提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


露地野菜の生産から加工まで一貫で経営。収穫機の導入で産地を維持したい

2019年03月15日

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税所篤朗さん、税所篤さん(宮崎県小林市 (有)丸忠園芸組合)


早くから加工業務用野菜生産に取り組む
 宮崎県小林市は鹿児島県との県境にそびえる霧島連山の北に位置する。(有)丸忠園芸組合(以下、丸忠園芸)のある小林市北西方は標高300mほどの畑作が盛んな地域だ。丸忠園芸の主力品目はホウレンソウで、自社生産と契約で約100haを生産・集荷している。栽培に加えてグループ会社の(株)綾・野菜加工館では、丸忠園芸で生産した野菜を冷凍および業務用に加工している。グループ会社が連携して生産から加工までの一貫経営を行って約10年になる。丸忠園芸が加工用野菜の生産を始めたのは昭和の終わり頃からで、国内の加工・業務用野菜生産の草分けと言える。


 会長の税所篤朗さんは昭和37年にサツマイモ栽培で就農し、43年に農家7戸で丸忠園芸組合を結成して、プリンスメロンと裏作のダイコン栽培(漬物加工用)に取り組んだ。昭和の終わり頃のバブル期には高値がついたが、バブル崩壊後に「これからは野菜の時代になる」と、メロンからダイコンに転換した。その後、消費者の健康志向を受け、減農薬で土づくりにこだわった安全安心な野菜作りに取り組み始め、加工用ホウレンソウを本格的に作るようになった。


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ホウレンソウの圃場(左)と野菜一次加工(洗浄)用施設(右)


冷凍加工会社の経営に参画
 その頃、隣接するえびの市に野菜の冷凍加工会社ができ、税所さんのホウレンソウは、その会社との契約栽培となった。周辺農家のホウレンソウもとりまとめて搬入したが、当時、加工用は青果用よりも品質が劣るとされ、価格が低く抑えられた上に受け入れ量も不安定だった。契約栽培の価格は安定しなくてはいけないと考えた税所さんは交渉の結果、年間通して決まった生産価格を取り決めた。出荷にあたっては、加工場の都合が優先されるために、収穫がピークの時期であっても、加工場で他の製品を加工しているときは受け入れてもらえないなど、計画的な栽培・出荷ができないといった問題があった。


 この契約栽培は18年続いたが、約10年前に県内綾町で売りに出された冷凍加工工場経営を関係者5名で引き継ぐことになった。地元銀行から融資を受ける条件として、税所さんが社長になるよう要請された。「ホウレンソウの納め先が自分の会社になったわけです」それが現在の(株)綾・野菜加工館(以下、加工館)だ。

 税所さんの独立に際し、周辺農家全員と製品を購入していたバイヤーの半数が行動をともにしてくれた。加工館は、1年目こそ6000万円の赤字が出たが、3年目には黒字に転じた。株主への配当は順調で、処理能力の拡大に応じて設備投資も行ってきた。税所さんの弟が社長を務めるようになって、丸忠園芸と経営をはっきり分離した。


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ホウレンソウの加工作業


 冷凍野菜の取引先にはグリーンコープ・生活クラブ生協・オイシックス・大地を守る会など、青果取引もある顧客も含めて、とくに品質を重要視する顧客の名前が並ぶ。時々、輸入ホウレンソウの代替品として、とんでもない価格を持ちかけるバイヤーがいるが、総じて「冷凍野菜への引き合いは強い」と税所さんは話す。
 丸忠園芸は、総菜や生協のニーズに応じて加工した野菜も取り扱う。生鮮野菜として出荷しているのはゴボウとホウレンソウだけだ。

 「加工のメリットは、一年中売れること」と話すのは、長男で社長の篤さん。生産した野菜を冷凍加工することでむだにならず、冷凍野菜として在庫し、いつでも販売できる。冷凍技術の向上はめざましく、より長期の保存も可能になっているが、1年以内に順次売れていく。増える注文や高齢化による工場の人手不足に対応するためにも、よりいっそうの機械化や古い機械の更新等の設備投資を行っている。


資源循環型の農業から生まれる農作物
 現在、丸忠園芸と加工館は、グループ会社という位置づけだ。「加工館が必要とする野菜を丸忠園芸が作る、という形でずっとやってきた」と税所さんは説明する。栽培された野菜の7~8割が加工館へ出荷される。現在の品目と面積は、看板のホウレンソウが小林市を中心に自社生産35haと契約65haの約100ha。コマツナ13ha、チンゲンサイ4haと葉物野菜を主力としている。その他にはゴボウ、サトイモ、オクラ、ゴーヤ、小ネギ、タマネギ、ラッキョウ等を栽培している。冷凍品の注文が順調に伸びているため、栽培面積を増やさないと需要に応じられない状況だ。


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左 :丸忠園芸園芸組合の圃場。ゴーヤー(奥)、葉物野菜(真ん中)、手前の黒土部分には収穫機械用の施設が作られる


 税所さんは、微生物が土を活性化するような土づくりを重視して、農薬や化学肥料を減らす栽培を実践してきた。元肥や追肥は、自社設計のオリジナル肥料を使用している。契約野菜の生産者にも、品種や肥料等の資材は丸忠園芸と同じものを使用するように指導し、栽培方法も同一として、トレーサビリティに対応できる体制をとっている。冬に向けて栽培が始まる9月上旬には生産者を集めて説明会を開き、作付け計画等の確認と統一を図るようにしている。

 ホウレンソウは午前中に収穫され、ただちに加工場に搬入される。洗浄・加工・冷凍までの所要時間が約15分と短く、鮮度をとくに重要視している。このように生産・加工された冷凍ホウレンソウは、冬でも豊富な太陽光線を受けて繊維質が柔らかく、糖度は最高13度にもなり、味も申し分ない。


ホウレンソウ収穫機導入に期待
 生産で一番問題なのは雇用だ。高齢化により人の確保が難しいため、外国人研修生を受け入れている。ホウレンソウの収穫に合わせて人数を決めているが、仕事が少ない夏場はオクラやゴーヤ等の夏野菜の栽培をすることで、「自分の給料分は稼いで」と研修生にはっぱをかけている。

201902_yokogao_maruchu_2.jpg 契約農家の高齢化も進んでおり、「栽培管理はできるけれど収穫は無理」という声に応えて、収穫作業を引き受ける面積が年々増えている。しかしながら手収穫による受託作業が限界のため、人手不足解消と人件費削減の切り札として、来る冬シーズンからホウレンソウ収穫機の導入を計画しており、期待は大きい。
右 :ホウレンソウの収穫作業


 「冷凍野菜の需要は年々増えています。現状では面積拡大は難しいが、農業はやり方次第。最近は天候も定まらなくなってきたし、課題は少なくないけれど、対策を考えながらできるのが良いところ」「GAP認証は、いずれは取りたい。輸出は今のところ考えていない」と税所さん。西諸県農業改良普及センターの福元専門主幹と廣津副主幹は「丸忠園芸さんも加工館さんも、今や地域農業になくてはならない存在です」と口をそろえた。(平成29年8月18日取材)
●月刊「技術と普及」平成29年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載