提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


昼夜の気温差で甘さが凝縮! ひるがの高原野菜のおいしさを伝え 地域の農業を盛り上げたい

2018年12月05日

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奥村 照彦さん (岐阜県郡上市 有限会社ひるがのラファノス) 


 岐阜県郡上市の北西部に広がる標高1000mのひるがの高原。有限会社「ひるがのラファノス」では、冷涼な気候を活かして、ダイコンやニンジンをはじめ、甘くみずみずしい高原野菜を生産。また、ニンジンジュースや切干しダイコンなど、加工品の製造にも力を入れ、順調に販売量を伸ばしている。代表取締役の奥村照彦さんは「攻めの経営を続けることで、ひるがの高原野菜の知名度を上げ、地域活性化につなげたい」と、率先して販路の開拓や加工品の開発を行っている。


農業の収益向上をめざし、会社を設立
 6~11月は、「ひるがの高原大根」の収穫時期だ。ひるがの高原地帯は、昼と夜の気温差が大きいため、ダイコンが日中に蓄えた養分が、夜になっても消費されず、甘さや旨味が凝縮。その味わいとみずみずしい食感が人気となり、県内はもとより、愛知県や関西、北陸地方にも広く浸透している。
 「ひるがのラファノス」の奥村照彦さんが、ダイコン作りを始めたのは平成6年、32歳の時。それまで建築業に携わっていたが、会社の将来性や家族の生活を考慮し、故郷に戻った。「最初の3年間は、夏にダイコンを作り、冬は岐阜市で建築の仕事をしていました。その頃は、冬に働いたお金を夏に回している感じでしたね」。そして、農業の収益をもっと上げることはできないかと考えた末、会社の立ち上げを決意した。


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 :標高1000mの広々とした大地でダイコンを栽培している
 :朝、収穫したダイコンを洗い場に運び、水洗いをする


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 :白さを取り戻したダイコンを、一本一本丁寧に選別
 :加工場に運ばれた切り干し用のダイコン


ダイコンの生産量を増やし自ら販路を開拓
 奥村さんは法人化に向け、生産規模を大きくしようと、現在、農場長をしている地元の同級生に声をかけ、共同でダイコン栽培を始めた。「普及センターの担当の方にも、農業の技術的なことから法人化の手続きまで、いろいろと相談にのってもらいました。『ラファノス』という名称も、普及員さんのアイデアなんですよ」。ちなみにラファノスとは、ラテン語でダイコンを意味する。

 平成15年3月、会社を設立。「財務管理を外部に託したところ、税理士さんから採算の悪さを指摘されました。そこで、販売ルートを自分で開拓してみようと考えました。運送業者など、周囲の人から、『○○さんのところがダイコンを欲しがっているよ』と情報をもらったり、また「ひるがの高原サービスエリア」(東海北陸自動車道)で直売をしたりして、販路を広げていきました」。同時に会社の体力作りも必要であると、農地をそれまでの2倍の10haに拡大。「生産量を増やすことで、少しずつ『ひるがのラファノス』の存在が知られるようになりました」。


雪の下で甘さを蓄えた「春まちにんじん」が人気に
 ダイコンとともに、同社の知名度を上げたのは、「春まちにんじん」だ。雪の下で春を待ち、2~4月に収穫するニンジンは、糖度が10度以上と甘い。試験的に作ったニンジンを初めて食べた奥村さんは、そのおいしさを確信。ジュースにしてみると、「野菜特有の青臭さがなく、ニンジンが苦手な人でも大丈夫ではないか」と思ったという。
 その後、観光客の多い「ひるがの高原サービスエリア」や、岐阜県庁などに出向き、春まちにんじんを販売。すぐに商標登録も行った。「ブランドを作る大変さはもちろんありますが、世の中に良品がたくさんあっても、それを認知してもらう難しさを実感しました。県庁に5年間通うなど、地道に告知をしてきたので認知もされましたが、もし途中であきらめていたら、ただのおいしいニンジンで終わっていたでしょう」と、奥村さんは振り返る。


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 :雪の下でじっと春を待ち、甘さを蓄えた「春まちにんじん」
 :新鮮でみずみずしい「ひるがのラファノス」の高原野菜


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「ひるがの高原サービスエリア」の直売所には、多くの観光客が訪れる


 現在、同社は、ダイコン(20ha)、ニンジン(春まち+秋・4ha)の他に、ジャガイモやトウモロコシ、トマトなど、10種類以上の野菜を生産。化学肥料、化学農薬の低減に努め、「ぎふクリーン農業認定」「JASオーガニック認定」等を取得し、今後もGAP認証の取得をめざすなど、安全安心な野菜の提供を心がけている。


通年で野菜を扱うためにジュースなどの加工品を製造
 奥村さんは、加工品の開発にも積極的に取り組み、まずは切り干し大根を商品化した。「ひるがの高原大根は味がいいので、切干しにしても、おいしく仕上がります。学校の給食にも使われています」。製造の際の品質管理も徹底し、加工場は「ISO9001」認証を取得している。「近年は、秋に収穫したダイコンに土をかぶせ、冬の間、雪の下に保存する『春まち大根』を作り、通年で切り干しを製造することができるようになりました。出荷量も増え、加工場が手狭になってきたので、今年(平成29年)から新しい工場を建設しています」。


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 :ジュース、漬物、乾物と加工品の種類も豊富
 :高原野菜で作ったスープやジュースなどの加工品


 次に手がけたのは、春まちにんじんを使ったジュースだ。「加工をすれば、季節の野菜も年間を通して扱うことができ、商品のムダを回避することができます。最初に作ったジュースは繊維を入れず、ニンジンが苦手な人でも飲みやすいように工夫しました。その後、お客さんのニーズもあり、繊維を残して、もっとニンジンの甘さが感じられるプレミアムジュースを作りました」。
 他にも、スープや漬物、たべる味噌などを商品化。そして今は、「ドレッシングを試作しています」と奥村さん。「春まちにんじん、黄色のアイコ(トマト)、ダイコンの3種類で展開します。色合いも美しくしたいので、ダイコンドレッシングは白色にする予定です」。


就農希望者を支援し、農業の発展に努める
201811_yokogao_hirugano_15.jpg このように奥村さんは、会社を設立した後、率先して販路の開拓や、加工品の開発を推進してきた。売上も堅調に伸ばし、平成29年には、約2億5,000万円を計上。現在、社員は10名で、パートを含め25人の従業員を抱えている。「農業は販売まで関わると、商品がどう売られているかを把握でき、また売り上げ向上にもつながるので、やりがいが増します」。
右 :「ひるがのラファノス」で野菜を作っている従業員のみなさん


 その一方で奥村さんは、研修生やインターンシップの受け入れや、就農希望者の支援も積極的に行っている。「新規で独立するのは大変ですが、ラファノスに来れば、ハウスや機器を借りたり、資材の共同購入もできます。実績を作って、いざ独立をする時には、販売先の紹介もしています。こうしてみんなで、『ひるがの高原』野菜というブランドを盛り上げていきたいですね。私自身も、観光地という立地を活かして、トウモロコシやトマトの収穫体験をやってみよう、朝市を大々的に開催してみようなどと、構想を練っています」。奥村さんの攻めの経営は今後も続く。(ライター 北野知美 平成29年7月27日取材 協力:岐阜県郡上農林事務所農業普及課)
●月刊「技術と普及」平成29年11月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


有限会社ひるがのラファノス ホームページ
岐阜県郡上市高鷲町鷲見1855番地
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