提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


直売所と農園で農産物の入口から出口までをプロデュース

2019年05月13日

 (株)クボタは、自社が持つハードとソフトを活用し、省力・低コストや精密技術を実践する場として、全国13カ所で「クボタファーム」を展開している。
 1都9県を担当する(株)関東甲信クボタは、クボタファームの一環として、2013年に「おれん家(ぢ)ふぁ~む」(直売所)を、2016年には「おれん家農園」を群馬県前橋市に設立、農産物栽培から商品企画、開発、販売等、幅広い取組みをおこなっている。


1都9県のネットワークを活かして商品を販売
 関東平野の北西端、赤城山南麓に位置する前橋市。高崎駅から両毛線で10分ほど揺られた前橋大島駅のほど近く、幹線道路から少し奥まった場所で、オレンジ色の看板が目を引く。(株)関東甲信クボタが運営する直売所「おれん家ふぁ~む」だ。
 直売所の運営はクボタ内では初めての試みで、「ノウハウを蓄積しているところ」と話してくれたのは(株)関東甲信クボタ おれん家グループの小柄店長。
 広告の看板設置などには規制があり、思うようにPRはできないが、SNSなどによる口コミで情報が広がり、店内レストランのランチバイキングは、開店直後から予約が入るほどの人気ぶり。昼時や夕方には多くの人でにぎわっている。


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左 :パッケージデザインも小柄さん(左)が手がける


 「おれん家ふぁ~む」では、地元の農産物・加工品を中心に、とくに前橋市の推奨農産物「赤城の恵み」ブランドの商品や群馬県認証ブランド商品をPRした商品を取り揃えている。前橋市はワインの国内消費量10位にランキングされており、国産ワインの品揃えも豊富だ。販売だけでなく商品開発も重要な位置づけとし、加工商品についても積極的に開発を進めている。工場の原料として顧客の農産物を仕入れて、通常ラインの材料として使用。販路を持たない農家と仕入れ先をつないでいる。農産物の中継基地としての役割も果たしており、飲食店やレストランチェーン、他の直売所などに向けた独自の販路を開拓している。


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青果コーナーには、農園で取れたばかりの「おれん家とまと」が並ぶ(右)。購入しやすい価格にするため、内容量を調整している


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左 :ワインや日本酒などの酒類も豊富な品揃えを誇る
右 :売り上げの3割は米と米関係の商品が占める


実験的な取組をおこなう「おれん家農園」
 「おれん家ふぁ~む」から車で20分ほどの場所にある「おれん家農園」。ハウス4棟15a、露地70aほどの農園で、実証試験を兼ねた、さまざまな取組を実施している。
 スタッフは、農園管理、栽培計画や施肥設計を含めたすべてを担当する農場長の後藤さんと、アルバイト2名の3名体制。
 福岡県出身の後藤さんは、地元の種苗関係の小売企業に15年勤務。「小規模の会社でいろいろなことをやらせてもらった」経験がいま、役に立っている。


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左 :露地では、ちょうどブロッコリーの植付けがおわったところ
右 :トンネルの中にはグリーンリーフ


○広間口無柱ハウス
 ハウス環境モニタリングシステムの「プロファーム」を利用し、パソコンやスマートフォンでリアルタイムに管理。現在栽培しているリーフレタスは週に約1000本の注文があり、これを外食チェーンに卸している。無柱のため、トラクタ作業も可能。


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○計量鉄骨ハウス
 アイメック(フィルム栽培システム)や環境モニタリングシステムを利用してミニトマト(アイコ、イエローアイコ)を栽培。
 アイコを選択した理由は「他のクボタファームでは作っていない品種で、アイメックの栽培にも向いている」から。10月17日定植したアイコはちょうど収穫時期を迎え、肉厚で凝縮された味わいがあり、甘みも際立っている。
アルバイトが作業中に気づいたことがあれば、その場所にピンチを付けて、後から後藤さんが確認できるようにするなど、作業管理の仕組みを構築している。
 通常、収穫は5~6月までで7月にはハウスの片づけに入るが、この時期は暑さが厳しいため、作業性を考えて8月まで収穫を続ける。水やりを抑えて栽培するため、株のつくりがコンパクトで株間は通常の半分、倍量の植付けが可能である。

 広間口無柱ハウスと計量鉄骨ハウスはともにヒートポンプを利用。CO2施肥器のダッチジェット等も取り入れ、品質向上に努めている。


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左・中 :アイメックで栽培された「アイコ」/ 右 :農場長の後藤さん


○普及型パイプハウス
 ポット養液栽培人工培土を使った「おれん家養液栽培システム」を導入。
 「おれん家養液栽培システム」は、苗づくりの段階から人工の専用培土を使用する必要があるが、小ロット(1000本)では受けてもらえないため、農業高校に苗作りを依頼している。「企業秘密」の専用培土は水や肥料の持ちがよく、軽くて作業性もよい。通常の培土に混ぜることで土壌改良剤としても使用できる。病気が出たらポットごと廃棄すれば済むことや、水やりや肥料管理が自動で行われるため、初心者でも簡単においしい作物をつくることができるシステムだ。


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 その他のハウスでは、ウルトラファインバブルを使用した水耕栽培や里山式栽培システムの試験なども行っている。事務所と出荷施設を兼ねたパイプハウスは、オリンピック後に大量に処分されると見込まれる足場管を使用している。ASIAGAP取得もめざし、準備を進めているところだ。


 「おれん家農園」の農産物は、「おれん家ふぁ~む」のレストランで利用しているが、取引先のレストランチェーンなどから要望があれば、少量の注文も引き受けている。農園で栽培し、ある程度取引量がまとまった時点で地域の生産者に栽培を依頼、農園では別の作物に切り替える。初めから売り先が決まっているため、生産者も安心して引き受けることができる。次は青汁などで注目されているケールの栽培を予定している。

 新規就農者(企業)や農家から寄せられる、栽培に関する相談にも応じている。また、高齢で農作業が難しくなって荒れた農地を引き受けるなど、地域の担い手としての役割も果たしている。直売所と農場が連携して生産者と消費者をつなぎ、地域に密着したさまざまな取組みをおこなう「おれん家ふぁ~む」の動きからは、今後も目が離せない。(みんなの農業広場事務局 平成31年3月26日取材)