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農業経営者の横顔



コンニャク、漬物、冷凍野菜を自社加工。有機栽培にこだわって付加価値を追求

2018年08月06日

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澤浦彰治さん (群馬県利根郡昭和村 農業生産法人グリンリーフ株式会社)


 群馬県の北部、豊かな自然が広がる赤城山の山麓に位置する群馬県昭和村。コンニャクの生産量日本一を誇り、標高を生かしたレタス・ホウレンソウなどの高原野菜生産が盛んな地域だ。
 グリンリーフ(株)は、この地でいち早くコンニャクの有機栽培と加工に取り組み、卸売ルートを開拓。現在はハクサイ、コマツナ、ホウレンソウなども有機栽培を行っており、加工品では漬物や冷凍野菜などを展開。さらに地元の有機農業者グループ(株)野菜くらぶを立ち上げ、加盟している生産者が生産した野菜を、全国の生協やスーパーマーケット、外食産業向けに年間を通じて販売している。


有機栽培のコンニャクに希望を見出す
201807_yokogao_greenleaf_2.jpg  澤浦彰治さんが農業を始めたのは昭和59年、20歳の時。父の廣治さんとともに、6haほどの農地でコンニャク、ダイコン、アスパラ、ウドなどを栽培していた。並行して養豚も行っており、一時は母豚20頭ほどまで規模拡大したという。しかし、ガット・ウルグアイラウンド農業交渉と野菜の価格暴落、2つの出来事が大きな転機となった。
 「輸入の安い牛肉が入ってくれば、養豚はこの先厳しくなる。野菜も市場に出荷しているだけでは、相場に左右されて経営が安定しない。これまでの農業ではこの先やっていけない、と痛烈に感じました」。
右 :赤城山のふもとに広がるコンニャク畑


 自分で値段をつけられる農業をしたい、と強く思い、養豚を廃業してコンニャクに専念した澤浦さんは、商品化して付加価値を付けて売ろうと動き出した。加工場も設置し、当時としては珍しかった製精粉ではない生芋から加工したコンニャク製品をつくり、近所の土産物店やスーパーに営業を開始。徐々に販路を広げていった。このころから有機栽培にも取り組み始めた。

 「有機栽培に価値を見出してくださるお客さんは、リピート率が非常に高いし、生産サイドに対しての理解が大きいんです」と、こだわる理由を教えてくれた。コンニャクは過湿や乾燥に弱く、傷がつくと腐りやすい。現在でも有機栽培を行う農家は少ない。健康志向の有機商品はイタリアなどヨーロッパ7カ国に輸出も行っており、固定ファンをしっかりとつかんでいる。


「グリンリーフ」「野菜くらぶ」の誕生と新たなヒット商品
 コンニャク製品の取引先を探す中で、「野菜も用意できないか」と相談され、ニラ、ダイコンなどの無農薬野菜も生産して直接小売に卸すようになった。このころに法人化を決断、平成6年に自らの経営を法人化して「グリンリーフ」有限会社を設立し、のち株式会社へ変更した。
 合わせて、有機栽培の研究開発、有機農産物の販売を手がけるグループ「昭和野菜くらぶ」を設立、有機栽培を本格的に開始する。こちらも後に「野菜くらぶ」として平成8年に法人化し、経営の大きな転機となった。


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グリンリーフのコンニャクと漬物。原料の有機栽培、添加物不使用を基本に、豊富なラインナップが揃う
左 :栽培から加工までJAS有機加工食品基準をパスしている「有機栽培生いもまるごと芋こんにゃく」


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型の中で固まったコンニャクは、時間をかけてあくを抜く。素材の味を最大限に生かすため、手作業の工程が多い


 新商品開発にも着手。添加物や化学調味料は一切使わず、有機で育った農産物で作る漬物だ。「コンニャクは素材ですが、漬物はそのままお客様が口にする最終商品です。マーケット自体は大きいですが、消費者の嗜好は細分化していて、それぞれの規模は小さいと後からわかりました」と澤浦さんは振り返る。その後改良を重ね、コンニャク製品で開拓した販路をフル活用、ヒット商品に成長した。
 また、提携農場と協力し、下処理した野菜を自社工場で加工した冷凍野菜を開発。利便性を追求したこの商品もヒットし、コンニャク製品、漬物と合わせて、6次産業化商品の3本柱の一角を担っている。
 現在は、グループ会社で役割が分かれており、「グリンリーフ」が農産物の有機栽培と食品加工、小売への加工品販売を担当し、それ以外の農産物は「野菜くらぶ」を通じて出荷している。


積み重ねを生かした研修生独立支援やバイオマス事業
 澤浦さんは、これまでの積み重ねを生かしまがら新しい取り組みをはじめる。その中の一つが独立支援プログラムだ。「野菜くらぶ」と協力して若者たちの研修を受け入れるもので、農業技術の習得から独立後の経営、農産物の出荷先まで全面的にバックアップ。このプログラムから何人もの新規就農者が独立を果たしている。「農業を目指す若者が働きに来てくれるのはうれしいのですが、独立後に苦労するケースが多い。それならサポートしよう、と思ったんです」。現在14人が独立し、新規就農で売上高1億円を超える経営者が2人いるという。
 新技術も、役立つと感じたら積極的に導入する。加工工場の廃液を液肥プラントで発酵させて、肥料として有効活用している。「乳酸菌を含む廃液を捨てるのはもったいないな、と導入しました。これが非常に効果的で、収量がグンと伸びました」。また、バイオマスボイラーを導入し、自社工場の熱源やハウス加温への利用なども行っている。


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左 :昨年、敷地内に託児所を開設。若い世代が働きやすい環境づくりを通じて、人材確保に力を入れている
右 :太陽光発電でのエネルギー自給にも取り組んでおり、100%自社内での創エネを目指している


普及がつないだ天皇杯受賞
 それまでの活動が認められ、平成20年に全国農業コンクールで農林水産大臣賞、農林水産祭で天皇杯を受賞している。この受賞は普及指導員のおかげだという。
 「やってみましょうと声をかけてもらったのが応募のきっかけで、書類作成や応募のサポートをしてもらいました。普及の方との接点は、親の代からありました。私も就農直後に4Hクラブに加入したころから始まり、野菜くらぶ立ち上げの当時は経営計画書や改善計画書の作成など、振り返るとポイントごとでお世話になっています」。群馬県利根沼田農業事務所普及指導課の鈴木忠一補佐は、「澤浦さんは、若い頃からリーダーシップを発揮されており、4Hクラブの県会長なども務めてもらいました」と話す。


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左 :平成20年に天皇杯を受賞
右 :普及指導員と語りあう澤浦さん


 今後の抱負を聞くと、「ここ数年、圃場整備や工場建設の投資を進めて来ました。ここで一度財務状況を改善したい」とのこと。足元を固め、そして次のチャレンジへ。「グリンリーフ」はこれからも進化し続ける。(編集部 平成29年3月21日取材 取材協力:群馬県利根沼田農業事務所普及指導課)
●月刊「技術と普及」平成29年7月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


グリンリーフ(株) ホームページ
群馬県利根郡昭和村赤城原844-12
TEL 0278-24-7711