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飼料作・畜産編【5】 WCS(飼料用トウモロコシ、ソルガム類)の機械化作業の栽培体系

2008年6月12日

(2014年6月 一部改訂) 
(2020年3月 一部改訂) 

機械作業による栽培体系

 飼料用トウモロコシは筋状に点播して栽培します。収穫時にはハーベスタで細断し、サイロ等に貯蔵します。
 ソルガム類は利用するタイプにより栽培方法が2つに分けられます。1つ目は点播または条播して栽培し、トウモロコシと同様に収穫するものです。主として子実型ソルガム、兼用型ソルガム、ソルゴー型ソルガムが利用されます。2つ目は条播あるいは散播し、ロールベール体系で収穫するものです。茎を細くし、ロール成型しやすくするため、播種量を多くしたり、条播では条間を狭めたりします。主にスーダン型ソルガム、スーダングラスが利用されます。
 本記事では1つ目のタイプを「ソルガム」、2つ目のタイプを「スーダングラス」、両方を示すときには「ソルガム類」として紹介します。
 標準的な栽培作業の流れは以下のようなものです。

→ 堆肥またはスラリーの散布
→ 土壌改良資材の散布
→ 耕起
→ (化学肥料の散布)
→ 砕土・整地
→ 施肥・播種
→ 鎮圧
→ 除草剤散布

●堆肥やスラリーの散布については、収穫物の品質や環境問題等の面から、適正な量を圃場に還元することが重要です。10a当たりで牛糞堆肥は2~4t、牛のスラリーでは5~6tが目安です。

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スラリータンカーによるスラリー散布
土づくり編(1)堆肥散布作業 より)

●耕耘により堆肥等をすき込んだ後に播種を行います。
●散播の場合や播種機に施肥機能がない場合は、砕土・整地作業の際に化学肥料を施肥します。点播や条播では側条施肥ができる播種機を利用することで、耕耘時の全面全層施肥よりも肥料の利用率は高くなると期待されます。
●施肥量は堆肥等から供給される養分量も考慮に入れ、地域の施肥基準に従って決めるようにします。
●一般的な播種密度はトウモロコシでは10a当たり7000粒程度です。ソルガムの播種量は2kg/10a程度、スーダングラスでは6kg/10a程度が目安になります。
●トウモロコシは、平均気温が10℃を超える頃からが播種の適期になります。一方、ソルガム類は低温下での生育が遅いため、平均気温が15℃以上になってから播種します。

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通常のコーンプランタによる播種
耕畜連携による自給飼料作物(コーンサイレージ)の有効利用と経済性、供給システム より)

●種子の吸水を促進し、土壌処理除草剤の効き目を確かなものとするため、鎮圧を行います。ただし、降雨の後など土壌水分の高い時は出芽を阻害することもあるので、状況により鎮圧を行うかどうかを判断するようにします。

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適水分時の土壌鎮圧
耕畜連携による自給飼料作物(コーンサイレージ)の有効利用と経済性、供給システム より)

●トウモロコシ、ソルガムでは鎮圧後に土壌処理除草剤を散布し、雑草を抑制します。スーダングラスは気温の高い時期を選び、播種量を多めにすることで、除草剤を使用しなくても栽培できることが多いです。
●トウモロコシ、ソルガム類ともに生育初期の雑草量が多い場合には、茎葉処理除草剤を使用します。雑草の種類を見きわめて、効果の高い剤を選択してください。
●ソルガム類は一般に薬害が出やすいので、除草剤の使用にあたっては、ラベルに書かれた使用法を必ず守りましょう。
●なお、耕耘や鎮圧を省いて作業を簡略化したい場合には、不耕起播種機の使用が有効です。
●圃場等の条件によりますが、上述のすべての耕耘作業を省略できる場合では、播種に要する全作業時間は20~30%に短縮されます。

●収穫適期は、トウモロコシでは黄熟期、ソルガムは乳熟期から糊熟期、スーダングラスでは出穂前から出穂初めの頃が目安です。
●草高1m以下のソルガム類には青酸が含まれる恐れがあるため、極端な若刈りや生育不十分な状態で収穫してはいけません。
●堆肥の過剰施用や、多施肥で栽培した場合には、家畜に有害な硝酸態窒素が蓄積することがあるので、避けてください。硝酸態窒素濃度が高いことが心配される場合には、高刈りすることで収穫物中の濃度低減に効果があります。

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収穫適期のトウモロコシ()とソルガム(

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収穫適期のスーダングラス

収穫適期の見きわめ

●トウモロコシでは登熟が進むに従い、子実の外側から基部に向かって硬質デンプンに変わっていきます。境目がラインのように見えるため、ミルクラインと呼ばれます。ミルクラインが見え始めた時期が黄熟期の初めになります。
●ミルクラインの見方は、雌穂をもぎ取って半分に折り、先端側の断面を見て、子実の黄色と白の境目があるかどうかで判断します。
●ミルクラインが全体の2分の1程度に達した時期が収穫適期です。
●ミルクラインが見えにくい場合は、雌穂の表面を見ます。
●飼料利用されるトウモロコシはデント種が多く、登熟に従い子実の表面が凹んできます。それが雌穂全体に広がったときが黄熟期です。

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 :トウモロコシ子実の凹みが雌穂全体に広がった時期
 :黄色とクリーム色の境目がミルクライン。左から黄熟前期、黄熟後期


●ソルガムでは、いくつかの実をつぶしてみた時に、乳状の汁が出る頃が乳熟期、糊状の固形物が出る時期が糊熟期になります。
●スーダングラスは出穂前から出穂始めの頃に収穫します。品種や栽培時期により異なりますが、おおむね草高が1.5~2mくらいの頃になります。
●なお、温暖地、暖地ではソルガム類を収穫した後、再生させてもう一度収穫する2回刈りも行われています。

調製と貯蔵

●収穫時にはハーベスタの設定切断長を約10mmにします。
●近年、自走式ハーベスタに破砕装置(クラッシャー)を搭載し、トウモロコシを3~5mm程度のローラ間隙を通してすり潰しながら収穫する技術が普及しています。
●クラッシャーは堅い芯や茎を破砕できるため、通常のハーベスタで推奨される切断長よりも長い16~19mmで収穫しても、詰め込み密度が高まり、残飼や未消化子実は減ります。
●サイロへの詰め込み密度は、700~800kg/㎥が目安です。
●最近は、ハーベスタで材料を細断型ロールベーラに直接吹き込んで梱包し、ベールラッパで密封してラップサイレージにする方法が増えています。細断型ロールベーラは高密度調製が可能です。
●また、近年、国産の小型な自走式ハーベスタ「汎用型飼料収穫機」の普及も進んでいます。汎用型飼料収穫機は、機体前方のヘッダ部分で飼料を細断し、機体後方の成形室(細断型ロールベーラと同等)で高密度なロールベールを成形します。
●汎用型飼料収穫機は、トウモロコシ・ソルガム・イネWCSのいずれの収穫にも適用できるヘッダ(マルチヘッダ)を装着したり、収穫物をバラ積み輸送するため機体後方のロールベール成形室をワゴンに換装することもできます。
●ベールラッパの中には、ロールベールを密封する機能に加えて、圃場の中で簡易にロールベール質量を計測できる機種もあります。

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細断型ロールベーラによるロールベール調製
耕畜連携による自給飼料作物(コーンサイレージ)の有効利用と経済性、供給システム より)


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左 :圃場でのラッピング (提供  農研機構 農業技術革新工学研究センター 志藤博克)
右 :汎用型飼料収穫機(マルチヘッダ装着・ワゴンタイプ)による収穫作業 (提供 農研機構 九州沖縄農業研究センター 高橋仁康)


●密封後、1カ月程度で乳酸発酵が安定化し、芳香を伴った良質なサイレージができ上がります。
●ラップサイレージでは、給与が終わるまでフィルムの破損などに注意します。
●鳥害対策としては、ラップサイレージにネットをかけたり、上空にテグスを張ったりして鳥の被害を防ぎます。なお、ネズミの食害が心配な場合には、テグスの方が効果的といわれています(ネットですっぽり覆うとネズミの天敵であるネコ、ヘビ、イタチ等が出入りできなくなるため)。
●ネズミによる食害対策としては、貯蔵場所の除草をこまめに行い、天敵がネズミを見つけやすいよう50cm以上の隙間を空けてラップサイレージを配置します。
●この技術は稲発酵粗飼料の保管用に開発されたものですが、トウモロコシのロールベールサイレージについても同様と考えられます(「ネズミ対策マニュアル」はこちら)。


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 :鳥害対策としてネットをかけて貯蔵
 :ネズミ対策としてのロールベール広々配置(提供 農研機構 東北農業研究センター 河本英憲)

執筆者
小林良次
農研機構 九州沖縄農業研究センター 畜産草地研究領域 上席研究員
野中和久
農研機構 畜産草地研究所 家畜飼養技術研究領域 上席研究員
加藤直樹
農研機構 九州沖縄農業研究センター 畜産草地研究領域 上級研究員
松尾守展
農研機構 中央農業研究センター飼養管理技術研究領域 主任研究員

(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

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