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2016年6月15日
近年、導入が進んでいる半履帯トラクタ(パワクロトラクタ)は接地圧が小さくけん引力に優れ、圃場沈下や踏圧が少ない等の利点があり、全国の水田地帯を中心に普及が進んでいる。
南西諸島の重粘土壌地帯においても、けん引力や作業時の振動が少ないなどの有効性が明らかとなり、サトウキビ栽培において小型半履帯トラクタを活用した機械化管理技術が確立されつつある。
サトウキビ栽培の省力・低コスト・安定生産に資することを目的として、5月31日(火)鹿児島県の沖永良部島で、全国農業システム化研究会による「半履帯トラクタを活用したサトウキビ管理技術に関する現地検討会」を開催した。
当日は、鹿児島県や沖縄県の農業関係機関、生産者、資機材メーカー等、約130名が集まり、室内検討と現地検討を行った。
<室内検討>
「半履帯トラクタの特性等について」
鹿児島県農業開発総合センター大隅支場農機研究室の大村幸次室長より、半履帯トラクタに関する試験研究成果を踏まえて、所要動力や作業精度、安全性等の面から、車輪トラクタと比較して半履帯トラクタが優位であることが説明された。
「半履帯トラクタの普及に向けた取り組みについて」
鹿児島県農業開発総合センター企画調整部普及情報課の白澤繁清主任農業専門普及指導員より、半履帯トラクタに関する現地実証結果を踏まえた、小型半履帯トラクタ体系導入による経済的効果や軽労化評価についての説明、試乗体験農家へのアンケート調査結果等が説明された。
鹿児島県農業開発総合センター企画調整部普及情報課 白澤繁清主任農業専門普及指導員
「半履帯トラクタの活用事例」
鹿児島県大島郡徳之島町でサトウキビを生産する嶺山栄二郎氏から、実際に半履帯トラクタを導入した感想やメリット等の発表があった。振動が少ないために昼食がおいしく食べられる、降雨後でも圃場に入れるので適期作業ができるなど、具体的な説明があった。
<現地検討>
鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場の馬門克明研究専門員および各資機材メーカーの説明のもと、中型・小型の半履帯トラクタの作業技術に関する実演が行われた。
実演を真剣に眺める生産者からは、意見や質問が飛び交い、サトウキビ作業の機械化の必要性がひしひしと感じられた。
作業機の説明をする鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 馬門克明研究専門員
[中型半履帯トラクタの作業技術に関する実演]
●半履帯トラクタとサブソイラによる心土破砕耕作業
半履帯トラクタの方が車輪トラクタよりスリップ率が少なく、作業時間の短縮を図れる
●半履帯トラクタとチゼルプラウによる高速中耕作業
●半履帯トラクタと根切り排土機による高速管理作業
●半履帯トラクタと根切りプラウによる施肥・施薬・根切り作業
[小型半履帯トラクタの作業技術に関する実演・展示]
●半履帯トラクタとサブソイラによる心土破砕耕作業
トラクタのJB19X-PC3Nは小型ながらけん引力が大きく、重粘土壌地帯でも問題なく作業が行える
●ロータリによる中耕作業の振動と安全性の比較
車輪トラクタでは作業中の振動が激しく、身体への負担が大きいが、半履帯トラクタではほとんど振動が見られず、軽労化につながる
●中耕・培土作業との同時施薬殺虫剤(プレバソン粒剤)によるメイチュウ類防除技術
●ブームスプレーヤによるサトウキビ防除技術
●半履帯トラクタと培土機(サブソイラ改良試作機)による作業
試作段階のため、生産者の率直な意見を聞き、さらなる改良を模索
アンケートでは、今回の実演会は参考になったとの声が多く聞かれた。また、機械の導入に対しても前向きな意見が多く見られた。生産現場の要望に応えるためには、さらに改良を重ねる必要がある。一日も早い機械化体系の確立を期待したい。(みんなの農業広場事務局)