提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


育種から肥育までこだわった "伝説の下妻金豚"を直営店で販売。素材を活かした加工品も人気!

2019年10月03日

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倉持 勝さん (茨城県下妻市 倉持ピッグファウム株式会社)


 茨城県西部にある下妻市で、半世紀以上養豚業を営んできた、倉持ピッグファウム株式会社。当初は種豚作りを行っていたが、現社長の倉持勝さんが並行して繁殖および肥育に取り組み、規模を拡大した。同社が生産する豚は、うま味とコクがあり、後味がさっぱりしているのが特徴だ。平成28年には、次男の暁成さんが責任者となって、直営店を開業。"伝説の下妻金豚"とネーミングした精肉と、豚肉を使ったさまざまな加工品や惣菜を販売し、高い人気を集めている。


父から受け継いだ種豚場を肥育まで行う一貫体制にシフト
201909_yokogao_kuramochi11.jpg 勝さんが父から養豚の事業を引き継いだのは昭和57年、20歳の時だった。「父は種豚を作るブリーダーで、数々の品評会で賞を受賞するなど、優れた技術をもっていました。しかし私は、育種とともに肥育にも関わって、おいしい肉豚を作りたかった。もっと消費者に近づきたいという思いと同時に、種豚経営だけでは不安という気持ちがありました」。


 勝さんはまず、20頭の親豚を80頭に増やすことにした。しかし、「資金調達がままならないスタートだったので、一貫経営に至るまでには時間がかかりました。畜舎を改築する時も、掘削、生コンを打つなどの基礎工事は、自分でやりました。少しずつ規模を拡大し、肉質も評価されて、「倉持」の銘柄で東京食肉市場に出荷できるようになりました」。
 長男の朝成さんが農場で働きはじめたのを機に、平成18年には肥育農場を建設。朝成さんは現在、農場長を務めている。
右 :294号線から見える赤い看板が目印。「ぶた」の文字は勝さんの直筆だ


米中心のこだわりの飼料でアミノ酸含有量の高い肉豚に
 平成21年に法人化して、倉持ピッグファウム株式会社を設立した。現在の飼育規模は、繁殖用の種雌豚200頭、種雄豚25頭、常時飼養数は2500頭だ。年間の出荷頭数は約4200頭(うち種豚は600頭)で、売り上げは年間2億円強にのぼる。社長を含め役員が3名、従業員4名、海外研修生1名、パートタイマー12名の体制をとっている。


201909_yokogao_kuramochi12.jpg 同社が手がける豚作りの特徴は、幼豚時から飼料にこだわり、体調管理を徹底していることにある。「豚も人間と同じで、きれいな肌質や健康体を維持するには体に良いものを食べ、内臓を丈夫にすることが大事です。飼料メーカーさんと相談し、生後100日からは動物性のものを一切使わず、米を中心とした植物性の飼料を与えるようにしています。そうして育った豚は、コクとうま味があり、脂が甘く、後味がさっぱりしている。うちの肉は、焼いて翌日まで置いても固くならないのです」。


 勝さんは以前、自社肉の成分分析を検査機関に依頼したことがある。「赤身のアミノ酸の含有量が一般の肉の3~4倍と多く、脂肪のオレイン酸の割合も高いという結果が出ました。アミノ酸はうま味の成分であり、オレイン酸は口当たりを滑らかにします。自分のものさしで『おいしい』と感じたものが科学的にも証明されて、自信がつきました」。
左 :植物性の飼料にこだわって豚を育成


お客様においしさを伝えたいと精肉と加工品の直売店を開業
 自信を得た一方で、「親豚の改良や、飼料にこだわって優良な肉豚を作っても、消費者にそれを伝えられないというもどかしさもあった」と勝さんは話す。「豚の格付けは、牛の等級のような明確さがなく、味よりも見た目が重視されます。最終的に肉の良し悪しを決めるのは、肉屋さん。それならば、自分が作った豚を直接お客様に届けて、判断をしてもらいたいと思いました」。

 そこで、直営店「ぶぅーぶー~豚職人工房~」を平成28年に開業した。次男の暁成さんが店長を務め、精肉や加工品や惣菜等を販売している。暁成さんは、高校卒業後、(公社)全国食肉学校(群馬県玉村町)で学び、東京や名古屋で修行をして、加工の技術を習得した。開店当初から、商品開発を一手に引き受けている。「おいしい加工品を作るには、原料が良いことが必須です。その点、自分は養豚の現場を知り、自社肉が安全で良質であると知っている。それが大きな強みですね」と暁成さん。また、「店でお客様と直に接することで、生の声を農場にフィードバックし、さらにおいしい豚作りを目指すことができます」とも話す。


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左 :子どもから年配の方まで覚えやすいようにネーミング
右 :店内のようす


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左 :うま味成分が多く、さっぱりとした食感の下妻金豚
右 :ポークジャーキーは県の農産加工品コンクールで金賞を受賞した


各部位の特徴を活かして余りが出ないよう1頭丸ごと利用
 暁成さんの仕事は、"豚1頭をどのように使うか"を、ベテランの職人と話し合い、豚をさばくことから始まる。「この豚肉は精肉にして、こっちの豚肉はソーセージにするというように、肉質や部位の特徴を活かし、かつ、無駄が出ないように処理をしていきます。いつも、その豚肉がお客様に一番喜ばれる方法を考える。もちろん、こちらが作ったものとお客様が買い求める量が、常に同じとはいかないので、原料が余る場合もある。そうならないように、どう利用すべきか、練り直します。今のところは、1頭分をうまく回転することができています」。


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左 :しっとり仕上げたハムや、2週間熟成させ、豚肉のうま味を引き出したベーコンも人気
右 :ソーセージのパリッとした皮の食感が楽しめるよう、羊の腸にしっかりと生地を詰める暁成さん


 同店の加工品は、ハムやベーコン、ソーセージ、ジャーキーから、コロッケ、メンチカツ、トンカツ、焼き豚、角煮などの惣菜まで、バリエーションが豊かだ。「加工する際は、素材が持つ味わいや食感、スモークの香り等を大事にし、シンプルに手作りしています。原価はかかりますが、調味料にもこだわっています。共働きの家庭が増え、中食の需要が伸びているので、販売量も増えるだろうと考えています」。最近では、レトルトのカレー(甘口と中辛)を新商品として販売し、リピーターが続出している。


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左 :三枚肉を秘伝のタレでじっくり煮込んだ角煮
右 :自社製店のラードを使って揚げたサクサクのコロッケ


初年度から大幅に売り上げ目標をクリア。お客様本位の店作りに徹する
 直売店「ぶぅーぶー」の初年度の売り上げは、約6800万円。これは、六次産業化の総合化事業計画の認定を受ける際に提出した、目標売り上げ5年目の90%以上に当たる。2年目の今年度は、9700万円を計上した。「正直、こんなに繁盛するとは思いませんでした。予想外の展開に怖さも感じますが、作る側としては面白さがあります」と暁成さん。勝さんも「当店は会員制ですが、土日の来客数のうち会員の割合は、10~15%ぐらい。まだまだ伸びしろがあると思います」と期待を寄せる。一方、人材育成という課題もある。「店が成長するスピードに、スタッフを育てるスピードが追い付いていない。早急に対応しなくてはいけません」。


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左 :直営店の敷地内には、一息つけるテラス席を設置
右 :店のバックヤードで、加工品や惣菜をていねいに手作り


 暁成さんは「2号店、3号店の出店をめざしたい」と今後の展望を語る。「一人でも多くのお客様に豚肉のおいしさを伝えたい。そのために、試食やおいしい食べ方を伝えるなど、お客様とのコミュニケーションを大切にしたいと思っています。『お客様の笑顔のために』という当社のモットーを、これからも変わらず守り続けていきます」。(ライター 北野知美 平成30年5月30日取材 協力:茨城県県西農林事務所経営・普及部門)
●月刊「技術と普及」平成30年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


▼倉持ピッグファウム株式会社
茨城県下妻市谷田部143番地
電話 0296-44-2405

▼ぶぅーぶー~豚職人工房~ ホームページ
茨城県下妻市谷田部字石橋1264-3
電話 0296-45-4186
定休日  月曜日(月曜が祝日の場合は営業。翌火曜日が休み)
開店時間 11:00~19:00