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耕作不能の強湿田を農地に!(静岡県焼津市)

2011年12月19日

 静岡県焼津市藤守地区は市の南部に開けた平場の水田地帯にある。工場や住宅が点在し、太平洋にも近い。
 今回、クボタeプロジェクトにより再生される耕作放棄地は、昭和40年代に土地改良事業が実施されたが、排水不良のため作付がなされず、耕作放棄が40年以上続いている水田4.4ha。3年計画で農地に再生することになり、今年度(平成23年度)は2.1haの草刈をすることとなった。


 再生のきっかけは、隣接地に水田を持つ農業者・八木榮(※)志氏から、この農地を再生して稲作を行いたいと焼津市に申し入れがあったこと。同氏が地権者とともに設立する「耕作放棄地解消基盤整備事業推進協議会」が国、県、市の耕作放棄地再生事業を活用して、農地の再生をしていく計画だ。

 対象地は背丈以上に伸びた葦(アシ)が繁茂し立ち枯れ、灌木もあちらこちらに見られる状態。

(※)正しくは榮の木の部分がホ


  
左 :うっそうと茂る葦から強湿田であるとわかる
右 :八木榮志さん(左から二番目)は、水稲30haを作る稲作農家。酒米も3種類(5~6ha)作り、地元の酒蔵に販売している。長男は、冬場は酒蔵で杜氏として働く


廃棄物除去

 家電・タイヤ・家具その他の廃棄物が大量に不法投棄されていたため、クボタeプロジェクトによる草刈に先立って、地域の農家など協議会メンバーや市役所・県関係者多数が圃場内のゴミの撤去作業を行った。予想以上にゴミが多く、分別や搬出に手間がかかった。
 草や灌木に覆われていた通路や畔の草刈も行い、隠れていた畔や農道がようやく現れた。草刈中に出てきた廃棄物も多く、この撤去も同時に行った。


  
左 :家電、古タイヤ、家具など全て投棄物
右 :特に圃場の角地は集中的に投棄されている


  
分別作業にも一苦労


 2haの土地から驚くほど大量のゴミが出てきた。すでに多くが搬出されたが、それでもまだ、呆れるほどのゴミの山があった。


草刈作業

 12月5~7日に(株)クボタと(株)南関東クボタが草刈作業の支援を実施した。静岡県内では初めてのクボタeプロジェクトとなる。


  
左 :水がひいて比較的乾くこの時期でも、膝まで潜るほどの湿地状態
右 :草刈作業。枯れているためなぎ倒してから再度バックして裁断する


 圃場は水が溜まった状態のため、ホイル型トラクタでは作業が進まず、モアを装着したパワクロが活躍した。見守る地元関係者からは、「人力で(草刈を)するのと全然違う。さすがトラクタの作業は早くてすごい」と感嘆の声が聞かれた。

 とはいえ、あまりにも排水が悪く、湿田に入って枯れた葦や灌木を刈るのは至難の業で、負荷がかかったモアのベルトが切れるなど、たびたび作業は中断。約70aの圃場3枚のうち、何とか草刈を終えることができたのは1枚だけ。2枚目は3分の2ほど刈取った段階で足場が不安定なため中断、3枚目は入ってみたもののパワクロが沈み込み、危険なために中断した。

 草刈作業を進めるには圃場排水が不可欠なため、1枚は排水路を掘削し直接排水、他の1枚は集水池を掘削してポンプ排水をしてもらい、後日、条件が整った段階で改めて草刈作業の支援をすることとなった。


  
左 :左側は潅木に覆われた、森のような農道
右 :これを草刈機で潅木、草ともども細断、農道を開通させる


  
左 :排水路を掘削 / 右 :滝のように水があふれ出る


  
左 :別の圃場では、集水のため土を掘り下げる
右 :ここからポンプ排水をしてもらうことに


今後の予定

 草刈後の圃場には、静岡市麻機に建設中の調整池建設現場から削土を運び、客土して整地を行い、50cmのかさ上げをするという。24年度に残り2.3haの草刈とかさ上げ、用排水路や農道の整備等を行って、25年度には今回草刈をした圃場で作付が行われる予定だ。

 八木榮志さんは、「圃場の隣が長年放棄状態で、ずっと気になっていた。40数名の地権者のほとんどに直接会ったが、皆気持ちよく応じてくれて有り難い。圃場が再生され次第、すぐに作付を始めたい。今から楽しみにしています」と語ってくれた。

 クボタeプロジェクトでは、残り2.3haの草刈を24年度に行って、放棄地再生を引き続き支援していく。(みんなの農業広場事務局)

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