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2009年8月20日
野菜価格が高騰!
高見澤勇太
産地廃棄からわずか一カ月で・・・
7月上旬から始まった産地廃棄から一転、8月上旬には野菜が高騰した。わずか一カ月の違いで、野菜の価格が大きく変動したのである。
一番の原因は、長雨によるものである。私の住んでいる長野県南佐久地方では、7月中旬から2週間以上、毎日のように雨が降り続いた。
この地域でいちばん雨に影響されやすい野菜は、レタスである。雨が一週間続いたあたりから、外葉が黒く変色し始め、腐っていく。それを止めるために農薬散布をするが、散布後すぐ雨に流され、効果が無い状態が続いた。
品薄になると、どのくらい価格が変動するか、ご存じだろうか。サニーレタスの場合、産地廃棄の時期に一箱単価500円(15個入り)だったものが、2500円以上になる。生産原価が30万円/10aとすると、500円ではいくら出荷してもマイナスだが、2500円なら、200ケースの反収でも20万円の収入になる。通常の反収は500ケース、希望単価は1ケース900円で、売上45万円・利益が15万円/10aが目標である。
ふぞろいの野菜たちへのラブコール
問題になるのは、野菜高騰時のB級品の取り扱いである。
野菜が品薄になると、味は同じでも、見た目の悪い物が増える。日本人は普段の野菜選びに、見た目を重視する傾向が強い。ところが、野菜が高いと考え方が変わってくる。普段は見向きもしない、色や形の悪いものを「『安く』出荷してほしい」と思うのだ。
ところが、農家は、高騰時にこそ安値時の穴埋めをしたい。安価なB級品が大量に出回ると、A級品の足を引っ張り価格が下がることが気になってしまう。
農家だって、丹精込めて育てた野菜たちを捨てるのは忍びない。できることなら曲った野菜も食べてほしい気持ちはある。難しい問題である。
まず農業を教えよう
この問題を解決するひとつの方法として、野菜に対する見方や考え方を根本から変えていく必要があると思っている。
野菜は、工業製品と違い、同一規格の大量生産はできない。しかし、効率的な市場流通のために、同じ大きさで・同じ色で・同じ形の野菜を求められるようになり、生産者もそれに応えてきた。それが簡単なことだと思っている消費者が多い。
そこで提案だ。日本の基礎教育である国語・算数・理科・社会・英語5教科の前に、まず『農業』を教えるのだ。今日、“知識”としての農業は、誰でも理解している。しかし、実際の現場を知る一般人は少ない。米麦大豆の育て方をはじめ、牛や豚の飼い方、野菜の栽培など、命の源である農業を、知識でなく身をもって教え、知るようにする。
そうすれば、最先端の流行を追いかけるだけの頭でっかちな人間ではない、バランスのとれた、視野の広い、地に足の着いた、ちっちゃいことは気にしない、そんな穏やかな日本人が増えていくに違いないと思うが、いかがだろうか。ぜひそうなって欲しいものだ。
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」