提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ



味と品質にこだわった落花生を栽培し、素材を生かした加工品を全国へ展開

2021年12月07日

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大野俊江さん、雄一郎さん (千葉県香取市 株式会社オオノ農園)


 温暖な気候と広い大地に恵まれた千葉県は、日本有数の農業県である。国内1位の生産量を誇る農産物も多く、なかでも落花生は全国の約8割を占め、県の特産品としても有名だ。オオノ農園が本格的に落花生の生産に乗り出したのは15年ほど前。「後発だからこそ、味と品質にとことんこだわりました」と、代表取締役の大野俊江さんは言う。栽培開始と同時に6次産業化に取り組み、現在、オオノ農園の商品は全国で販売されている。


お客さんの声がきっかけで県特産の落花生を栽培
202111_yokogao_oono11.jpg 自然の恵み豊かな北総台地で、大正期から農業を営んできたオオノ農園。代々、主力に栽培してきたサツマイモを落花生へ切り替えたのは、東京の朝市でかけられた言葉がきっかけだったという。「地元役場の要請で、自分たちの作った農作物を販売に行ったのですが、その時に何人ものお客さんから『落花生は置いていないの?』『千葉県といえば落花生でしょう?』と言われたのです。香取地域はサツマイモが多く作られていたので気づいていなかったのですが、改めて、落花生は千葉県の特産品であること、また多くの人が千葉県産の落花生を求めていることが分かりました」と、俊江さんは話す。それからご主人とともに、落花生の中でも最高級品種である「千葉半立(はんだち)」の栽培に取りかかった。
 俊江さんは当初から、「生産するだけでなく、加工も販売も自分たちで行う」ことを考えていた。まずはから煎りの落花生を商品化し、直売のほか、道の駅などで販売を開始した。


品質と美味しさを追求し、試食を通じて販路の拡大へ
 さらに俊江さんたちは、販路を広げるためにデパートやスーパーで試食販売を行った。デパートの本部から支店を紹介してもらうなど、声がかかれば積極的に対応し、北は北海道、西は広島まで足を運んだ。こうした活動の成果もあり、初年度から順調な滑り出しで、2haで始めた落花生作りは翌年に4ha、その翌年は6haというように、年々規模を拡大。現在は近隣の農家から借りている畑を含め、約20haで栽培を行っている。


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左 :デパートの物産展での販売風景 / 右 :約20haで落花生を栽培


 販売が好調な理由について、俊江さんは「味へのこだわり」を一番に挙げる。「千葉半立は、収量性は低いものの食味の良い品種です。よりおいしく育てるために、土作りから丹念に行っています。落花生に関しては、うちは後発なので、まずはお客様に食べていただき、『次もこの袋の落花生を食べたい』と、商品を知ってもらえるように努めました。6次産業化は『品質と味の良さ』が前提にあって、初めて成功できるのだと思います」。

 オオノ農園では、落花生栽培に適した土壌を作るために、厳選した6種類の有機肥料を使用している。「夫が配合を研究し、独自の肥料を開発しました。現在、畑は50カ所ほど借り入れをしています。味が落ちてしまうので連作はしません。落花生の収穫を終えると、きちんと手入れをしてお返しします。『その後にサツマイモを作ったら、おいしくできた』と、畑を借りていた方から喜ばれることもあります。これからも大事な農地を有効活用し、お互いにメリットのある関係性を持ち続けたいですね」。


毎日の食卓で食べてもらえる素材100%のペーストを開発
 オオノ農園では、から煎り落花生以外にもゆで落花生、バターやコーヒー、みそなどの味付けピーナッツ、新潟産の柿の種とコラボした「かきピー」などを製造し、加工品の種類を増やしていった。販売ルートも全国に拡大し、通販も行っている。そして平成27年に「落花生100%ペースト」を商品化する。

202111_yokogao_oono10.jpg 開発した俊江さんは、「どうしても嗜好品で終わってしまう落花生を、毎日の食卓に上らせたかった」と話す。「ペーストにすれば料理にも使えますし、ヨーグルトやアイスクリーム、パンにかけたり、カレーやドレッシングの隠し味にしたり、いろいろな味わい方ができます。また、試食販売の時に『落花生は硬くて噛めない』という高齢の方もいました。滑らかなペーストなら食べやすく、砂糖や添加物も使用していないので、落花生の風味をそのまま楽しんでもらえます」。
右 :落花生本来の甘味と濃厚さが引き立つ100%ペースト


 幅広い年代の人に、毎日安心して食べてもらいたいと作った「落花生100%ペースト」は、口当たりが良く、落花生本来の甘味と濃厚さが引き立ち、後を引く味わいだ。「素材の味だけで勝負ができるのは、生産農家の強みですね」と俊江さん。この商品は「食のちば逸品を発掘2015」で、女性起業家等部門の金賞に輝いた。


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左から オオノ農園の商品詰め合わせ、落花生アイス、落花生100%ペースト(左は渋皮入り)


独自の乾燥方法を取り入れ落花生の品質の安定を図る
 オオノ農園は平成20年に法人化し、その7年後に長男の雄一郎さんが営業部長として入社。現在、社員は3名、パートやアルバイトが常時9名入って、加工品の製造や商品の発送などを行っている。


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左 :100%ペーストを作る作業 / 右 :落花生の選別作業


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左 :落花生を乾燥させるためのビニールハウス
右 :ハウス内に入れたコンテナで落花生を乾燥中


 昨年度の売上は約9000万円を計上し、堅調な経営を行っているオオノ農園だが、近年、一番頭を悩ましているのは天候だと雄一郎さんは言う。「落花生は露地野菜なので、天候次第で収量が変わります。たとえば夏まで順調に育っていても、秋に雨が続いて収穫期が遅れると、実が落ちてしまうのです」。 落花生は収穫したら1週間ほど地干しをして、その後「ぼっち」(円筒状に積み上げる)を作って、1~2カ月間自然乾燥させる。「基本的に雨が降ってもぼっちには水が入り込まないのですが、ここ数年は横殴りの大雨や長雨に見舞われることが多く、そうなると実が濡れて品質が低下します。その対策のために、2年前からビニールハウスの中にコンテナを入れて、落花生を乾燥させる取り組みを始めました」。


収穫体験や飲食ができる観光農園を作ってみたい
202111_yokogao_oono4.jpg 現在、オオノ農園では千葉県が新しく開発した品種「Qなっつ」を全体の5割強で栽培している。甘味が凝縮し、柔らかな食感が人気だという。また、渋皮にポリフェノールが多く含まれていることが話題になり、商品では渋皮の付いた素煎りピーナッツや、渋皮入りのペーストに注目が集まっているそうだ。
右 :千葉県が新しく開発した品種「Qなっつ」のから煎り落花生


 最後に、大野さん親子に今後の展望を聞いてみると、「農園に直売店やカフェを併設したり、収穫体験などのイベントもやってみたいですね」と俊江さん。「生の落花生を機械で洗って持ち帰ってもらったり、堀りたてのものをゆでて、食べてもらったり......。そんなサービスもいいかなと考えています。今は農園だけで販売しているピーナッツのアイスクリームを提供したり、いろいろな試みをしてみたいですね」。雄一郎さんも「新しいファンを作るためにも、観光農園の取り組みは面白いと思います」と話す。オオノ農園の挑戦は、まだまだ続きそうだ。(ライター 北野知美 令和2年8月4日取材 協力:千葉県香取農業事務所改良普及課)
●月刊「技術と普及」令和2年11月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


株式会社オオノ農園 ホームページ
千葉県香取市高萩512-3
TEL:0478-75-1123