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家庭菜園編/農作業便利帖

夏季の高温を活用した太陽熱土壌消毒

太陽熱土壌消毒とは

 家庭菜園の多くは販売を目的とした生産とは異なり、自給用のため、化学農薬はできるだけ使用したくないという意識が強いようですが、化学農薬の使用を控えても、安定した収量と品質を得たいものです。
2021_dojyosyodoku_4.jpg 私の菜園でもナスの半身萎凋病、ニンジン、サツマイモ、キュウリ等でのネコブセンチュウの被害が顕在化して輪作や休作、緑肥作物(麦類)などの対策を行なっていますが、ここでは、化学農薬を使わない土壌消毒法「太陽熱土壌消毒」をご紹介します。
右 :太陽熱土壌消毒を行った土壌で作ったニンジン

 「太陽熱土壌消毒」は、気温が最も高くなる夏季の休作期に土壌表面をビニルフィルム等で被覆し、深さ10~20cm程度の作土層を太陽熱によって35℃以上に上げ、それを長時間持続させて、土壌中の病原菌やセンチュウ、土壌昆虫などを死滅させ、密度を低下させる方法です。
 病害虫の種類によって、死滅するまでの温度と時間が異なりますが、高温に弱い病原菌・害虫ほど効果があります。
 処理期間は梅雨明け後、最高気温30℃ 以上の日が続きやすい7月下旬から8月までが適期で、その間に約1カ月間被覆します。
 ※冷夏の年は効果が劣ることがあります。

太陽熱土壌消毒の事例

①有機栽培(有機JAS認証)によるタマネギとニンジン栽培
 タマネギとニンジンの有機栽培(有機JAS認証)を行っている農家の例です。
 タマネギ収穫が終わると、ニンジンの作付け準備が始まりますが、必要な堆肥や、ぼかし肥の有機質肥料を散布し、耕起・整地を行なった後に透明のポリマルチを張り、太陽熱土壌消毒を行っていました。
 ポリマルチを1カ月以上被覆した後に、耕起せずにニンジンのタネを播きます。
 ニンジンの生育状況や収穫したニンジンの形状・光沢も慣行栽培のものと遜色なく、消費者の人気も上々でした。

②ネギ産地の黒腐菌核病対策
 数十年も前のことですが、ネギの産地で、地床育苗中の苗の黒腐菌核病の防除に、夏季の高温期に太陽熱土壌消毒が推奨されたことがありました。

③トマト産地で半身萎凋病対策
 露地栽培のトマト産地で半身萎凋病の発生が問題になったことがありました。
 稲わらと石灰窒素散布後に耕起、散水を行ない、その後ポリマルチを張って、太陽熱土壌消毒効果の確認をしたことがあります。
 クロルピクリンによる土壌消毒には及びませんでしたが、無処理区よりは発病を抑えることができました。
※その後、半身萎凋病の抵抗性品種「桃太郎」が普及し、トマトの被害はなくなりました

 以上のような事例からも、露地での太陽熱土壌消毒は、その実用性が認められています。

小面積での簡易な太陽熱土壌消毒方法

 私の菜園では、簡易な方法で、小面積の太陽熱土壌消毒行っています。

(1)消毒場所を決め、栽培利用計画を立てる
 例:ニンジン、レタス、秋ジャガイモを作付けする。
   ソラマメ、ネギの地床育苗にも利用する。

(2)事前準備をする
 梅雨時に堆肥、肥料の散布を行ない、耕起・整地しておきます。

(3)雨を待ち、土壌が十分に湿った状態で透明のポリマルチを張る
 マルチ両裾に溝を切り、土を戻して押さえます。
 その際に強風や雨でマルチがはがされないよう、マルチスティックやシート押さえピンを所々に使用します。
 135cm幅のポリマルチを使用すると、約110cm幅の平畦の被覆ができます。

2021_dojyosyodoku_1.jpg  2021_dojyosyodoku_2.jpg
左 :使用した道具とポリマルチ / 右 :ポリマルチ展張後

(4)地温の上昇を把握するため、被覆した作土層の地温を深さ別に測定する
 地温は外気温の影響を受けるので、午前7時と午後3時の2回測定を行ないます。
 処理前期・中期・後期に、それぞれの深さで35℃ 以上に達しているかを確認します。

2021_dojyosyodoku_3.jpg
マルチに多数の水滴が付着。日中の地表温度は60℃

 ○測定結果例
 ①透明ポリマルチ張り:7月7日
 ②地温測定:梅雨明け(7月16日)から1週間測定。(深さ10cm地温:℃)

 梅雨明け後、晴天・高温が続いたので4日目で地温が高い状態に達し、安定した。
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 ○深さ別地温
 深くなるほど外気温の影響を受けづらく、時間による温度変化が少ない。
 2021_dojyosyodoku_h2.jpg
 (7月21日測定)

(5)被覆期間が約1カ月以上経過したらポリマルチを除去する
 ポリマルチ除去に際しては、被覆月日や梅雨明け月日、地温の推移、週間気象情報、栽培する野菜の播種・定植時期なども考慮します。

(6)耕耘しないままタネまきや植え付けを行う
 土中の害虫は死滅しているので、目合い0.6mmの防虫ネットをかけて外からの害虫の侵入を防止すると、無農薬栽培も可能です。

(7)土壌消毒効果の確認を行なう
 苗立枯病、ネコブセンチュウなどの発生有無や根が白く健全に伸びているかなどを調べます。
 雑草が発生する場合は、消毒効果が不十分と考えられます。

ポイントと留意点

●作業適期を逃さないよう気をつけましょう。地温の上昇には、気温・日射量、土壌水分等が関与します。気温が最も高い時期は7月下旬から8月中旬で土壌中の水分が多い時期は梅雨時です。そのため、梅雨明け間直になったらポリマルチを行ない、1ケ月間被覆をします。
 ※関東地方の目安:7月15日頃のポリマルチ被覆、8月16日頃の除去
●この方法は、糸状菌(カビ)類には殺菌効果が期待できますが、細菌やウイルスには効果がありません。
●ポリマルチ除去後は数日時間をおき、地温を下げてからタネまきや植え付けを行ないます。
●消毒後の秋作、翌年の春作までの作付を計画しまる。作付の際は、深耕は控えます。
●2年に1回の間隔で土壌消毒を行うことにより、土壌病原菌やセンチュウの密度を下げることが可能と思われます。

〈参考〉ハウスでの太陽熱土壌消毒

 ハウスでは露地よりも地温が上がるため、安定した効果が期待できます。
 手順は以下の通りです。

①前作を片付け、耕耘前に1㎡当たり稲わらなどの未熟有機物1kg以上、石灰窒素100g以上を全面に散布します。
(石灰窒素の施用は有機物の腐熟促進のためで、腐熟が進んでいる場合は施用量を減らします)
②土壌の表面積を大きくして、地温の上昇を図るために小畦を立て、散水チューブを1.4~1.8m間隔に設置します。
③ビニルフィルムで土壌表面を被覆した後に十分灌水して、湛水状態にします。
④ハウスを密閉して、ハウス内の気温を上げ、1カ月程度この状態を保ちます。地温を下げるので途中の注水は控えます。
⑤被覆フィルムをはずし、土壌が乾燥したら浅く耕起・整地し、その後にタネまき(または定植)をします。 

 ハウスでは他に「還元型太陽熱土壌消毒法」が確立されています。
 手順は同じですが、稲わらの代わりにふすまや米ぬかなど、腐熟しやすい有機物を1㎡当たり1kg使用するのが特徴です。
 湛水条件下で地温が30℃以上になると、酸素を消費する微生物が急速に増殖して土壌が還元(酸欠)状態になり、酸欠や熱(太陽熱+有機物の発酵熱)により、約20日間で多くの土壌病害虫が死滅すると言われています。

執筆者
瀧本健雄(元 茨城県野菜専門技術指導員)

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