普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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blog_hukyu_kasahara2_f.jpg 青森県
笠原 均

そう簡単な話ってないよね

2024.01.11

※前回の投稿はこちら


「どうして三好地区に県職員が来るんだ?」
「モデル集落なんて、勝手に決めないでくれ。」
「あんたらは金をもらって仕事で来ているのかも知れないけど、うちらには一銭もでないんだよ? なのに、なんで俺たちは座談会に集められているんだ?」


 令和4年度に入って前任者から引き継いで出席した五所川原市三好地区の住民座談会は、震える程の緊張感からスタートしました。
 もちろん前任者にも言い分があって、「コロナ禍であって、人を集めることができずコミュニケーションも全く取れなかったんだ。」とのこと。

 それはもっともな意見で、おそらく自分が担当していたとしても、令和3年度に「みんなで集まってコミュニケーションを図りましょう!」と言ったら袋叩きにあっていたかも知れません。


 少なくともすぐに気付いたのは・・・
・我々は招かざる客である。
・この事業をこの地区でやることになった理由が全く理解されていない。

 そもそも、三好地区の人達は我々を必要としていない・・・それが良く伝わってきました。
 まるで、よく切れないチェーンソーで金属板を切り裂くような声で、さらに直立して怒りをぶちまける住民・・・。


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 この時、私が頭の中で考えていたのは、「あー、このシーン。写真に撮っておきたいな~」ということでした。
 実は、私はシナリオどおりの静かな意見交換会や座談会が大嫌いで、こういう本気炸裂の意見交換会がやりたかったのです。
 そして、この場で、我々普及指導員にとっての盾、住民の的になったのは、中間支援組織「NPOジャズネットワーク」です。歓迎されると思いきや、打たれまくりです。・・・まさに「忌憚のないご意見」のパンチ炸裂です。


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「今まで色んな人が来て、地域おこしや地域再生の話があったんだ。でも全部ダメだった。全部ダメ! もう今さらダメなんだよ。」 


 だが、ここで中間支援組織の代表の川端氏が勢いよく立ち上がりました。
「村木さん(仮名)! もう出来ないっていうのはやめましょう! これまではできなかった。でも、今度こそやるんです!」


 あまりの迫力に、会場は静けさを取り戻しました。
 私は心の中でつぶやきました。
「あー、やっぱりこのNPOに頼んで良かった。」
 住民に怒鳴られて怯むようなNPOなら、最初から一緒に仕事したくなかったのです。


 そして、沈黙を守っていた普及指導員である私も流石に発言!

「なぜ三好が選ばれたのか、今さら理由を話しても仕方がないでしょう。今、ここに集まった我々は偶然集まったのではないと思っています。私達は偶然ではなく、必然として今日ここに集まったんです。20年後の地域の子供達が、きっと今日からの我々の活動を評価してくれるはずです。一緒にやってみませんか。もう一度(倒置法引用)。」


・・・きまった。d(゚∀゚*)


 座談会は多少の火種は残しながらも、心を許しあった者同士が見せる穏やかな表情で終えることができました。たぶん。


 座談会終了後、中間支援組織代表の川端氏が言いました。
「笠原さん(私)、ごめん・・・。怒るつもりはなかったんだけど、できない理由ばかり挙げるから頭に来ちゃって・・・」

 私は、こんな中間支援組織と一緒に仕事がやれて、本当に幸せだなと思いました。


to be continued.


<追記>
 この文章は、文字数の制限で3回の座談会での出来事を短縮して記載しています。よってフィクションぽさが出ていますが、これが「現実」です。なお、個人名も今後の運営に差し支えないよう配慮していますが、実在しています。これが現実です。

笠原 均

青森県の農業改良普及指導員(普及員)です。普及員歴はすでに20数年となるのですが、お話し好きが高じて、農業の担い手育成を担当していることが多いです。 プライベートでは、「気分はプロフェッショナルカメラマン」、「YouTube再生回数が伸びないけど作曲家とウインドシンセサイザー奏者」です。 加えていうと、15年前から音楽の秘められた力をフル活用して地域おこしをやっています。そんな活動のお陰で町内会役員から目をつけられ(勧誘され)、町内会の理事なんかやっています。もちろん、町内の草刈りやしめ縄づくりも、町内会最年少として参加しています。

富山県
井上徹彦

チューリップ切花の新規就農者

2023.12.27

 富山県の花でもあるチューリップの球根生産は大正時代に砺波市で始まっており、現在も砺波市が県内最大のチューリップ球根産地となっています。

 チューリップの切花についても、2022年度には富山県内6市町で約400万本生産されており、うち6割が砺波市産となっていました。しかし、メンバーの高齢化や人手不足のため、今年度夏で花きの生産(チューリップ切り花15万本、小ギク切花3万本)から撤退する営農組織がありました。


 一方、今年度から実家の農地での花き生産を希望していた新規就農者I氏は、就農相談の段階から当センターが伴走支援を行っており、研修先を前述営農組織で切花部門に設定し、1年間の研修を受けていただいていました。予定通りに今年春から就農し、チューリップの切花生産についてもパイプハウスを設置し秋からの利用を計画していましたが、物価高の影響でハウスの設置が保留となりました。


 そのような中、研修の縁もあり、チューリップの切花生産について前述営農組織より農作業場やパイプハウス(暖房設備、かん水施設等含む)5棟を安価で借り受けられる運びとなりました。また、経営開始後はギフト切花の顧客や現場のパートさんの引き継ぎに加え(写真1)、営農組織で切花担当をしていた方からの技術指導(写真2)もあるなど、手厚い協力体制でチューリップ切花生産を開始することができました。


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写真1 市場出荷用花束の作成作業中


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写真2 チューリップ切花の現地指導者


 I氏が加入している砺波切花研究会では今シーズンの初出荷に合わせ12月18日に市長訪問も行っており、I氏も同席しました(写真3、4)。なお、I氏は今月中旬から来年3月中旬までに約50品種10万本の出荷を見込んでいます。


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写真3 砺波市長との懇談


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写真4 左からI氏・切花研究会長・砺波市長

井上徹彦

富山県砺波農林振興センターで、花きと薬用作物の担当をしています。 担当地区は南砺市で、チューリップ球根と小ギク等切花生産者を中心に技術指導をしています。

島根県
長妻武宏

令和5年度島根県肉牛肥育協議会枝肉研究会

2023.12.22

「島根県肉牛肥育協議会」の枝肉研究会に出席してきました。
出品頭数が15頭ということで、県内で開催される枝肉共進会としての規模は小さいですが、この研究会に向け、各農家が厳選した黒毛和牛が出品されました。
結果は、A5:12頭、A4:3頭で、BMS10以上では7頭でした。
全体として、優秀な成績だったと思います。


最優秀賞は、出雲市の(有)藤増の出品牛が選出されました。


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最優秀賞:(有)藤増の出品牛


浜田管内の弥栄肥育センターからは2頭出品し、優秀賞2席となりました。
もう1頭もBMS10でしたが、入賞は逃しました。


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優秀賞2席:弥栄肥育センターの出品牛


新型コロナ感染症による入場制限もなくなり、今年度から通常の開催になったことで、枝肉観覧者も増えて良かったです。
12月26日からは、地元JA直営店で弥栄肥育センターの肉が販売される予定です。

長妻武宏

島根県の長妻です。畜産が専門の普及員ですが、過去には、イノシシの研究などもしていました。島根農業の応援団員になりたいと思っています。

blog_hukyu_kasahara2_f.jpg 青森県
笠原 均

夜の出会いは地域を変えるか!?

2023.12.19

 この度、このコーナーを書かせて頂くことになりました青森県の普及指導員(普及員)です。


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 私の主たる業務は、通称「地域経営」と呼ばれる、一言で言えば「農業サイドからアプローチする地域おこし」という感じでしょうか。農村なので農家が多いですが、農家だけで構成される地区というものは現実にはありません。そんな訳で、農家だけでなく地域の自営業者やサラリーマンなんかも巻き込んで、


 「俺たちの苦労は、20年後の子供達がきっと評価してくれる。過疎化にも少子高齢化にもめげず、みんなで素敵な未来を築こう!」


と、煽っています。

 しかし普及員一人が集落座談会に入ってそんな事を言っても、「あいつ何しにきたんだ?」「お役所がなにか夢みたいなこと言ってるぜ」と冷ややかな目で見られるだけです。

 そこで青森県では、県(普及員)と住民の間に入って双方を調整する「中間支援組織」という団体を挟んでいます。だいたいは、地域おこしを得意とするNPOとかが担っています。


 さて、令和4年の4月に私が「地域経営」なる業務を担当し、まず取りかかったのは、中間支援を引き受けてくれるNPOを探すことです。それまでも様々なところから、そのような団体を紹介されたのですが、どうも私のイメージに合いません。どの団体も、真面目でおとなしいのです。地域おこしに必要なのは、夏の夜空を焦がす立佞武多のような熱い男です(女性も大歓迎)。


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 ここは大事なところなので、そう簡単に妥協せず、事業の趣旨を方々で説明して歩き、多くの人々に「こんな人を探しているんだよー」と「人捜し、団体探し」をお願いして歩きました。
・・・すると、いるじゃないですか!やっぱり!


 その団体の名は、NPOジャズネットワーク(音楽を活用した地域おこし団体)。初めて会ったリーダー河端氏の風貌は、一発で「タダモノデハナイ」と私に直感させました。無精ひげを生やし、鋭い目と貫禄バッチリなお腹をした男性です。
 その夜は、彼や彼を慕うメンバーと時間を忘れて「地域とは・・・」「町とは・・・」「生まれ来る子供達のために、俺たちは今何をするべきなのか・・・」なんて話していると、なんとメチャクチャに目標が一致しているじゃないですか!


 夜なので当然のごとく委託契約どころか、直属の上司の了解さえとっていないのですが、私は彼にいいました。

 「河端さん、俺は絶対にあんたと組みたい。」
そして、河端さんも
 「俺も、変わった県職員のあんたとなら一緒にやる!」
と、まるで青春ドラマのような熱いシーンを経て、青森県のおっさん二人は「地域おこし」のために、何も知らず一緒に五所川原市のある集落座談会に飛び込むことになるのです。
※もちろん、委託契約等、真面目な手続きを踏んだ後ですよ。


 しかし、座談会で待っていたのは、大人の社会でいう「現実」だったのです。


to be continued.


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笠原 均

青森県の農業改良普及指導員(普及員)です。普及員歴はすでに20数年となるのですが、お話し好きが高じて、農業の担い手育成を担当していることが多いです。 プライベートでは、「気分はプロフェッショナルカメラマン」、「YouTube再生回数が伸びないけど作曲家とウインドシンセサイザー奏者」です。 加えていうと、15年前から音楽の秘められた力をフル活用して地域おこしをやっています。そんな活動のお陰で町内会役員から目をつけられ(勧誘され)、町内会の理事なんかやっています。もちろん、町内の草刈りやしめ縄づくりも、町内会最年少として参加しています。

島根県
長妻武宏

農業機械の実演会

2023.12.18

 江津市桜江町で、農業機械の実演会が開催されました。
 県の西部からは、貸し切りバスを使って参加された地域もあるようで、観光バスも駐車されていました。


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 野菜の作業機械については、それぞれの品目に特化してる部分が多いですが、稲作関連の機械やドローンなどは、今後、更新や導入を考えている集落営農も多く、関心をもって参加した農業者も多いようでした。


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 管内では、現場で大型機械を見ることが少ないので、今年度普及員(技師)になった新人を連れて参加。自動運転のトラクターなどに興味を持って説明を聞いていました。
 自分自身も、「ドローンってこんなに大きかったかな?」などと思いつつ、さまざまな機械を見ることができてよかったです。


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 農業者が補助事業を申請する際、規模決定根拠資料の作成を手伝うことも多く、カタログやネット上の画像や映像を参考にしていますが、実際に動いている機械を見ると、その大きさや動きなどが分かって、利用するほ場や周辺道路、畔などと重ね合わせてイメージがしやすく、とても参考になりました。

長妻武宏

島根県の長妻です。畜産が専門の普及員ですが、過去には、イノシシの研究などもしていました。島根農業の応援団員になりたいと思っています。

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