富山県
井上徹彦
井上徹彦
富山県高岡農林振興センターで、担い手と経営指導の担当をしています。
ただし本来は花きが専門なので、時々現地で花き栽培についての指導をすることも♪
2019.03.11
全国青年農業者会議は、日本農業の担い手として、農業や農村生活環境の改善等を実践している若者たちが体験した成果をお互いに発表し、当面する問題の解決方法や発展方向を見出だすとともに、農業を取り巻く諸問題を討議して、新しい農業及び農村の創造に資することをねらいとして開催されています。
優秀な発表者に対し、農林水産大臣賞、農林水産省経営局長賞及び全国農業青年クラブ連絡協議会会長賞がそれぞれ授与されます。
竹本会長による主催者あいさつ(左)と、吉川農林水産大臣による来賓あいさつ(右)
今年は、大会テーマを「『相乗作用』 〜 繋がる今日 広がる明日 ~」とし、2月26日~27日にかけて、全国各ブロックの代表者がプロジェクト発表や意見発表などを行いました。
プロジェクト発表は「園芸・特産作物」「土地利用型作物」「畜産経営」及び「地域活動」の4部門があり、畜産経営部門では、高岡農林振興センターの青沼光さんが北陸ブロック代表として、「酪農が日本で100年後も続いていくためのclover farmの取り組み」と題した発表を行いました。
会場外のホワイエでは、翌日の閉会式まで協賛各社がブースを設け、ICT関連商品(※)など、青年農業者にとって魅力的な商品やサービスについてPRしていました。
※ ハウスの環境制御システム、植物病診断キット、作業用雨具、消費者とのマッチングアプリ
発表のあとは『交流の夕べ』ということで、参加者全員が一堂に会し交流を深めました。
翌日は、『先進技術アワード』と題した企画から始まりました。
これは、企業に自社の先進技術を紹介する動画を作成してもらい、フェイスブックで「いいね」を多く獲得した企業が大会でプレゼンできるというものです。
12月21日~1月17日にかけフェイスブック上で「いいね」を募った結果、農業者以外の方もページを訪れて、動画再生回数が20万回を超えたそうです。
左上から順に、(株)Agrion、(株)食べチョク、(株)ポケットマルシェのプレゼン
その後表彰式があり、青沼さんの発表が農林水産省経営局長賞(2位)を受賞しました。
実は青沼さんが農林水産大臣賞を受賞すると予想していた地元テレビ局が、出発前から追っかけ取材をしていたのですが、北海道の山下陽子さんが、青沼さんを上回る素晴らしい発表をされたため、惜しくもこの結果となりました。
山下さんの発表は、「活躍する初産牛は子牛から」と題したもので、いままで地元の先輩酪農家が軽んじていた『子牛のうちからしっかりと肥育させること』で結果的に経営改善につながったという内容でした。科学的に調査・分析したデータに基づく内容で、かつ、原稿を見ずに堂々と発表されていた点が高く評価されたものと思われます。
なお、青沼さんを応援するため、青沼さんが所属する4Hクラブ「HITS」から4人が参加しました。
参加者は青沼さん以上の発表者がいることを認識するとともに、全国レベルの発表や意識の高い青年農業者との交流など、北陸ブロック大会以上に得るものがあったと思われます。
そして、2年後を目標に、再度この場所に来られるよう今年度からスタートしたプロジェクトを醸成していく予定のHITSに対し、農林振興センターとして今後もプロジェクト活動を支援していきます。
2019.02.28
先日、『普及が挑む!イノベーション、共に創ろう未来の農業』をテーマに、平成30年度の『普及指導員調査研究・活動成果発表会』が開催され、4農林振興センターと広域普及指導センター(農業革新支援センター)から各課題が発表されました。
高岡農林振興センターからは、私が『農業生産の引継ぎを普及がサポート』と題して第三者継承の事例について発表しました。また、最も優れた課題として、砺波農林振興センターの向井係長が発表した『たまねぎ Next Stage』が全国研究大会発表候補になりました。
その後、(株)日本政策金融公庫 富山支店の農業食品課から、若手の勉強会において、私の成果発表の内容を話して欲しいと依頼がありました。
二つ返事で依頼を受け、農業食品課の5名の職員に対して、管内で第三者継承をした事例について、「就農準備研修」の実施に始まり、各種支援策の活用などによる継承者の早期経営確立支援や経営継承に向けた合意形成支援、そして、補助事業を導入するための「青年等就農計画」作成支援や就農後の栽培指導まで、順を追って説明しました。また、質疑に答える形で、さらに細かな部分について、情報提供をしました。
近年、管内でも後継者がいない経営体が散見されるようになっており、第三者継承による新規就農は、ベテラン農業者の技術・知識を継承できることから、個別経営のみならず、産地を維持する有効な手段として期待されています。
今回の事例は、ハウス等の有形資産のほか、従業員や販路を継承し、必要に応じて前経営者からの助言を受けられるという条件の良いものでしたが、第三者継承では、有形資産だけを継承する事例もあります。そこで、移譲者と継承者の実態に応じた経営継承を提案するとともに、これまで以上に関係機関と情報共有を行い、自分の経営を委譲したい経営者と、その経営を引き継ぎたい新規就農者の最適なマッチングを図っていきたいと考えています。
2019.02.22
富山県農業者会議は、富山県農業の担い手として、農業技術や経営の改善などを実践している若者たちが一堂に会し、体得した成果等を相互に発表することを通じて、当面する問題の解決方策や発展方向を見出すとともに、農業を取りまく情勢への理解を深め、農業者としての自信と誇りを培うことを目的として開催されています。
今年は、2月8日に県内7組織の代表者がプロジェクト発表を行いました。
高岡農林振興センター管内には青年農業者組織が2組織あり、HITS(氷見射水高岡地区青年農業者協議会)所属の中川雅貴さんが「耕作放棄地でのヤギ放牧プロジェクト」、小矢部農業青年協議会所属の高田洋幸さんが「『おやべGAP』労働安全について考える」と題し、それぞれ発表を行いました。
中川さんによるプロジェクト発表(左)と、高田さんによるプロジェクト発表(右)
その結果、中川さんの発表が優秀賞(2位)を受賞しました。
中川さんは、この発表のためにHITSの仲間たちの前で何度も練習を繰り返すことで内容をブラッシュアップしており、後日開催したHITS懇親会で『みんなのおかげ』だと感謝していました。
1月のHITS役員会での発表練習の様子(左)と2月のHITS総会での発表練習の様子(右)
今回のヤギ放牧プロジェクトは今年が1年目の取り組みで、今後2年間かけてプロジェクト活動を完成させる予定です。そして、2年後に再度このプロジェクト活動を発表し、県大会、北陸ブロックでそれぞれ最優秀賞を受賞すること、そして、全国大会での受賞も目指しています。
そのために、当センターとしてHITSはもちろん、小矢部農業青年協議会に対しても青年組織活動、そしてプロジェクト活動の支援を引き続き行っていく予定です。
2019.01.31
高岡市の認定農業者である(有)今城農園では、一昨年度1名、昨年度1名を雇用し、現在従業員3名と社長、そして両親の6名で水稲約40ha、大豆約17ha、里芋2ha、ハーブ0.1haを栽培しています。
今城社長は、社員に対して積極的に技術指導をするとともに資格取得を促していますが、次年度から「とやまGAP」に取り組むことに決め、昨年末1名の従業員にGAP指導員の資格を取得させました。
そんな中、農業経営者総合サポート事業の専門家として、労働安全コンサルタントである(同)片山安心コンサルタント代表社員の片山昌作氏が新たに加わったことから、今城社長に「農作業安全個別相談会」の開催を持ちかけ、今城農園の社長以下6名全員に、座学と現場での安全指導を体験してもらいました。
座学では、労働安全衛生法で要求される免許や講習について学ぶとともに、JGAPにも活かせる様々な文書の作成や保存方法、そして設備などの各種点検のやり方について説明を受けました。
また、防除などで使うマスクについても、防塵、防毒など種類がいろいろあり、効果を保証されている使用時間や薬品のタイプも確認して選ぶ必要があること、そして付け方なども教えてもらいました。
現場では、事前に確認してあった作業場や農業機械などを回り、トラクターでは事前の点検や乗り方の手順など、今まであまり意識せずに行っていた日常作業に対して、しっかり指導してもらいました。
左 :資料を基に労働安全について学習
右 :乗り降りする際は、左手で取っ手をつかむ。
わずか半日の指導でしたが、たくさんのことを学べたと、今城社長をはじめ社員全員が大変喜んでいました。引き続き、各種作業シーズンに片山コンサルタントを呼んで、その時々の注意事項をパートさんと一緒に研修するとともに、もし、農場やほ場に安全上の問題点があれば指導してもらいたい、とのことでした。
なお、今回使った資料は片山先生のご厚意で片山安心コンサルタントのHP上にアップしていただきました。農作業や農業者への指導の参考にして下さい。
▼今回使用した資料はこちら(片山安心コンサルタント合同会社)
2018.12.26
射水市のこまつな農家、ダルマ・ラマさんが、自ら栽培するこまつなを使った「こまつな入りネパール餃子『モモ』」を考案して、12月8日に新商品の試食会がありました。
ネパール出身のダルマさんは、2005年に県内の女性との結婚を機に来日し、こまつな農場の「はっぴーファーム(射水市)」を知人を介して知りました。日本での就農に関心が出たため、はっぴーファームでの短期パートや研修を重ねたことで経営者の信頼を得、はっぴーファームを第三者継承で譲り受け、昨年7月から新規就農者として毎日真摯に農業に取り組んでいます。
第三者継承では、ハウスなどの施設・機械やパート従業員のほか、販路や商号などの無形資産も引き継いだことから、経営1年目にもかかわらず、通常の独立自営の新規就農者では実現できない規模の経営を行っています。
そんなダルマさんが作るこまつなは、あくが少なく生でも食べられると評判で、射水市の徳永食品(株)の『小松菜餃子』に材料提供を行っており、その餃子は射水市のふるさと納税の返礼品にもなっています。
今回ダルマさんは、母国ネパールで祭りの際などに食べられている餃子「モモ」に注目し、モモを徳永食品(株)に委託製造してもらい、はっぴーファームで販売するという企画を考えました。その試食会にあわせ、2日前の12月6日にも新聞取材があったので、同席してきました。
左 :取材を受けるダルマさん
右 :揚げ餃子(左)と蒸し餃子(右)
日本の餃子と違い、餡にはシナモンやクローブなどのスパイスが入っています。試食会にはチリソースのようなエスニック味のものとエゴマソースの2種類が用意されており、なかでもエゴマソースの方は餃子に穴をあけてソースを注ぎ込んで食べるという形式だったことが特徴的でした。これらソースのレシピを付けて、2019年3月から冷凍食品として一般販売(予定価格:10個入り300円)するとのことです。
また、「富山ネパール文化交流協会」の会長でもあるダルマさんは、県内をはじめ全国のネパール料理店にモモを提供するとともに、そこで一般客に向けて委託販売をしてもらうことも考えているそうです。
このように、こまつな農家として頑張っているダルマさんですが、実は仏教画であるマンダラの絵師でもあり、これまで多くの作品を制作・販売したほか、富山や金沢でマンダラ教室を開催していました。
ただ、現在はこまつな農家として忙しく、なかなか制作に取りかかれないことが悩みのタネだということです。