証調査(島根県 平成30年度)

背景と取組みのねらい

●背景
h30_sys_shimane_i_0.jpg 島根県出雲地方において小豆は、正月の小豆雑煮、日本三大和菓子処とされる松江の和菓子、ぜんざいの発祥と言われる「出雲ぜんざい」などに多く利用されており、地元産の需要の高い食材である。
 しかし、小豆は湿害に弱く収量が低い上に、収穫・選別などが手作業で行われることから大規模化が難しく、出雲市内の小豆栽培面積は3ha弱とわずかで、実需側では代替として中国産等の輸入物や北海道産が多く利用されており、地元産の小豆に対する実需の要望は高い。
 こうした中、宍道湖西岸地区農村整備推進協議会(平成30年度~41年度国営緊急農地再編整備事業、受益面積456ha)では、米に比べて面積あたり収益の高い作物(高収益作物)として小豆に着目、他地域の先進地事例等を参考に産地化に取り組むこととした(ほ場整備完了後の平成41年度目標:小豆栽培面積約140ha、販売額13千万円)。小豆の試作は平成28年から行っているが、高位安定生産のためには、湿害対策と雑草対策が大きな課題であることがわかった。
 そこで、この実証調査では、ソイラ付き一発耕起播種機(以後、トリプルエコロジー)による生育初期の湿害軽減効果と深耕カッター付きレーキ(以後、除草カルチ)除草効果を確認することとした。

●目標
(1)「トリプルエコロジー」のソイラによる生育初期の湿害軽減効果の確認(2年目)
(2)「除草カルチ」による除草効果の確認(カヤツリグサとタデ類)

対象場所

●島根県出雲市
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 「神話の国」、島根県出雲市は、県東部に位置し、北部は国引き神話で知られる島根半島、中央部は出雲平野、南部は中国山地で構成されており、人口175千人、耕地面積7,870ha、総農家戸数6,813戸の県内有数の水田地帯である。
 出雲市は、県内でも特に農業生産力の高い地域のひとつであり、農業粗生産額は全体の23%を、果樹では、「ぶどう」や「西条柿」等の主産地であり県全体の58%を占めている。また、ブロッコリー等の特産物や「きぬむすめ」「つや姫」等の良質米も生産している。
 出雲市の年平均気温は、14.6℃、年間日照時間は、1,693.2時間、年間降水量は1,685.2mmである。

実証した作業体系(作業名と使用機械)

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耕種概要

●各区の概要
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 注)慣行区1の播種機は、実証組織の所有機

●主な栽培基準
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 注)畝420cmごとに40cmの明きょを設置(ほ場利用率約90%)

●圃場条件
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 注)播種後10日目に降水量3mm。播種後約1か月の降水量計:20mm(気象庁観測点「斐川」のデータ)

●暗渠等の施工状況
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作業別の能率と効果


耕起同時播種能率と効果

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ソイラ付きトリプルエコロジー

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播種時の砕土状況
(右側の機械は溝切機)


・7月19日実施。
・実証区1の播種時の作業時間は、約30分/10aで、慣行区1の45分/10aに比べて短縮された。

●型式
・クボタ KTBM2200E(7条)
(クボタ MR97)

中耕除草能率と効果

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除草カルチ


・除草カルチによる中耕除草は、播種後2週間目(8月2日)に1回のみ実施。
・作業時間は、約45分/10aであった。

●型式
・クボタ HS2-6M+TTM6H(6条)
(クボタ JB13)

成果

(1)生育について
・播種後1か月間にほとんど降雨がなかったため、トリプルエコロジーで湿害軽減対策を行った実証区1、既存の機械で播種した慣行区1は、ともに生育は概ね良好で、湿害は認められなかった。
・除草カルチで除草対策を行った実証区2と無処理の慣行区2でも、成熟期の生育はほとんど同等だった。
(2)収量について
・湿害軽減効果比較について、実証区1と慣行区1の実収にはほとんど差がなく、両区ともに目標収量の120kg/10aをほぼ達成した。
・除草効果については、両区に収量差はほとんどみられなかった。

 実収 (kg/10a)
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 坪刈収量と実収(kg/10a)
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(3)品質について
・全区で大きな差はなく、良好だった。

実証した作業体系について

(1)トリプルエコロジーによる生育初期の湿害軽減効果の確認
 水田転作における湿害軽減技術として、昨年は有効性が認められたが、今年は降雨が極めて少なかったため、効果を確認できなかった。
(2)除草カルチによる除草効果の確認(カヤツリグサとタデ類)
 除草カルチの実証区では、イヌビユ等の雑草が50%程度処理できたものの、3週間後には次の雑草(タデ等)が繁茂した。これを放置しておくとコンバイン収穫の支障となるため、9月中旬に全ての区で40cm以上のタデの抜き取りを行った。なお、実証区2の発生程度は少で、慣行区2に比べて、雑草抜き取り時間はやや短かかった。

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 左 :カヤツリグサ(8月中旬) / 右 :タデ類(9月中旬)

 作業時間の比較(h/10a)
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当該技術を導入した場合の経営的効果

(1)トリプルエコロジーによる生育初期の湿害軽減効果の確認
 昨年の試験では、収量が慣行に比べ25%多くなり事業利益も10a当たり2万円程度上回ったが、今年は湿害が発生しなかったため、両区とも収量に差が見られず、経営的効果は確認できなかった。
(2)除草カルチによる除草効果の確認
 除草カルチで処理した区は、タデ類の抜き取り作業が短時間で済んだが、かかった経費から経済効果を検討すると差がなく、効果は確認できなかった。

 経営収支 (千円/10a)
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残された課題と今後の展開について

・2年間の試験で表面排水の効果は概ね確認できたが、雑草対策に課題が残った。来年度は、新規除草剤であるイマザモックスアンモニウム塩液剤の実証を考えている。
・カヤツリグサ等の防除について、ベンチオカーブを主成分とする全面土壌散布除草剤やベンタゾン液剤のような茎葉処理除草剤が登録されるとありがたい。また、タデ類については、発生のタイミングを見ながら非選択性茎葉処理剤の畝間散布による防除を検討したい。
・狭条密植栽培(30cm条播)に加え、中耕除草の実施を前提とした通常栽培(60cm条播)も検討したい。

(平成30年度 島根県東部農林振興センター出雲事務所農業普及部、島根県農業技術センター技術普及部)