2008年5月19日
●TMR(Total Mixed Rations:完全混合飼料)とは、牛が必要とするすべての飼料成分が均一に保たれた「混合飼料」のことをいいます。大きく分類すると、製造後、すぐに利用するフレッシュ型TMRと、梱包して2~3週間発酵させて利用する発酵TMRの形態があります。
●TMRの原料には、粗飼料、濃厚飼料、ビタミン、ミネラル等を準備します。
粗飼料 :生草、サイレージ、乾草など(牧草や飼料作物から作られたエサ)
濃厚飼料 :配合飼料、トウモロコシ、ぬか類、大豆・大豆かす、綿実など(デンプンやタンパク質量が多いもの)
●酪農経営においては、経営規模の拡大が進行するにつれて、通年作業である乳牛の飼養管理作業と、夏期における飼料生産作業の競合による労働負担が増してきており、効率的かつ合理的な飼料給与方法ということで広がりを見せてきました。現在では肥育を始め、肉用牛経営にも活用され始めています。
●個別で製造するだけでなく、TMRセンターや利用組合等をつくり、共同製造される事例も多く見受けられます。
●地域で生産された自給飼料(飼料イネ、イタリアンライグラス、トウモロコシ等のサイレージ)や食品残さ等を有効利用すると、TMR生産コストの低減を図ることができます。とくに、粕飼料や規格外の農産物などを積極的に活用する事例が多く見受けられます。
●高栄養かつ高収量のトウモロコシサイレージは、濃厚飼料の節減効果もあり、TMR原料として最適です。
●TMRを発酵させたものを、発酵TMRといいます。発酵TMRを使うメリットには、
①水分が高いTMR原料(食品残さも含む)の長期保存性の確保
②給餌作業の省力化
③低嗜好性粗飼料の採食性向上
④製造作業と輸送の弾力化 等があげられます。
飼料給与を単体飼料で行うと、牛が「選び食い」などを行い、適正な栄養摂取ができないこともありますが、TMRを利用することで改善が図れます。
●TMRの原料を準備します。
●カッティング機能がないミキサーを使う場合は、事前に粗飼料を5~7cm程度に切断しておきます。
左から上から TMR原料のイタリアンライグラスサイレージ / TMR原料の濃厚飼料
●ミキサーへの原料投入は、粗飼料(粗いもの)から濃厚飼料(細いもの)、混合割合が多いものから少ないものの順に行います。
●原料ができるだけ均一に混じり合うように、十分に撹拌します。
●TMR原料の均質化や発酵を促進し、かつ家畜の嗜好性を高めるために、水分含量を40%程度に設定します。
●TMRの水分含量が少ない場合には、必要に応じて加水します。
左から上から TMR原料をミキサーへ投入 / ミキサーでTMR原料を撹拌 / TMRを適正水分にするため加水
●ミキサーで粗飼料と濃厚飼料が十分に撹拌・混合されたら、TMRを取り出します。
●ミキサーから排出されたTMRをコンベアー等で受け、バケットローダー等に積み込み、細断型ロールベーラのホッパーに投入します。
左から上から ミキサーからTMRを取り出す / バケットにTMRを詰め込む
左から上から TMRのロール圧力調整 / 細断型ロールベーラにTMRを投入
●細断型ロールベーラで高密度に圧縮・成形梱包した後、型崩れしないようにネットを巻き付けて、自動で排出します。
●ロールの形状は、円筒形で直径100cm×高さ85cm、重量は350~500kg(容積重520~750kg/㎥)になります。
●ロール成形及び排出する時のロスは、約1%とわずかです。
●ロールサイズは、直径85~115cm、高さ85~100cm対応の機種があります。
●コンビラップによるTMR製造については密封され梱包されます。廃ラップの軽減、再利用あるいは運搬を考慮して、近年はトランスバックによる製造もありますが、製造過程において空気が入らないよう注意する必要があります。
左から上から 細断型ロールベーラで圧縮・成形梱包 / ロール状に成形されたTMR