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2008年5月14日
ハダニの天敵・カブリダニ
山中 聡
世間でダニというと悪いイメージがありますが、農業分野でも、ダニと言えば、作物の葉面を吸汁する害虫のハダニを思い浮かべます。
ハダニ類の大きさは0.3~0.5mm。大量に発生するとクモの巣状の網が張られ、葉が黄変し、生育への影響、果実に被害がでてしまいます。
ハダニの世代期間は短いので、作物栽培期間中に何度も薬剤散布を行わなくてはなりません。そのため、薬剤抵抗性がでる確率が高いことも、ハダニが難防除害虫となる一因です。
力をもって相手を制する方法ですと、相手の抵抗力が大きくなれば、こちらもそれ以上の力を使わねばなりません。ハダニを含め、病害虫防除での薬剤散布には、そのような一面があります。
逆に、薬剤を使用していない圃場等では、害虫の密度が、自然にある程度の密度におさえられていることが観察できます。これは、天然に存在する「土着の天敵」が自然発生して活動してくるからです。この自然発生を補うために、生物農薬が登場します。
ハダニの天敵には、土着のカブリダニ、カメムシ、テントウムシ、アザミウマを挙げることができます。この中で、現在生物農薬としてハダニ防除に利用されているのは、チリカブリダニ(写真左)とミヤコカブリダニ(写真右)です。
カブリダニたちの名前は、ハダニやホコリダニ等、微小生物に「かぶりつく」ということからきたようですが、カブリダニの種類によっては、ハダニが大好物のものもいれば、いろいろなご馳走を適当につまみ食いするものもいます。
チリカブリダニは、ハダニに対して強い選好性を持っていますので、ハダニが発生している場合には、速やかに食い尽くしてくれます。一方、ミヤコカブリダニは、花粉や微小生物でもエサにしますので、ハダニ防除に使う場合は、発生前の事前放飼をおこないます。
この性質を利用して、これからのイチゴやナス等の果菜類のハダニ防除には、このミヤコカブリダニをなるべくたくさん増殖させておく方法を提案しています。
東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長