提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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全国農業システム化研究会|提案一覧


野菜

砂丘畑ねぎ圃場への耕盤破砕の実施による排水性の改善および単収向上(新潟県 平成26年度)

背景と取組みのねらい

●背景
 新発田市、胎内市の砂丘地帯では、根深ねぎ生産が行われているが、近年、単収の低下が著しい。原因として、耕盤層形成による圃場排水性の低下に起因する生育不良及び病害発生の助長が考えられる。
 そこで、耕盤破砕の実施効果及びねぎへの収量・品質向上効果を実証し、耕盤破砕の普及啓発を図り、ねぎ単収向上につなげる。

●目標
①耕盤破砕の実施による圃場排水性の改善効果、病害・生育不良の低減効果、単収向上効果の検討
②耕盤破砕を導入した場合の経営的効果の検討

対象場所

●新潟県新発田地域
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 新発田地域は、新潟県の北部に位置し、3市(新発田市、阿賀野市、胎内市)、1町(聖籠町)で構成されており、日本海に沿った砂丘地帯と平坦地域からなっている。年間平均気温は12.8℃、年間降水量は1,900mm前後、最深積雪量は70~80cmである。
 農業は、稲作を中心として野菜、果樹、花き等の園芸、畜産などの複合営農が展開されている。砂丘畑の園芸生産は、全国有数の産地となっているチューリップ球根をはじめ、ねぎ、にんじん、加工用だいこん等の栽培が行われている。

実証した作業体系(作業名と使用機械)

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耕種概要

●区の設計
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<植え付け時の圃場の状況>
・畝幅100cm
・1m当たり植え付け本数45本

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(クリックすると拡大します)


作業別の能率と効果


耕盤破砕、施工効果調査能率と効果

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パラソイラー
(ナイフ連数4)

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プラソイラー
(ナイフ連数3)

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貫入式土壌硬度計(SRⅡ)


耕盤破砕施工日:4月22日
走行速度:0.3m/s
耕深:50cm

●型式
パラソイラー(EPS400)
プラソイラー(MPS3)
パワクロトラクター(KL37ZPC)









土壌硬度測定:5月2日
・貫入式土壌硬度計(SRⅡ)で測定。実証区(パラソイラー、プラソイラー区)は、ともに慣行区に比べ硬度値が低減し、破砕効果が認められた。
インテクレート調査、
TDR土壌水分センサー計測
能率と効果
 
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インテクレート調査

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積算浸入量の比較

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TDR土壌水分センサー計測


≪インテクレート調査≫
・慣行区の耕盤の直前まで掘り下げ、鉄製円筒を水平にならした土壌面に10cm程度の深さに打ち込む。その後、円筒上部まで注水、一定の経過時間ごとの水位を記録。実証区は、慣行区の耕盤までの深さと同じ深さに掘り下げた後、同様の手順で調査。


≪TDR土壌水分センサー計測≫
・10月5日23時~10月6日16時までの降雨直後(合計降水量51mm)の畝間下深さ0~20cmの体積含水率を、TDR土壌水分センサーで測定。

≪測定結果≫
・パラソイラー区がプラソイラー区よりも積算浸入量が多く、体積含水率の低下が早い傾向。
・パラソイラー区は爪の数が多く、くの字状の爪形成のため、広範に耕盤破砕がなされたためと考えられ、 砂丘畑の耕盤に適した破砕方法であると考えられる。
溝切り、定植能率と効果

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定植の様子


定植日:5月31日
栽植密度:45本/m
       (45,000本/10a)

●型式
ひっぱりくん(HP-6)
生育状況能率と効果

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パラソイラー区
(12月1日)

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慣行区(10月10日)


実証区は慣行区に比べ、個体間の生育のバラツキが少なく、弱小株の消失も見られなかった。 夏の気温が低く、降水量も少ない傾向であったため、軟腐病の被害も見られなかった。
収穫、調整能率と効果

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パラソイラー区(調整作業)

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慣行区(調整作業)


実証区は慣行区より、分岐長・葉鞘径が大きく、商品本数および商品重量が多かった。また、実証区ではパラソイラー区がプラソイラー区に比べ、商品本数、商品収量がやや多い傾向が見られた。

(写真・グラフをクリックすると拡大します)

成果と考察

●成果
1.土壌硬度の状況について
 パラソイラー区の深さ30cm~50cmの土壌硬度は、爪直下の位置では0.3~0.6MPa、爪間の位置では0.2~0.6MPaに低減し、破砕効果が高かった。爪が配置されていない作業機中央直下においても、0.6~1.5MPaに低減し、破砕効果が認められた。
 プラソイラ-区の深さ30cm~50cmの土壌硬度は、爪直下の位置では0MPaに、爪間の位置では0.6~1.8MPaに低減した。

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パラソイラー区の土壌硬度測定結果

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プラソイラー区の土壌硬度測定結果(左・中)/慣行区の土壌硬度測定結果(右)

2.圃場透水性について
 インテクレート調査による積算浸入量は、実証区は慣行区に比べ明らかに多くなり、圃場透水性が改善された。また、パラソイラー区がプラソイラー区に比べ、積算浸入量が多い傾向が認められた。
 大雨直後のTDR土壌水分センサーによる体積含水率の低下は、実証区が慣行区に比べ早かった。また、パラソイラー区がプラソイラー区に比べ、体積含水率の低下が早い傾向がみられた。

3.生育状況について
 慣行区は7月以降、個体間の生育のバラツキが目立ちはじめるようになった。9月9日以降は、慣行区は実証区に比べ生存本数が少ない傾向が認められた。減数要因は、弱小株の消失によるものがほとんどであった。軟腐病の発生は、発生要因の一つとなるタネバエが少発生であり、夏の天候は気温が低く、降水量が少ない傾向に推移したことから、実証圃場ではほとんど見られなかった。

4.収穫状況について
 実証圃場において、耕盤破砕機パラソイラー、プラソイラ-の施工により、慣行区に比べ、生育、収量・品質の向上が確認された。また、パラソイラー区はプラソイラ-区に比べ、商品 本数、商品重量が多く、L以上の割合が大きい傾向が認められたことから、パラソイラーの方が生育、収量・品質の向上効果が高いと思われた。

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5.まとめ
 耕盤破砕作業機については、パラソイラー、プラソイラーいずれも耕盤破砕効果は認められたが、同一の有効作業幅ではパラソイラーの方が、施工効果、生育収量向上効果が高い。また、パラソイラー、プラソイラーは、深耕ロータリーに比べ作業速度が早く、適期作業期間における作業可能面積も大きいため、共同利用を想定した場面で適している。

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 基肥施肥作業の前に、10a当たり1時間以内の本作業を追加するだけで、砂丘畑の耕盤破砕効果および生育収量向上効果が期待できることから、非常に普及性が高い。
 実証区は慣行区に比べ、減価償却費および生産原価が高くなったが、生産収入が向上したことで、10a当たり所得はパラソイラー区で約14万円、プラソイラー区で約13万円向上した。また、慣行面積30aの所得が、ほぼ同等となる想定面積は、パラソイラー区で21.6a、プラソイラー区で22aであった。

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(表やグラフをクリックすると拡大します)


●今後の課題
 ○耕盤破砕の施工効果の持続性の確認
 ○低収生産者へ向けた確実な耕盤破砕の啓発活動

(平成26年度 新潟県農林水産部経営普及課、新潟県新発田農業普及指導センター)