農業のポータルサイト みんなの農業広場

排水対策技術における事前調査

2021年3月 8日

はじめに

●水田を利用した露地野菜栽培が各地で推進される中、長引く停滞水による根腐れや水を媒体として蔓延する難防除病害が問題となり、圃場の排水改善への取り組みが活発になってきました。
●水田は水が溜まるように作られているため、野菜等をつくるためには、何らかの対策が必要となります。
●近年、これまでにないような進路を取る台風や、線状降水帯による局地的大雨などの異常気象が頻発するようになり、排水良好と認められていた圃場でも湿害が発生しています。

2020_01haisui_p1.jpg  2020_01haisui_p2.jpg
排水不良により、水がたまった圃場

●水田・畑ともに、大型化したトラクタやコンバイン等の農業機械により作土直下に硬盤が形成され、水の浸透を妨げている事例が多く見られるようになりました。
●上から降る雨だけでなく用水路、隣接圃場、道路、畦畔からの流れ込みや排水路水位の上昇(逆流の有無)を観察します。用水路の改修や排水路の底に堆積した土石の除去には地域と連携する必要が生じます。
●農業機械を用いた排水技術について、新たな機械装備、労働時間、場合によってはその他の資材も必要になります。最も有効な方法を見つけるために、その圃場の立地や土壌の性質などを把握することが大切で、これらのことから営農排水の可能性(営農の範疇で十分な対策をとれるか)を判断します。

●参考
水田を利用した野菜づくり

土壌情報の確認

● 「e-土壌図Ⅱ」(※)を利用すると、圃場の土壌の種類や特徴などの基礎情報を得ることができ、改善策を導きやすくなります。

2020_01haisui_3.jpg
e-土壌図ホームページより

「e-土壌図Ⅱ」からの情報で大まかな排水性がわかります。
(e-土壌図Ⅱで、画面上端の包括土壌図をタップすると、旧農耕地土壌図になります)
次表は旧農耕地土壌図の排水性の目安を示しています。

2020_01haisui_p3.jpg

e-土壌図Ⅱ(e-SoilMap II)とは、農研機構・日本土壌イベントリーが配信するアプリで、日本全国の土壌図をいつでもどこでも、iOSもしくはAndoroid搭載モバイル端末上で閲覧できる、営農指導や土壌調査の支援ツールです。

圃場条件の確認

●排水対策を行うにあたり、対象圃場を確認します。現地ではまずどこを見れば良いのでしょうか。
●多くの人が地下排水に目を向けていますが、降雨が地下に入ると水の移動が極端に遅くなります。従って、地表排水を一番に考える必要があります。

2020_01haisui_p4-3.jpg

①圃場の田面から落水枡底面までの深さは何cmですか?(地表排水のための額縁明きょの深さが決まります)30cm程度ありますか?
②圃場の田面から排水路底面または水面までの深さは何cmですか? 排水路の水面は季節により水位が変動します。対象作物の栽培時期を考慮しながら情報を収集します。できれば50cm以上が望ましいでしょう。
③対象圃場の暗きょの有無、多孔管の埋設位置はどうなっていますか? また、暗きょからの地下排水機能が経年により低下していることはありませんか?
④隣接した圃場、山地や用水路からの水の流れ込みや、圃場内の湧水はありませんか?
⑤圃場内のどこで湿害が多いのか、作物被害の様相に関する情報も大切です。

土壌断面調査で情報収集

●簡易な断面調査で、多くの情報を得ることができます。
●試坑地点は枕地を避け圃場の中央部を選定します。あらかじめ検土杖やピンホールを刺してみると硬盤や礫の様相が分かることがあります。
●調査する面にできるだけ光が当たるように坑を掘ると、土色や層位が見やすくなります。

2020_01haisui_0038.jpg

●まず、作土層から心土層へと深さ30cm程度、横70cm×縦100cm程度の四角形の穴を掘ります。この時、上層(作土層)の土は右側へ、下層(心土層)の土は左側へと、掘った土を分けます。坑(あな)を埋め戻す時には、下層から順に戻します。
●次に、深さ50~60cmへと、階段状に掘り進めます。
●その後、地表部から順に下方へと、移植ゴテなどで土壌断面をきれいにします。

2020_01haisui_0054.jpg

【断面調査の手順】

①還元層・グライ層の判定(断面を撮影する直前にジピリジル液を吹きかけます)
2020_01haisui_0110.jpg

②土壌断面の撮影
③土壌断面のスケッチと土壌層位(境界)の土壌断面調査野帳への記入


(野帳サンプル)

2020_01haisui_5-6.jpg

④土色の判定(土壌色板チャートにて)
2020_01haisui_0079.jpg

⑤腐植含量の判定
2020_01haisui_6-2.jpg

⑥斑鉄の判定
一般に、畑では見えないことが多いのですが、水田では水が長く溜まったことにより溶け出した鉄が再び酸化して、赤や黄色などのサビ色に見えることがあります。
斑鉄の出現する位置が、排水方法を考える際の判断材料となる場合があります。
例えば斑鉄が上層に現れた場合、上から下への水の動きがない(もしくはごく小さい)と考えられます。原因としては、硬度が大きい硬盤の影響や地下水が高いために水が動かないことがあるため、それらの状況に適した対応を考えます。

⑦土性の判定(指先で土塊をこねることによる簡易判定法)
2020_01haisui_0080.jpg

(参考)
2020_01haisui_2-2.jpg

⑧土壌硬度の測定(山中式土壌硬度計を使用)
2020_01haisui_5112.jpg

⑨礫の判定(礫は2mm以上の石、早見表から判定)
⑩湧水の有無の観察(出てきたら、水位の上昇が停止した位置(地下水位)の深さを記録)
⑪その他の観察(不透水層、亀裂や孔隙について)

 各項目の具体的な調査方法については、「クボタ土壌診断ハンドブック」などを参考にして行います。

調査結果から排水対策技術を考える

●排水とは、大きく地表排水と地下排水から構成されます。地下排水が不良な場合、できる限りの地表排水により、地下排水への負担を軽くすることが大切です
●重要なことは、どこに排水するか(=水みちの確保)です。

●ステップ1:圃場の観察に基づく地表排水対策を行います。
●ステップ2:土壌断面調査に基づく、地下排水対策(硬盤破砕)を行います。
●ステップ3:それでも排水性が改善しない場合には、さらに排水性を高める複合排水対策(深層・浅層2段排水)を検討します。

 これら、ステップ1~3の施工方法については、「地表排水と地下排水」で詳しく解説されています。

執筆者:
株式会社クボタ 技術顧問
安達克樹、寺井利久※
(※元 株式会社クボタ 技術顧問 )

「機械編」に戻る

ソーシャルメディア