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農家の相続を考える【3】

2018年7月20日

農家の遺言について


ランドマーク税理士法人 代表税理士 清田幸弘   


◆遺言の形式
seita3_image0.jpg いざという時、残された家族の争いを避けるためにも用意しておきたいものが遺言です。
 緊急時等の特別方式を除き、遺言には3種類の形式があります。


(1)自筆証書遺言
 遺言者が自ら作成した遺言書を指します。秘密は守られますが、保管の面で難点があります。自筆が条件であり、代筆やテープへの録音は無効です。日付は年月日まで正確に記載し、印鑑は認印でも有効ですが、実印が望ましいでしょう。


(2)公証書遺言
 2名以上の証人(推定相続人、未成年者などは証人になれません)の立会いのもとで、公証人に作成してもらう遺言です。これは公証役場に保存され、最も安全かつ法的根拠能力が高いものとなります。身体が不自由などの理由で公証役場まで出向けない時は、公証人に自宅や病院に来てもらうこともできます。作成には財産の価額を基に公証人手数料がかかります。


(3)秘密証書遺言
 遺言者本人または代筆者が作成して封印した遺言書で、公証人に遺言者本人のものであることを確認してもらい作成されるものです。公証人は遺言書の存在を証明してくれますが、内容には関与しません。また、公証役場で保管されないので注意が必要です。
 

 公正証書遺言以外は、遺言者の相続発生後、家庭裁判所での検認が必要になります。また、安全性・確実性の面から公正証書遺言の形で遺言を残すことをおすすめします。
 なお、公正証書遺言の作成には以下のものが必要になります。

●遺言者の印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)
●遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
●相続人以外の人に財産を遺贈する場合には、その人の住民票
●不動産の登記事項証明書および固定資産税評価証明書
●証人2人の住所・氏名・生年月日・職業がわかるメモ


◆遺留分について
 夫が、内縁の妻に財産のすべてを遺贈(※)する旨の遺言を残して亡くなった場合等、残された家族には、一定の金額を取り戻せる遺留分があり、相続人の権利を保障しています。
 相続開始および減殺(げんさい)すべき贈与または遺贈のあったことを知ったときから1年間、相続開始のときから10年間に限り、内縁の妻に対して遺留分減殺請求ができます。

 遺言による遺贈は、法定相続人の相続分に対する権利よりも優先されますが、そうすると相続人の権利が多大に侵害される可能性があるので、一定の遺留分を定め、相続人の権利を保障しています。そのため、遺贈によって財産を取得しようとしても、相続人が遺留分の権利を主張すれば、遺留分に相当する部分の遺贈は無効になります。遺留分の割合は相続人によって以下のようになります。
(兄弟姉妹には遺留分がありませんので注意が必要です)
遺贈 :遺言により、無償で他人に財産を与える行為


<法定相続分と遺留分>
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せいた ゆきひろ

神奈川県横浜市に農家の長男として生まれる。明治大学出身。横浜農協に9年間勤務した後、税理士に転身、1997年に清田幸弘税理士事務所を設立。ランドマーク税理士法人に組織変更し現在では、東京・丸の内の無料相談窓口『丸の内相続プラザ』、横浜ランドマークタワーを始め、首都圏に12の本支店を展開している。

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