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青虫の足あと【99】

2015年11月17日

地域の温かいもの「阿多古和紙」 

山田早織


一年ほど前に新聞で見た、「阿多古和紙」。
浜松市でもわりと山間の地域で、昔ながらの技術を受け継ぐ「手漉き和紙」。
以前、和紙を扱うお店で見たことはあるものの、私にはもったいないものだと思い、眺めて帰ってきたのを思い出す。


yamada_100_1.jpg阿多古和紙は、江戸時代初期に始まったと伝わるそうだが、現在、80歳を超えるおじいちゃんが唯一の職人さん。後継者がいないとのこと。

たしかに、手漉き和紙で生計を立てられるような状況ではないだろうし、かといって中途半端に習ってできるほど職人の技は甘くないだろう。


ずっと興味があった阿多古和紙の紙漉きを、ついにやるときがきた!!
あるイベントに出展しているときに、阿多古和紙の紙漉き体験をすることができるブースがあり、出展者なのに、一番乗りで体験させてもらうことに!


気さくなおじいちゃんは超ゆるく、のんびりと適当に(いい意味で)紙の漉き方を実演してくれ、「じゃあ、やってみ?」と木の枠を渡された。
じゃぼん・・・ぬるっとした感触の水に木の枠を入れ、そっと揺らしながら水を落としていく。同じ動作を何度かした後、木の枠を外してひっくり返して紙を外す。


yamada_100_2.jpg最後のひっくり返すのがなかなか難しい。

サービスで、はがきを何枚かと、大き目の紙も漉かせてもらった。
慎重さと、大胆さと、両方必要。
なんだか楽しい。


「これはひまわりの繊維。ひまわりは叩いても叩いても繊維ばっかでいやんなるや」とか、繊維をどれだけきれいにするか、等の話を聞かせてもらう。ひまわりの茎で紙ができるとは知らなかった。


そもそも紙漉きに使う植物は、コウゾ、ミツマタなどが多いそうで、おじいちゃんが自分で収穫(収集?)するそう。
そうして漉いた手漉きの紙は、千年はもつんだと。


yamada_100_3.jpg書道家の先生は、紙を箪笥(たんす)で10年寝かせるんだと。

山に自生する植物から作られ、千年の時を越えてなお生きつづける手漉きの和紙。
そんな和紙を生み出せるおじいちゃんは、本当に素敵。
すばらしいなぁ。


今回自分で漉いた和紙。
これに、未来の子どもたちへの手紙を書いてみようかな。
たとえ私がいなくなったとしても、この温かい紙は、私の気持ちをきちんと子どもたちに伝えてくれるはずだから。

それがたとえ千年先だとしても。

やまだ さおり

静岡県浜松市出身。フランス料理店に勤務後、23歳で起業した(有)しあわせ家族代表取締役、園芸福祉士。培養土、花苗・野菜苗の販売のほか、庭づくりや商店のディスプレー、野菜の宅配など、関心とニーズのある分野に事業とボランティアを展開中。

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