提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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●背景
島根県では全県的にキャベツの作付け推進を行っているが、多くは水田転作のため、排水不良による収量品質の低下が問題となっている。また、当管内においては中山間地の小規模なほ場で作付けされることが多く、暗渠が未整備であったり、野菜栽培には排水能力が不十分である水田も多い。そのため、低コストで自主施工可能な排水対策が求められている。
●目標
水田排水不良ほ場でのキャベツ栽培において、溝堀機による額縁明渠並びにサブソイラー(弾丸暗渠機)、カットドレーン(穿孔暗渠機)による簡易暗渠を施工し、排水性の改善による収量、品質の向上を目標とする。
●島根県浜田市金城町
浜田市金城町は、東西13km、南北25.8km、面積は164.30㎡で、約84%を山林が占める。耕地面積は770ha(総面積の約4.7%)で、そのうち8割を水田が占め、水稲依存度が高い状況にある。本地域は、南に高く北に低い地形を成しており、中央部から北部に向かって丘陵の盆地を作っている。農地は主に標高200~500mの中山間地域に位置し、町の中央部には金木山(かなぎやま)標高719.8mがあり、この山を境に南部は山岳地帯で気候はやや寒冷、北部は丘陵地帯で南部に比べ比較的温暖な気候となっている。
弾丸暗渠 | 能率と効果 |
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![]() サブソイラによる弾丸暗渠の施工 |
・額縁明渠から差し込んで行った。 ・礫にぶつかると少し作業が遅延したが、カットドレーンほどではなく、所要時間は30mあたり2分20秒程度で、全体的にスムースに施工が完了した。 ●型式 ・サブソイラ(スガノ S452E) (クボタ SL35CQMAEPC2P) |
排水量調査カ所
カットドレーン排水口からの単位時間当たりの排水量 (ml/分)
土壌の三相分布 (採取日12月20日)
各試験区、慣行区それぞれ2カ所ずつ、作土層(畝表面から10cm下)から土壌を採取し測定した。 試験区、慣行区で明確な差は見られなかった。
(1)生育について
定植は8月末に、ぞれぞれの試験区ごとに手植えで1日かけて行われた。そのため、定植日は最大で5日の開きがある。また、供試品種も販売上の都合から全て同一品種ではなく、2品種を供試した。これらの理由により、生育の良し悪しが排水対策の結果なのか、品種によるものなのか、定植時期によるものなのかが達観では分かりかねる状況であった。
初期生育は非常に順調で、試験区はいずれも降雨後1日経過すれば滞水が解消される状況が9月上旬までは続いた。しかし、その後9月中旬から11月にかけては平年を大きく上回る降雨となった上、一度に降る雨の量が多かったため、額縁明渠に徐々に泥が溜まり、上手く排水されない状況となった。カットドレーン穴からの排水量についても、穴によって排水量が大きく異なっていたため、穿孔暗渠がうまく繋がっていない可能性が考えられた。
10月23日に行った生育調査では、実証区②が雑草繁茂により生育が抑制され、若干の生育遅延がみられた。しかし、実証区①及び③については、慣行区よりも生育が良かったため、共通して行った額縁明渠よる表面排水の効果が示唆された。全体的な生育としては、結球は10月下旬に開始したが、降雨と日照不足及び11月下旬からの低温の影響で生育が遅れ、予定収穫時期を過ぎても小玉で葉の巻きが甘く、収穫作業が遅延した。
(2)収量・品質について
収穫作業は1月10日から開始し、3月30日に終了した。10a当たりの収量は実証区②が最も良く2.56t、次いで実証区③が2.28tt、実証区①が1.79t、慣行区が1.48tとなった。前年の当ほ場4枚の平均収量が10a当たり2.1tであったため、実証区②及び実証区③では前年の平均収量を上回った。また、実証区①は最も低く位置し、水が溜まりやすい最も条件の悪いほ場であったが、収量は慣行区よりも高くなった。そのため、共通して行った額縁明渠よる表面排水の効果が大きいと考える。
品質は、結球重の平均は実証区①で1038.2g、実証区②で1254.5g、実証区③で856.7g、慣行区で775.9gとなった。結球重の差は、実証区①および②が'新藍'、実証区③および慣行区が'冬藍'と品種が異なっていたためだと考えられる。球径指数および結球緊度についても、同様に品種間差がみられた。
収穫調査および収量調査の結果
※1:球径指数:球高÷球径 0.40~0.70...扁平 0.71~0.80...腰高 0.81~1.10...球形
※2:結球緊度:結球重、球高、球径から結球の締まり程度を算出。数値が高いほど締まりが良い
全作業時間に関しては、穿孔暗渠、弾丸暗渠及び額縁明渠の施工を行っても、10aあたりの作業に要する時間は慣行体系と比較して大きな差は見られず、作業性にも問題はなかったため、導入可能な作業体系と考えられる。
排水対策の実施に関しては、10月23日に行った生育調査で、実証区②が雑草繁茂により生育が抑制されており、若干の生育遅延がみられたものの、実証区①及び③については、慣行区よりも生育が良かったため、共通して行った額縁明渠よる表面排水の効果が示唆された。ただし、額縁明渠についても施工後の適切なメンテナンスが必要と考えられた。カットドレーンによる穿孔暗渠は、施工位置によって排水される流量が異なった。原因は、礫が多いほ場であったためと推察される。そのため、今回の実証区のような強粘質で礫が多いほ場では、カットドレーンによる排水効果が出にくいと考えられた。
今回の実証により、排水性の改善が認められ、排水対策の必要性やその方法等について農家や関係者へ啓発するきっかけとなった。一部、実証ほの問題(土壌中の礫や石が多い等)により、作業性や効果の判別が難しい技術もあったが、今後は、ほ場の条件等によりどの技術が最も効果を得られるのか検討していく必要がある。また、施工した排水対策について、効果を持続させるために必要なメンテナンス等について検討を行う。
本技術に関する機械導入に関しては、個人単位で揃えようと思うと費用がかかるため、管内における共同利用の仕組み作りを推進する必要がある。
(平成30年度 島根県西部農林振興センター浜田農業普及部、島根県農業技術センター技術普及部)