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IPM

ゴーヤーにおけるミナミキイロアザミウマ、タバココナジラミのスワルスキーカブリダニを活用した防除効果の検討(沖縄県 令和3年度)

背景と取組みのねらい

 昨年度(令和2年度)の調査からゴーヤーにおける天敵資材スワルスキーカブリダニ(以下:スワル)はミナミキイロアザミウマ(以下:ミナミキイロ)およびタバココナジラミ(以下:コナジラミ)に対して高い防除効果が明らかとなった。
 しかし、実証区ではスワルへの影響を考慮し、うどんこ病防除の硫黄粉剤散布が例年より少なく、うどんこ病の発生が多くみられた。硫黄粉剤は本県の防除指導において10~14日間隔で定期散布することが推奨される一方、スワルにやや影響がある剤とされている(アリスタライフサイエンス株式会社天敵影響表・ニガウリ)。
 そこで、今年度の調査ではスワルの防除効果を再調査するとともに、硫黄粉剤の定期散布がスワルに与える影響について調査することとした。

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地域の概要

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 沖縄県糸満市は本島南部に位置し、年平均気温は23.1℃、年間日照時間は1,774時間(沖縄地方気象台)で、温暖な気候を活用して、ゴーヤー、サヤインゲン、キュウリ、ピーマン、ナス等の施設園芸が盛んに行われている。
 糸満市のゴーヤー生産者は147戸、栽培面積は40ha、販売金額は 約1.3億円(H30年)に達し、県内のゴーヤー産地として重要な位置づけにある。当地域のゴーヤーの主な作型は、促成栽培、普通栽培、早熟栽培があり、冬春期を中心に周年栽培されている。

実証圃の概要

1.実施場所:
沖縄県糸満市でゴーヤーを生産する農家4戸(農家A、B、C、D)

2.調査期間:
令和3年9月~令和4年5月

表1 各試験区の概要
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天敵放飼(実証区1)


実証区における硫黄粉剤の散布体系および方法
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農家の通常散布で、10aあたり3kgの粉剤を葉の表裏に散布

調査内容および方法

1.温湿度調査
 実証区1、2において、ハウス中央部の地表から約150cmの高さに温湿度記録計(おんどとりRTR-503)を設置し、令和3年9月18日からハウス内の温湿度を測定した。

2.虫数調査
 各試験区の任意30株について、1株当たり中位葉1枚におけるミナミキイロ・コナジラミ数(成幼虫数)およびスワル数を調査した。
 調査期間は令和3年10月7日~令和4年5月(天敵放飼~栽培終了)とし、概ね14日間隔で行った。

3.病害調査(うどんこ病)
 各試験区の任意30株について、1株あたり下位~上位葉の5枚を任意に選び、発病度別に調査し、発病度を求めた。
 調査期間は令和3年10月7日~令和4年5月(天敵放飼~栽培終了)とし、概ね14日間隔で行った。
 発病度は澤岻ら(2005)の報告に基づき、以下の評価と計算式で行った。

発病度={Σ(程度別発病葉数×指数)÷(4×調査葉数)}×100
指数:
 0:発病なし。
 1:病斑が葉面積の10%未満を占める。
 2:病斑が葉面積の10~25%未満を占める。
 3:病斑が葉面積の25~50%未満を占める。
 4:病斑が葉面積の59%以上を占める。

4.ウイルス症状調査
 各試験区全株について、定植後1~2カ月経過した11月18日にミナミキイロが伝搬するスイカ灰白色斑紋ウイルス(以下:WSMoV)の有無について調査した。
 ウイルスの有無は葉の輪紋症状や奇形等で判断した。

5.果実被害調査
 令和3年12月~令和4年5月にかけて、各試験区25~30果の果実について計6回、ミナミキイロの被害果の有無を調査した。
 なお、軽微な被害も被害果と判断した。

6.薬剤使用状況調査
 栽培期間中の使用薬剤について、JAおきなわ薬剤防除実績をもとに調査した。

7.天敵導入による防除経費・収益性の調査
 農家Bにおける過去2年間(2021年:慣行防除、2022年:天敵導入)の防除経費および収益性の調査を行った。

調査結果

1.温湿度調査
(1)実証区1
 9月25日に測定を開始したが、機材のトラブルのため、9月25日~10月11日、12月7日~1月6日の温湿度データは欠損となった。
 測定を開始した10月以降、ハウス内の平均温度は低下傾向にあり、1月中旬が最も低く、13.5℃まで低下した。その後、1月下旬から3月中旬までは16~22℃程度で推移し、3月下旬から温度の上昇がみられた。
 ハウス内平均湿度は3月上旬まで70~90%程度で推移したが、3月中旬から低下傾向にあり、3月下旬は50~60%で推移した(図1)

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図1 実証区1におけるハウス内平均温度および平均湿度の推移

(2)実証区2
 9月18日に測定を開始したが、9月18日~10月25日の温湿度データは欠損となった。
 測定を開始した10月下旬以降、実証区1と同様ハウス内平気温度は低下傾向にあり、1月中旬が最も低く、14.4℃まで低下した。その後3月下旬まで16~23℃程度で推移し、4月上旬から温度の上昇がみられた。
 ハウス内平均湿度は実証区1に比べ、80~90%程度とやや高い湿度で推移した(図2)

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図2 実証区2におけるハウス内平均温度および平均湿度の推移

2.虫数調査
(1)実証区1
 9月25日に定植、10月2日にアファーム乳剤およびモスピラン顆粒水和剤を散布した後に、10月12日にスワルを放飼した。
 10月15日からスワルが葉上で確認され、10月~11月は0.3~1.8頭/葉の密度で推移したが、12月~2月下旬は0.0~0.17頭/葉の低密度となった。3月以降は密度が上昇し、0.33~1.43頭/葉で推移した。
 ミナミキイロはスワル定着以降、0.1頭/葉以下の低密度に抑えられたが、1月下旬から微増し、3月下旬まで0.17~0.57頭/葉で推移した。
 コナジラミは全期間を通して0.0~0.07頭/葉の低密度に抑制することができた。
 なお、その他の害虫として11月3日、2月4日にワタアブラムシが発生したため、ウララDFを、11月21日にはワタヘリクロノメイガ予防のためプレバソンフロアブル5を散布した。
 スワルに対する硫黄粉剤の影響について、実証区1では放飼後6回散布を行った。その結果、期間中のスワル密度は0.0~1.43頭/葉(10月15日の外れ値は除く)で推移し、貴島ら(2016)が調査した数値(11月~5月:0.1~0.6頭/葉)と比較しても十分な密度であった。
 また、ミナミキイロ・コナジラミについても低密度を抑えていたことから、防除効果も確認できた。そのため、粉剤のスワルへの影響は少ないと思われる。

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図3 実証区1における各害虫およびスワルの推移


(2)実証区2
 9月17日に定植、9月23日にモスピラン顆粒水和剤、9月24日にアファーム乳剤を散布した後、10月1日にスワルを放飼した。
 10月7日からスワルが葉上で確認され、10月は0.2~1.77/葉で推移したが、11月~1月は0.0~0.13頭/葉の低密度となった。2月以降は密度が上昇し、0.13~0.53頭/葉で推移した。
 ミナミキイロは、10月7日~12月17日まで0.0~0.23頭/葉の低密度に抑えられていたが、1月より0.27~1.10頭/葉の増加がみられたため、1月25日にプレオフロアブルを散布し密度を低下させた。2月~4月上旬は0.03~0.10頭/葉の低密度で推移したが、4月下旬~5月中旬は0.63~0.90頭/葉に増加した。
 コナジラミは、期間を通して0.0~0.27頭/葉の低密度に抑制することができた。
 また、その他の害虫として、ワタアブラムシとワタヘリクロノメイガの発生が多くみられ、スワル放飼後これらを対象とした薬剤を計12回散布した。

 スワルに対する硫黄粉剤の影響について、放飼後12回散布を行った。その結果、期間中のスワル密度は0.0~0.53頭/葉(10月7日の外れ値を除く)で推移し、実証区1に比べると低いが、貴島ら(2016)と同程度であった。
 また、期間を通してミナミキイロ・コナジラミを抑制できていたことから、実証区1と同様に、粉剤が天敵利用時の大きな問題にはならないと思われた。

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図4 実証区2における各害虫およびスワルの推移


(3)対照区1
 ミナミキイロは12月上旬頃から増加し始め、1月上旬には8.3頭/葉まで増加した。
 12月中旬からアファーム乳剤やマラソン乳剤等の殺虫剤を定期的に散布したが密度を抑制できず、殺虫剤の散布が滞った1月下旬から増加に転じた。2月下旬から再度殺虫剤を散布したが、ミナミキイロの増加を抑えることができず、4月中旬には27.0頭/葉まで増加した。
 コナジラミは期間中の発生はみられなかったが、ワタアブラムシやワタヘリクロノメイガの発生がみられた。

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図5 対照区1における各害虫の推移


(4)対照区2
 ミナミキイロは12月上旬まで0~0.23頭/葉の低密度で推移したが、殺虫剤の散布間隔が空いた1月上旬から増加し始め、2月中旬には9.8頭/葉まで急増した。その後はマラソン乳剤等の殺虫剤を散布し、3月上旬には2.0頭/葉程度まで密度が低下したが、4月中旬に15.5頭/葉まで急増したため、アファーム乳剤を散布し、密度を低下させた。
 栽培初期~中期が対照区1に比べ、ミナミキイロの密度を低く抑えられている要因として、①殺虫剤のローテーション散布を実施していること、②WSMoVの影響で葉数が極端に少なく、殺虫剤がかかりやすかったこと等が挙げられる。
 コナジラミは期間を通して発生はほとんどみられなかった。

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図6 対照区2おける各害虫の推移


3.病害調査
(1)実証区1
 スワル放飼10日後、予防として天敵への影響が少ないトリフミン水和剤を散布し、その後、硫黄粉剤を月に1回程度散布した。しかし、硫黄粉剤やうどんこ病防除を目的とした殺菌剤の散布が遅れ、かつ草勢が低下した1月頃から急激にうどんこ病が蔓延し、1月31日には発病度37.8まで急増した。その後、パンチョTF顆粒水和剤や硫黄粉剤を散布し、緩やかな回復をみせた(図7)
 12月頃から斑点細菌病や斑点病がみられたため、Zボルドー水和剤やダコニール1000等の殺菌剤を定期的に散布した。

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図7 実証区1におけるうどんこ病の発病推移


(2)実証区2
 実証区1と同様に、スワル放飼11日後にトリフミン水和剤を散布し、その後、硫黄粉剤を月1~2回程度散布した。10月上旬~3月中旬は硫黄粉剤の定期散布や草勢を維持できたため、発病度0~8.3と低い値を維持できた。しかし、草勢が低下した3月下旬頃から発病度が上昇したため、3月31日にパレード20フロアブル、4月4日に硫黄粉剤を散布し、病気の蔓延を抑制した。その後、栽培終了までうどんこ病の発生はほとんどみられなかった。
 12月と2月に斑点病がみられたため、ダコニール1000を12月8日に散布した(図8)

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図8 実証区2におけるうどんこ病の発病推移


(3)対照区1
 定植後から11月上旬にかけて硫黄粉剤を定期散布し、発病度0.3~5.0と低い値で維持できたが、11月中旬から発病が多くみられたため、モレスタン水和剤を2回散布し、発病の広がりを抑制した。
 その後イオウフロアブルやトリフミン水和剤等を散布し、1月上旬から3月下旬は発病がほとんどみられなかったが、栽培終期の4月頃からうどんこ病の発生がみられるようになった(図9)

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図9 対照区1におけるうどんこ病の発病推移


(4)対照区2
 殺菌剤の定期散布を実施し10月中旬から4月中旬にかけて、発病度0~1.2の低い値で抑制できたが、栽培終期には発生が急増した。
 虫害調査と同様に、栽培初期から中期はWSMoVの影響で葉数が少なく、薬剤がしっかりかかっていることもうどんこ病を抑制できた原因の1つと考えられる(図10)

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図10 対照区2におけるうどんこ病の発病推移


4.ウイルス症状調査
11月18日に各区のウイルス症状を調査したところ、対照区1、対照区2において葉の輪紋症状および奇形が観察された。ともに調査以前の定植時に多数のアザミウマ発生が観察されており(圃場観察)、それらによってWSMoVに感染したと思われる。特に対照区2では発生株率が高く、64.6%の発生がみられた(図11)

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図11 各区におけるWSMoVの発生株率の比較(11月18日調査)

 対照区2においては、その後もWSMoVの影響で生育抑制や果実の奇形等が観察され、収量が大幅に低下したが(図12、13)、気温が上昇した3月頃から草勢の回復が徐々にみられた。
 一方、生育初期から害虫防除を実施した実証区1、2においてはウイルス株の発生はみられなかった。

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図12 対照区2におけるWSMoVの症状
(左 :葉の輪紋症状(11月18日)、中:生育の抑制(1月24日)、右:同時期の対照区1の生育状況)


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図13 対照区2におけるWSMoVの症状
(左:果実の奇形(1月28日)、右:葉の反転(1月28日))



 実証区および対照区におけるミナミキイロの被害については、ミナミキイロの発生が少なかった12月は各区において被害果はみられなかったが、12月下旬以降にミナミキイロが急増した対照区1では1月から果実の被害が観察された。また、対照区1ではミナミキイロの増加に伴い被害果率も高くなり、密度が高かった4、5月には被害果率72~80%となった。
 一方、天敵でミナミキイロの密度を低く抑えている実証区1、2ではどの期間においても被害果率は0%であった。 また、ウイルスが感染した対照区2では生育の著しい低下のため、1、2月は被害果調査を停止したが、草勢が回復した3月以降に再度調査を実施したところ、各月で被害果がみられ、ミナミキイロの密度が最も高かった4月は被害果率45%に達した。

表2 実証区および対照区におけるミナミキイロの被害果推移
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実証区1は3月下旬で栽培が終了したため、4月以降の調査は未実施。
対照区2はWSMoVの影響で1、2月の調査は未実施。


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図14 ミナミキイロによる被害果実


6.薬剤使用状況調査
(1)実証区1における農薬散布回数
 実証区1における農薬散布回数は20回(天敵放飼を除く)で、使用した殺虫剤は6剤であった(表3)。

表3 害虫防除に係る薬剤数・経費の比較
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 ゼロ放飼に向け、10月2日にアファーム乳剤およびモスピラン顆粒水和剤を散布したが、その後はミナミキイロ、コナジラミを対象とした殺虫剤は使用していない。
 昨年度は天敵放飼前に、ヨトウやアブラムシ等の飛び込みの害虫が多かったが、今期は出入口に二重ネットを設置するなど物理的防除を改善した結果、飛び込み害虫は軽減された(図15)
また、放飼期間中にアブラムシが発生したため、スワルに影響の少ないウララDFを2回、ワタヘリクロノメイガ予防のためプレバソンフロアブル5を1回散布した。

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図15 実証区1における物理的防除(左:出入口の二重被覆、中:防草シートの設置、右:ハウス外の除草

(2)実証区2における農薬散布回数
 実証区2における農薬散布回数は34回(天敵放飼を除く)で、使用した殺虫剤は15剤であった(表3)。使用した殺虫剤のうちミナミキイロ、コナジラミを対象とした4剤となっている。
 実証区1と異なり、放飼後に飛び込みの害虫が多くワタヘリクロノメイガやアブラムシの発生が多くみられ、それらを対象とした薬剤を計12回散布した。実証区1に比べ、物理的防除が徹底されておらず、ハウス内外の雑草の発生や防虫ネットの破れなどがみられたことが飛び込みの害虫を増やした要因と思われる(表4、図16)
 また、1月にミナミキイロの密度低減のため、プレオフロアブルを1回散布した。

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図16 実証区2における物理的防除の不徹底(左:ハウス内の雑草発生、中:防虫ネットの破れ、右:出入口のネット被覆なし)

(3)対照区の農薬総散布回数
 対照区の農薬総散布回数は14~17回、使用した殺虫剤は11~16回となり、農薬総散布回数は実証区に比べ対照区が少ない結果となった。
 一方、害虫防除に係る薬剤数について比較すると、実証区1は対照区に比べ薬剤数は少ない結果となった。
 しかし、物理的防除が不徹底だった実証区2は対照区と同程度の薬剤数となった(表3)

(4)害虫防除に係る経費
 害虫防除に係る経費は実証区で¥46,127~¥75,823、対照区では¥25,260~¥39,290と実証区が高い金額となった。
 物理的防除を行った実証区1と対照区1を比較すると、防除に係る経費差は¥6,837と金額差は少ない。

表4 各実証区における物理的防除の評価1) およびアブラムシ等の散布回数
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1)物理的防除の評価は○、△、×の三段階評価で行った。


7.天敵導入による防除経費・収益性の調査
 2021年は化学農薬で防除を行ったが、ミナミキイロの被害を防ぐことができず、3月末の被害果率は90%と、ほとんどの果実が加害された(令和2年度システム化研究会最終報告書)。そのため、生産物の廃棄が多く出荷量は2,252kgと少ない量となった。
 一方、2022年は天敵を導入し、栽培期間を通して被害果はみられなかった。そのため、生産物の廃棄がほとんどなく、出荷量は4,551kgと大幅に増加した。
 農薬散布回数や害虫防除に係る経費を比較すると、農薬総散布回数は両年とも同程度だが、害虫防除に係る経費や散布労賃は2022年の方が高く、¥65,620の増額となった。
しかし、2022年は天敵を導入することで果実の品質が向上し、出荷量・粗収益とも大幅に増えた。その結果、粗収益から害虫に係る経費・散布労賃を差引した金額は、2021年が¥866,357、2022年が¥1,731,832となり、収益としては¥865,475の増額となった。

表5 農家Bにおける天敵導入による防除経費・収益性調査
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1)粗収益=出荷量×平均単価 ※平均単価はJAおきなわ糸満支店における2020年10月~2021年5月の平均¥405を用いた。
2)時間休¥1,000、散布時間は粒剤散布:0.5時間、天敵放飼:0.5時間、粉剤散布:1時間、薬剤散布:2.5時間として算出した。

考察

●実証区1、2ではスワル放飼後、ミナミキイロおよびコナジラミを低密度に抑制できており、スワルの防除効果を年次間で確認できた。また、ミナミキイロの被害果もほとんどなく、果実品質の向上に繋がった。
●しかし、物理的防除が徹底されていない実証区2ではワタヘリクロノメイガやアブラムシなどの飛び込みの害虫が多く、殺虫剤を散布する回数が対照区と同程度と多くなった。そのため、実証区2では次作から防草シートや防虫ネットの修繕等、物理的防除を強化していく必要がある。
●天敵導入による収益性について実証区2の農家Bで年次間比較を行った。その結果、害虫防除に係る経費・散布労賃は天敵を導入することで高くなったが、ミナミキイロの被害が軽減されることで出荷量・粗収益が増加し、収益性の改善に繋がった。
●また、今期は放飼時期を定植から2~3週間後と昨期(定植5週間後)に比べかなり早い段階で放飼したが、スワルの定着に問題はなかった。生産者からはある程度株が大きくなってから放飼しないと不安との声があったが、株が小さい段階で放飼しても問題は無さそうで、早期の害虫防除に繋がると思われた。
●一方、懸念されていた硫黄粉剤の定期散布について、今期は定着が進んでいないスワル放飼直後は避け、放飼1週間後にトリフミン水和剤を予防散布し、定着が進んだ放飼3~4週間後から粉剤の散布をスタートさせた。散布方法は農家が通常行っている方法で行い、10aあたり3kgの粉剤を葉の表裏両面に散布した。散布回数は実証区1で6回、実証区で12回となったが、両区とも栽培期間のスワル密度はある程度維持できた。また、ミナミキイロおよびコナジラミも低密度に抑制できていることから、粉剤の定期散布は天敵利用に大きな問題にはならないと思われた。
●対照区についてはミナミキイロを対象とした殺虫剤を散布しているものの、密度を抑えることができず、果実の被害も観察された。今後は殺虫剤の選択やより高頻度での散布を指導する必要がある。
●また、対照区2ではミナミキイロによるWSMoV感染のため、全ての株において生育の抑制や奇形果の発生がみられ、大幅な収量低下となった。そのため、次作からは天敵導入等を検討する必要がある。

農家の意見

(1)実証区1
 昨年度と同様、ミナミキイロやコナジラミの被害はほとんどみられず、スワルの防除効果を実感している。
 今期は定植から約3週間と株が小さい段階で放飼したが、定着には問題はなさそう。
 また、硫黄粉剤の定期散布を行ったがスワルに影響がないようで、よかった。
 今期も順調に利用できたので、次期作でも天敵を利用していきたい。

(2)実証区2
 初めて天敵を利用したが、ミナミキイロの被害がこんなに軽減されると思わなかった。
 例年薬剤を散布してもミナミキイロの発生を抑えることができず、被害果が多くなりとても困っていた。
 今年は害虫の心配がなくなったため、栽培に集中でき、出荷量も大幅に増えてとても良かった。
 課題として、老眼のため、普及員がいないとスワルを観察できないこと、当圃場は斑点病の発生が多いが、トップジンM水和剤が利用できない点が挙げられる。
 また、天敵を利用することで例年は問題にならなかったワタヘリクロノメイガの発生が多かった。
 次年度は実証区1農家を参考に、物理的防除を強化する必要性を感じた。

今後の課題

 当技術は、本島南部地域で、まだ普及していないことから、現地検討会や講習会等を実施して、生産者やJA等の関係機関に広く周知させる必要がある。
 さらに、当調査で得られた結果をもとに、防除暦の作成を検討する。

提案するIPM防除体系

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(クリックでPDFファイルが開きます)

(令和3年度 沖縄県農林水産部南部農業改良普及センター、農林水産部営農支援課)