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農業経営者の横顔



温州みかん根域制限栽培を県内に先がけて導入。地域のみかんブランドを牽引

2023年05月08日

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原田キミ代さん(佐賀県鹿島市)


 みかんの根域制限栽培を産地で最初に始めた農家に会ってほしい、と普及指導員の篠倉さんに引き合わされたのが、原田さんだった。
 みかん栽培と言えば、日当たりのよい山の斜面に設けられた園地を思い浮かべるが、原田さんのみかん園は平地に住宅が立ち並ぶ中で、みかんが栽培されている。水田を整地し、その上に設置した根域制限栽培施設に植えられたみかんの樹は、がっしりとした幹から見上げるほどの高さに、大きく枝を広げている。


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左 :自宅に隣接したみかん園
右 :根域制限栽培のみかんの樹


 佐賀県果樹試験場が開発した「根域制限栽培」は約20年前に導入が始まった。
 「根域制限栽培」は、圃場に敷いた防根シートの上にブロックで枠をつくり、培土を入れ苗木を植える。樹は限られた土量で栽培され乾燥しやすいことから、気象に影響されにくく、安定して高品質果実生産が可能となる。
 藤津農業振興センター管内(鹿島市、太良町)は、佐賀県内最大の露地みかん産地だが、乾燥しにくい圃場が多く、さらに温暖化の影響もあり、シートマルチ栽培に代わる栽培法として「根域制限栽培」に期待が集まった。


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左 :水田を整地した上に防根シートを敷き、ブロックの枠の内側に培土を入れ、幼木を育成している
右 :根域制限栽培の結実状況(令和4年)


 「お父さんはみかん栽培に意欲があってね、いいみかんを作りたいといつも言っていました。試験場の新しい技術でいいみかんが作れると聞いて、すぐに取り入れたんです」と原田さんは話す。
 原田さんの根域制限栽培は、いわゆる「高畝式」で、ブロックの厚みほどの高さしかない培土の中で根を張っている。平成14年に木を植えて、翌年には初収穫があったそうだ。毎年、安定して結実して、期待したようにいいみかんができている。自宅近くの圃場では令和4年産、10aあたり5トンのみかんがとれたという。
 篠倉さんは、「原田さんのところは、視察に訪れる人が多いです。確かな技術で、産地の早生みかんの引き上げを牽引しています」と説明する。地域の温州みかんは、糖度12以上を「さが美人」、13度以上のものを「祐徳みかん」のブランド名で出荷している。


202304yokogao_harada2.jpg ご主人は7年前に亡くなられたが、原田さんが園地を守り、娘さんの手を借りながら、みかんを作り続けている。「去年、思い切って強めの剪定をして樹を若返らせました。剪定も手がかかるけれど、たいへんなのは夏場の灌水かな」。この圃場以外にも、山の園地計90aでデコポンといよかん、みかんを作っている。
 ここ数年はコロナが続いて、栽培研修会の回数が減り、中でも現地研修会はほとんど行われなかったのが残念だった、と話す。コロナが収まりつつあるこれからも、確かな技術でおいしいみかんを作り続けてほしい。
右 :原田キミ代さんと篠倉普及指導員
(水越園子 令和5年2月24日取材 協力:佐賀県杵藤農林事務所藤津農業振興センター)