提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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農業就業者の高齢化に伴う離農によって、農地は一部の担い手に集約される状況が続いているが、集約された農地は中小区画、分散の傾向がある。担い手においても熟練した就労者が不足しており、経営管理、栽培管理だけでなく労務管理の負担が大きくなっている。これらを解決するスマート農業が期待されており、土地利用型農業では農作業のロボット化が期待されている。
そこで、GNSSを利用した無人自動操舵機能のスマート機能を持つロボットトラクタを活用した、農作業効率化や精度向上、並びに新たな作業技術や作業体系について検討をおこなった。
供試機
ロボットトラクタMR1000A
作業機
スタブルカルチ C258ES(作業幅2,500mm)
●試験期日
スタブルカルチ耕うん作業:
2022年10月25日(小区画)、11月16日(大区画)
●試験区の構成
●作業条件
※試験時は、スタブルカルチ(荒耕うん)設定が固定であったため実際の作業機のサイズと合致しなかった。現在は、設定変更が可能となっている。
●作業方法
○スタブルカルチ耕うん作業
ほ場4隅および出入り口をマッピング、隣接耕で、ほ場中央を無人自動操舵、外周は有人手動操舵で作業する。
図1 小区画ほ場 36a(左)と大区画ほ場 85a(右)
●調査項目
作業時間、作業面積
○ロボットトラクタMR1000A
ロボットトラクタは、RTK-GNSS利用の自動操舵機能を有し、高精度な直進作業が可能である。測位、姿勢計測ユニット、レーザやソナ等の障害物検知センサーに基づき、ロータリ、代かき、施肥等の無人での作業が可能。
スタブルカルチの「荒耕うん」設定では、ほ場内側の隣接耕を無人自動操舵で行い、外周はオペレータが乗車して作業を行う。
○スタブルカルチ(作業機)
スタブルカルチは、数本の小型スキがセットになった作業機であり、けん引作業で土を反転・砕土し、後部の爪が付いた車輪状装置で土を砕き整地を行う。
スタブルカルチのメーカ推奨作業速度は、8~12km/hである。ロボットトラクタMR1000Aの設定では「荒耕起」ではH2速で7.5km/hとなる。
●ロボットトラクタの無人での自動操舵では、ほ場規模により無人での作業可能な面積割合が変化する。スタブルカルチ荒耕起作業で、小区画想定ほ場(36a)大区画想定ほ場(85a)の作業時間と省力効果について調査した。
●スタブルカルチは、C258ES(作業幅2,500mm)を使用した。無人の自動操舵設定では「荒耕起・作業幅3,100mm」となる。耕起のラップ代設定がないため、作業幅2.5mのC258ESでは、未耕起地が30cm残った。ほ場中央部の無人での自動操舵耕起終了後、外周4周部分を有人での操舵により荒耕起を行った。
枕地旋回時に上昇したスタブルカルチが後方センサーにより感知されることで作業が停止するため、上げ位置を「3P上限規制」により調整を行った。
●無人の自動操舵作業では、旋回後進時に作業機によりまきあげられた砂埃を後方センサーが異物と認定し作業停止することがあるため、砂埃が発生しない降雨後に調査した。
●作業能率試験
作業時間は、小区画ほ場想定36a(長辺80m×短辺45m)と大区画ほ場想定85a(長辺111m×短辺77m)で調査した。
作業時間は、小区画ほ場6.4分/10aであり、無人の自動操舵は2.2分/10aで34%であり、大区画ほ場4.2分/10a、無人の自動操舵は2.4分/10aで58%であった(表1)。作業速度は、7.5km/hの設定に対して、小区画ほ場6.5km/h、大区画ほ場7.4km/hとなった。
小区画ほ場では、全体作業時間に対する旋回時間割合が多くなるために、作業速度実測値が低くなったと考える。
表1 ほ場の大きさがロボットトラクタの無人自動操舵・作業に与える影響
大区画圃場と小区画ほ場の比較では、ほ場面積が2.4倍であるのに対し、作業時間は1.6倍であり大区画ほ場の方が効率的に作業可能であった(図2)。
自動操舵割合は小区画35%、大区画56%、時間割合は、小区画34%、大区画58%となった(表2)。
図2 ほ場の大きさがロボットトラクタの無人自動操舵作業に与える影響
表2 ほ場大きさごとの実際の作業結果