徳島県
吉原 均
吉原 均
徳島県美波農業支援センターの吉原均です。野菜・作物担当で「きゅうり」、「いちご」、「水稲」、「藍」を担当しています。
2009.09.11
食べるだけが農業じゃない!
みなさん、れんこんで布が染められるってご存じでした? いわゆる「草木染め」というやつです。
今回は、PR商品作りのために行った、実験の様子をレポートします。
煮出す時間や薬品の濃度などが多少(?)いい加減で、「男の料理」っぽくなってしまいましたけど、後継者の方も参加して、ワイワイにぎやかな実験になりました。
使うのは「れんこんの葉」。これをちぎって、大きなステンレス製の鍋で煮出します。鍋はステンレスかホーローがベスト。草木染めは多くの場合、布に染みこんだ色素を金属イオンで発色・定着させる「媒染」を行うのですが、もし鍋が鉄や銅でできていると、溶けだしたイオンの影響を受けてしまうからです。
葉っぱを細かくちぎって、鍋で煮出します。ちょっと変わったにおいがしますが、気にしない!
頭にタオルを巻いているのは後継者の方。手前は高度支援センターの沢田さん。れんこん激ラブの熱い男です。
左 :染色液が出来たら布を入れます。ムラにならないように良く動かして
右 :ミョウバンを溶かした媒染液に入れます。濃度は・・・なんだかんだで結局適当になってしまいました!
さて適当に煮出したら、葉を取り出して布を入れ、しばらく液中で泳がせて、色素をムラなく染みこませます。
布を取り出して、アルミや鉄といった金属イオンが溶けた液に入れます。するとアラ不思議! アルミなら黄色、鉄ならグレーに発色します。化学染料には無いやさしい色合い。お試しあれ!
左 :それでもきれいな黄色に染まりました!写真は当センターれんこん担当の圓藤さん
右 :なんだか昔の映画のタイトルを彷彿とさせる光景です。色の濃さがバラバラなあたりが「男の料理」。中には汚れたゾーキンにしか見えないような色も・・・。「まぁ、こんなもんかな!」 れんこんのPRに使えるかどうか、今後も挑戦は続く!?
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2009.08.11
今回は、久しぶりに「れんこん」の話題です。
徳島の主力品種は「備中」ですが、この品種は晩生種であるため、れんこんが太る頃に台風の被害を受けやすいという欠点があります。
そこで徳島県では、備中に代わる、早生の新品種育成に取り組んでいます。
先日、現地試験圃場で収穫作業を行いました。備中なら、まだ「れんこん」が出来ていない早期に掘り取りを行い、有望な系統を選抜する、という作業です。
れんこんは、収穫作業に熟練の技を必要とするので、栽培農家にお手伝いいただいています。
みなさん! れんこん掘りは、本当に難しいですよ!! 私は何回やってもうまくいきません。
一方、プロのみなさんはスイスイと・・・。まるで、地中を透視しているかのよう。恐るべし!
レンボリーと呼ばれる機械で、表土を取り除きます。れんこんを傷つけないよう、慎重に! 農家のみなさんは、まるで手足のように機械を操ります。惚れ惚れするような機械さばき。
表土を取り除いたら、仕上げはプロの手仕事です。彼らには、土中の「れんこん」が見えています・・・。 素人が掘ると、なかなか「れんこん」には辿り着けません。せっかく辿り着いても、途中でポッキリ! という事がよくあります。綺麗に掘り出すのは大変です。
さて、作業の結果、5系統中1系統だけ、有望なれんこんが選抜できました。
今回は、完全な形の「れんこん」の収穫が目的ではないので、写真のような細いものしか収穫出来ませんでした。
しかし、早生の新品種育成の手応えを確かに感じることが出来て、大変有意義な1日でした。
左 :メタボなアスパラガス、ではありません。出来かけの「れんこん」。これはこれでおいしそうですネ! 刺身で食べられないかなぁ?
右 :有望系統の様子。徳島向きの長い形です。きちんと太れば良い物になりそう!? ちなみに備中や他の系統は、全く太っていませんでした。
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2009.07. 9
今年も、特産である藍の収穫が始まっています。現在は、1番刈りがほぼ終了したとろです。8月には再生してきた葉を収穫する、2番刈りが行われます。収穫作業中は藍独特の甘い香りが辺りに漂い、なんとも良い気分・・・。
収穫された藍はカッターで細かく刻まれ、大きな扇風機で、葉と茎を選別します。こして葉だけを乾燥させ、晩秋の「寝せ込み」とよばれる染料製造作業が始まるまで、保します。
今後、染料製造についても、このブログで紹介したいと思っています。
ところで藍は染料だけでなく、化粧品などにも利用され始めているのをご存じですか 最近は有名な某化粧品メーカーが使っていますので、一度ネットで検索してみてくだい。「えー、あの製品に?」というような驚きがあると思います。
栽培面積が減少傾向にある阿波藍ですが、このような動きが、新たな需要をもたらしくれることを期待しています。
左 :収穫直前の藍
葉をちぎって良く揉むと、手が真っ青に染まります! 簡単には落ちませんので、ご注意!!
しかし、収穫して葉が乾いてしまうと、簡単には染められなくなります。おもしろいでしょう?
詳しくは、こちら を参照下さい。
右 :収穫風景
大豆用の収穫機を応用しています。手刈りをする農家もあります。
株元5cm程度しか残りませんが、1カ月もすれば元通りに再生! 生命力にあふれています。
左 :送風装置を使って葉と茎を分けます
使っている機械は農家毎に様々ですが、風を利用するのは共通です。
右 :天日乾燥される葉
乾燥することで葉の組織が壊れ、青い色素、indigotinができるのです。乾燥終了後は、大きな袋に入れて 秋まで保管されます。
2009.06. 3
残念ながら、今年も被害発生です。
以前にもお伝えしましたが、私はらっきょうのネダニ対策を担当しています。病害虫防除所や農業研究所と対策チームを作り、様々な調査を行った結果、被害原因は、植え付け前の種球に寄生しているネダニである事が分かりました。現在は種球の天日乾燥によってネダニを駆除する方法を推進している段階です。
しかし、今までやったことの無い作業は、生産者に受け入れられず、現地実証圃などで技術導入を推進しているのですが、思ったように進んでいません・・・。
そこで、ちょっとでも生産者の「めんどうくさい」度を少なくするべく、対策チームでは簡単な乾燥方法の検討をすることにしています。
とはいえ、「らっきょう」を天日干しするだけの簡単作業を、さらに簡単にするのは容易ではありません。日夜頭を悩ませています。
この日は、大きな被害を受けた圃場の「らっきょう」を、対策チームのメンバーとサンプリングしました。今後はこのサンプルを使って、様々な実験を行う予定です。
ネダニが発生した「らっきょう」を引っ張ると、簡単に抜けてしまいます。健全な「らっきょう」は、なかなか抜けません。
2009.05. 8
今回もれんこんの話題です。
前回は2次選抜と呼ばれる作業をレポートしました。順序が逆になりますが、今回はそれより前の、交配作業から順にご紹介します。
交配とは、新しい特性を持った個体を得るために、既存の品種同士を掛け合わせる事を言います。
7月、れんこんの交配は、夜明けと共に行います。ねむい・・・。しかし開花時間が早朝なので我慢我慢。農家の方にも手伝っていただきます。
ところで、れんこんの葉の上には、水滴が溜まっていることが良くあります。交配のために葉をかき分けると、その水が頭上からドサーッと降ってきてビショビショに・・・。一発で目が覚めます!
左 :れんこんの花。良い香りです。咲く時にポンと音がする、という事はありません
中 :交配作業。この後、虫による交雑を避けるために袋をかけます
右 :発芽した種子。ヤスリで皮を削らないと発芽しにくいです。ちなみに、まだ青くて柔らかい種子を塩ゆでにして、中身を食べるとすごく旨い!です。お試しあれ。って、無理ですよね・・・
翌年4月には、保管しておいた雑種種子を植え付けます。
育てるうちに、奇形や生育が悪いものが出てくるので、除外します。
一夏が過ぎれば、小さな容器の中に可愛らしいれんこんが出来ます。研究者、農家、JAが協力して、その中から有望個体を選抜します。通常は9月頃にこの選抜を行うのですが、今回は何故か4月になったようです。
しかし、百戦錬磨の農家のみなさんでも、こんな小さなれんこんから良いものを選抜するのは初めての経験。
前回のブログでご紹介したものよりずっと小さいミニミニれんこん達を前に、ハウスのあちこちから
「ごめん、わからん!」
「こんなんでいいのかなぁ・・・」
「えーっ、小さいなー」
等と、悲鳴に近い声が聞かれて、大変にぎやかな作業風景となりました。
左 :生育中の雑種
中 :今回の選抜会の様子。はてなマークが飛び交っています
右 :ミニミニれんこん。この中から選抜してくれと言うのは、ちょっと酷でしょうか(笑)
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