提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


安全を重視した養鶏を実践。おいしく安全な卵から生まれる絶品プリンで客を呼ぶ

2020年05月01日

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左から 加藤智観さん、本藏真琴さん、加藤清子さん(東京都町田市 有限会社カトウファーム)


 有限会社カトウファームは東京都の西南部、神奈川県境に近い町田市相原町の丘陵地にある。加藤智観代表取締役社長の父、先代の博康さんが昭和34年に創業、20年ほど前に現在地に移転した。鶏舎4棟は都内唯一のウインドレス仕様で、鶏約3000羽を飼育している。養鶏は智観さん、プリン製造と直売所は妹の真琴さん、経理は母の清子さんがそれぞれ主担当するゆるやかな業務分担で、家族を中心にパート10名を雇用する経営である。


昔の味を彷彿させるおいしい卵
 プリンの原料となるのは「こだわりの」鶏卵だ。カトウファームには先代から引き継いだ、卵作りのポリシーがある。抗生物質が養鶏に広く使われることに疑問を持った先代が、抗生物質は使わない、遺伝子組み換え飼料を与えない、敷地の地下100mから汲み上げた天然水を利用するという「空気、エサ、水」へのこだわりを飼養の中心に据え、養鶏を行ってきた。エサは独自配合の飼料を与えているが、中でも酵母菌に注目した。


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左 :ウルトラランは、グレードアップしたエサを食べた鶏が生んだ限定卵


 放し飼いの鶏は、絶えず地面を突つきながら動いている。観察すると、虫だけでなく土もついばんでいる。微生物を摂るための仕草で、昔の鶏は健康だったに違いない。そこでカトウファームでは、飼料に自家製酵母菌を加えている。質の良い飼料を与えれば、コストはかかるが卵の味は確実によくなる。常連さんから「ここの卵を食べると他の卵を食べられなくなる」「子供が他の卵を食べたがらなくて(困る)」や、エサを少し変えただけで「味が変わったね」と声がかかる。卵はたいへん繊細で、「季節によっても変わります。冬の卵はしっかり、夏は水っぽくなりますよ」と加藤さんは話す。


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養鶏場の外観(左)と鶏のエサの入ったタンク(右)


誰もが一口食べて感嘆するプリン
 平成15年3月にプリン工場を設立した。先代が知人の食品関係者から「こんなにおいしい卵なのだから、プリンでも作ったらどうか」と勧められたのがきっかけだった。

 ちょうど真琴さんが大学卒業を目前にして、社会福祉士になるための就職活動をしていたときだったが、父の「加工を始めるぞ」の一声で、神奈川県横須賀市の養鶏場に送り込まれ、住み込みで修業をすることになった。そこでは元板前さんが製造責任者で、プリン以外にも錦糸卵、厚焼き卵、液卵を作っており、真琴さんにプリン作りを指導してくれた。プリン生地やカラメルの作り方から、スチームコンベクションオーブンの取り扱い、ラベル貼りや出荷までを一通り、4カ月かけてみっちり教わり、実家に戻った。

 プリン製造を始めるに当たっては、調理器具の発注から自分たちだけで手探りで行い、オーブンや冷却装置、はては納入先スーパーの要求で、金属探知機や配送用の冷蔵冷凍車も自前で揃えた。この初期投資が大きく、なかなか利益は出なかった。おまけに「指定されたレシピはおいしいと思えなかった」(真琴さん)ので、契約解消とともに自前のレシピに変更し、「かとうさんのぷりん」として販売を始めた。


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左 :加工場の外観 / 右 :直売所はカトウファームの入口からすぐのところにある


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左 :一目でわかる、本日の取り扱いプリン
右 :3種類のプリン。左から『なめらか』『カスタード』『ジャージー』


 定番のプリンは3種類。『なめらか』は黄身と生クリームを使いこってりした味。『カスタード』は全卵にカラメルソースの昔ながらのさっぱり味。『ジャージー』は黄身と磯沼ミルクファーム(八王子市)の牛乳がコラボした濃厚な味だ。『カスタード』と『ジャージー』は町田市の"町田市名産品"に選ばれ、東京都地域特産品認証食品(※)には3種類とも認定されている。また、近隣の大学とのコラボや、季節の食材を使ったプリンを不定期に扱っている。取材に訪れた2月下旬には、バレンタインデーを意識したチョコレートプリンがあった。
都内産の原材料を使用した加工食品、または東京の伝統的手法など生産方法に特徴があると認められる食品


プリンは養鶏場の華
 「かとうさんのぷりん」は牛乳、生クリーム、卵、砂糖が主な原料で、保存料は未使用、添加物も極力使用しないので、賞味期限は製造日を含め7日と短い。プリン加工は毎日ではなく、在庫や売れ行きを見ながらの製造となる。また「同じレシピでも、なぜだかはわかりませんが、100個以下で作るほうがおいしいのです。だから一度に大量に作ることはしません。せっかく作るならば、おいしいプリンを作りたいから」と真琴さんは言う。

 真琴さんを中心に、社長、パート2名を含む3~4名でプリンを製造している。ロットは小さくても、カトウファームの衛生管理はHACCP並みのレベルだ。HACCP管理の有資格者に厳しい指導を受け、マニュアルに沿って自ら作ったチェックリストによる衛生管理を徹底している。


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左 :生みたての卵を販売している
右 :接客する真琴さん(右)とパートさん(中央)


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左 :ギフトや宅配用のプリン、卵のセットがずらりと並ぶ
右 :殻に金粉をまぶした薫製卵には誰もがびっくりする


 「先代は、経営を安定させるために卵だけでなくプリン加工もすると言いましたが、実際のところ、プリンは利益になりません。そもそもうちは卵が命です。でも、プリンは養鶏場の華なんです。卵以外にもプリンのような売り物があると、お客さんの足が向きやすいと思います」と、智観さんは考える。
 加工場の横にある直売所には、卵、プリン、薫製卵などのほかに、カトウファームや近くの農家が持ち込んだ野菜と花が並んでいる。直売所は週3日、営業している。卵は自動販売機で毎日(10~17時)買うことができる。


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左 :卵の自動販売機。屋根付きで雨の日でも買いやすい。販売は日中に限っている
右 :近くにある法政大学の学生さんがプリンを食べにやってきた。「おいしい!」を連発


近隣への販売を重視して大切にする
 最近、頭が痛いのは運送費の高騰だ。ネット販売等による注文は、もともと代行会社を通しているが、このところのコスト上昇で利益がますます出なくなった。智観さんは「人件費や設備償却費を考えると、加工では利益を出せません。その上、運送費が上がってしまった」。だから「これからは、今まで以上に近くの消費者を大切にしていきたい」と考えている。また以前から「たまごのお話し会」を開いて、カトウファームの養鶏や安全な卵の考え方などを伝えてきたが「これからも頼まれれば喜んで行きます」と話す。

 時代に合わせて変えるところは変えながら、変えることはない「食の安全」を磨きつつ深めつつ、養鶏もプリン加工も続けていきたいと話してくれた。(水越園子 平成31年2月22日取材 協力:東京都農業振興事務所南多摩農業改良普及センター)
●月刊「技術と普及」平成31年5月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


有限会社カトウファーム ホームページ
東京都町田市相原町4420
電話 042-783-0158


■カトウファーム直売所
営業日:週3日(水、金、土)11~15時
卵の自動販売機:10~17時(毎日)