提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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野菜

ロボットトラクタ活用によるサツマイモ栽培体系効率化の検討(鹿児島県 令和5年度)

背景と目的

 サツマイモ植付前作業は、堆肥や石灰等の土壌改良資材散布、殺センチュウ剤散布、肥料散布、畝立など多岐におよび、作業後の耕うん作業が必要である。オペレータが資材散布、畝立作業を行いながら並行作業で隣接するほ場でロボットトラクタの無人作業の直接監視を行うことで効率化が可能となる。
 収穫後は、基腐病対策としてほ場に残された茎葉などの残渣を迅速にすき込むことが求められる。しかし、収穫期は収穫作業が優先となるため、残渣すき込み作業を適期に行うことは困難である。
 そこで、監視可能な同一程度の面積の隣接ほ場を想定し、サツマイモ植付け前の準備作業(以下、植付前作業とする)においてロボットトラクタ活用を検討する。
 また、近年問題となっているサツマイモ基腐病対策として、収穫直後の残渣処理作業が求められている。そこで、収穫と並行作業での残渣鋤込み作業について検討する。

供試機

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  ロボットトラクタMR1000A(株式会社クボタ)

試験1 サツマイモ植付け前作業における同時並行作業の検討

1.試験概要
(1)試験場所 :鹿児島県農業開発総合センターほ場
(2)試験時期 :令和5年5月~10月
(3)供試機
 ロボットトラクタMR1000A ロータリ
 作業機:マニュアスプレッダDXS-3020、ライムソワFT2007E、電動散粒機、二畝用畝立マルチャPH-MD2

(4)試験区の構成
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(5)試験条件
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※ロボットトラクタは、登録マップ使用のため、ほ場登録時間は含まない

(6)作業方法
 サツマイモ栽培の植付け前作業において、ロボットトラクタと並行作業を行う。
 オペレータは、サツマイモ植付け前各種作業を行いながら、隣接する畑で無人作業を行うロボットトラクタの監視を行う。ロボットトラクタの外周作業時は、監視者が乗車する。

(7)調査項目
 トラクタ作業時間、ロボットトラクタ作業時間内訳

2.試験結果及び考察
(1)堆肥散布並行作業
 けん引式マニュアスプレッダ(写真1)を使用して堆肥散布を行った。
 散布量は2t/10aを目安に、堆肥積み込みにはホイルローダを使用した。
 隣接畑でロボットトラクタにより、耕うん作業を行った。
 並行作業時間196分、単独作業230分で、全体ほ場面積51aで作業時間を34分削減した(図1)
※堆肥散布では、堆肥積み込み時間があるため、全体の時間が長くなる。

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写真1 マニュアスプレッダ堆肥散布作業

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図1 マニュアスプレッダ堆肥散布とロボットトラクタ自動作業ロータリ耕うん作業時間

表1 堆肥散布時間内訳
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(2)石灰散布並行作業
 ライムソワを使用して粒状石灰散布を行い、隣接畑でロボットトラクタによる耕うん作業を行った(写真2)
 同時並行作業時間147分、単独作業時間178分で、全体ほ場面積59aで作業時間を31分削減した(図2)

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写真2 粒状石灰ライムソワ散布

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図2 ライムソワ粒状石灰散布とロボットトラクタ耕うん同時作業

表2 石灰散布における同並行作業と慣行作業の時間比較
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(3)殺センチュウ剤散布並行作業
 殺センチュウ剤は電動散粒機を使用して、作業者が歩きながら全面散布した。隣接畑でロボットトラクタにより耕うん作業を行った。並行作業時間181分、単独作業時間215分で全体ほ場面積51aで作業時間を34分削減した(図3)

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図3 殺センチュウ剤散布とロボットトラクタ耕うん同時作業

表3 殺センチュウ剤散布内訳
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(4)畝立てマルチ被覆並行作業
 二畝用畝立マルチャを使用し、畝立てとマルチ被覆作業を行った。畝立て前に隣接する畑でロボットトラクタにより耕うん作業を行い、畝立てマルチャを稼働した。同時並行作業時間223分、単独作業時間260分で、全体ほ場面積48aで作業時間を37分削減した(写真3、図4)

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写真3 畝立てマルチ被覆作業

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図4 ロボットトラクタ耕うんと畝立マルチ被覆同時作業

表4 畝立てマルチ被覆時間内訳
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3.まとめ
○サツマイモ植付け前準備において、隣接ほ場でロボットトラクタMR1000Aを使用した並行作業での耕うんを行うことで、全体面積50a規模のほ場でそれぞれ30分程度の所要時間削減効果が認められた。
○今後は、管理作業や収穫前作業についても検討を行う。

試験2 サツマイモ収穫作業と同時並行残渣鋤込み作業の検討-サツマイモ基腐病対策としての残渣処理体系検討-

1.試験方法
(1)試験場所 :農業開発総合センター内ほ場 鹿児島県南さつま市金峰町大野
(2)試験期日 :令和5年10月5日
(3)品目・品種:サツマイモ「コガネセンガン」
(4)耕種概要 :畝幅90cm、株間40cm
(5)供試機  :ロボットトラクタ(MR1000A)、ミックスロータリ(G25ADQ)、汎用いも類収穫機(TPH509)

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ミックスロータリ G25ADQ

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汎用いも類収穫機TPH509

(6)試験区の構成
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(7)試験条件
 サツマイモ収穫時、隣接するサツマイモ収穫後のほ場残渣処理について、ロボットトラクタを使用し、監視を行う想定とした。外周のロボットトラクタのオートステア作業時には、監視していたオペレータが乗車する。

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(8)作業方法
 作業時間調査は,現地サツマイモ生産者の大規模圃場で行った。ロボットトラクタMR1000Aでマッピングを行い,その後自動運転によりミックスロータリ(写真4)での耕うんを行った。同時並行作業の試算では,汎用いも類収穫機TPH509(写真5)のデータを使用し隣接畑を想定しサツマイモ収穫とのミックスロータリ耕うん同時並行作業試算を行った。試算条件として,ロボットトラクタによる自動運転は往復耕及び外周4周のうち内側2週とし、残り外周2周が隣接畑で収穫をしながら監視していたオペレータが乗車し作業した。

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図5 残渣処理ほ場  長辺150m、短辺25mの作業面積

(9)調査項目
○ミックスロータリ有人・無人作業時間作業時間、作業時の課題
○サツマイモ収穫時の作業時間

2.試験経過の概要
 大規模生産者では、収穫機移動を考慮して隣接ほ場を順番に収穫することも多い。そこで、現地サツマイモ生産者の大面積ほ場で、収穫後の残渣処理をロボットトラクタで行い作業時間や作業時の問題点握把を行った。
 収穫後の残渣処理をロータリで行うと、回転軸に茎葉が巻き付き、頻繁に除去することが必要で、作業効率が低下する。スタブルカルチでの残渣処理も検討したが、爪に茎葉と土が詰まって走行不能になり、改善が必要であった。
 そこで、効率的な残渣処理のため、攪拌能力が高くサツマイモ収穫後の茎葉処理に適応性が高いと考えられるミックスロータリを使用して、作業時間の調査を行った。

3.試験結果および考察
(1)収穫同時並行残渣処理作業では、サツマイモ収穫面積3.8a、ロボットトラクタとミックスロータリの組み合わせによる残渣処理耕うん面積37.5aのほ場で調査した(図5)。ロボットトラクタの作業時間には、ほ場登録時間を含む。同時並行作業は、収穫作業94.1分、ミックスロータリ残渣処理115.3分(待機時間37.3分含む)で、所要時間は115.3分となった。慣行作業時間は162.5分となった(図6)。同時並行作業を行うことで、47.2分の時間削減となり、慣行比71%となった(表5、写真6)

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写真6 ミックスロータリ作業

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図6 サツマイモ収穫作業とミックスロータリ残渣処理同時作業

表5 サツマイモ収穫とミックスロータリ残渣処理並行作業と慣行作業の時間比較
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(2)サツマイモ収穫は畝長70m、畝数6畝で作業を行った。収穫作業時間が長いため、同時作業では、残渣処理ミックスロータリ耕うんに37.3分の待機時間が発生した。ロボットトラクタの待機時間はアイドリングの燃料消費が発生するため、改善すべきと考えられた。収穫後の残渣処理については、縦・横方向に2回耕うんを行っている生産者もいるため、マップ登録を活かし、連続した自動運転による残渣処理を行うことも解決策になると考えられた。

(3)ロボットトラクタの監視用のリモコンは200m範囲での送受信可能だが、今回の調査では、監視者とトラクタが190m離れ、ほ場の高低差により電波が届かず、2回停止した。隣接ほ場の場合でも、高低差も含めて監視距離に留意する必要がある。

4.まとめ
○ロボットトラクタMR1000Aを使用したサツマイモ収穫と収穫後の残渣処理の並行作業は、作業競合が起こる収穫期に、より効率的な作業が可能であり、並行作業による時間削減効果が認められた。

○サツマイモ収穫は作業時間がかかることから、今回の試験ではロボットトラクタに待機時間が発生した。このことにより合計作業時間が増えること、また、アイドリング状態での待機であることから燃料も消費する。作業にあわせて自動運転だけを行い、オペレータ乗車外周作業は分けて行う方法を検討する必要もあると考えられる。


●実証年度及び担当組織
(令和5年度 鹿児島県農業開発総合センター園芸作物部農機研究室)