佐賀県
平野稔邦
平野稔邦
佐賀県佐城農業改良普及センターで果樹を担当しています。佐賀県ではテレワーク推進の一環で普及指導員は、一人一台のタブレット端末を持ち日々の普及活動に活かしています。タブレットを活用した普及活動を中心に、産地の動き等を紹介します。
2020.03.23
佐賀県は、全国の自治体でも先駆的にテレワークを推進し、特に普及指導員には一人一台のタブレットを支給し、その活動を支援してきました。その結果、タブレットを活用したペーパーレスでの職員会議はもちろん、普及活動中や出張時にも携帯して活用することで、テレワークを実践してきました。
新型コロナ対策としてイベントや会議、研修会等が中止や規模縮小される中、今回、普及指導員間での会議をWEB上で開催しました。佐賀県内の各普及センター職員と県庁の本課とをつないだ担当者間の会議でした。
左 :WEB会議の開催状況
右 :事務所の一室でWEB会議に参加
私の後任(このブログの執筆者)を決める内容で、これまでの投稿状況や条件等を説明しました。積極的に投稿し、普及活動の取組みを紹介してくれる人にお願いしたいと話をしたところ、杵島普及センターの井上技師が、執筆したいと積極的に手を挙げてくれました。今後の投稿に期待してください。
私は、今年度末で退職し、みかんの専業農家として親元就農することになりました。
これまでICTを活用した普及活動を中心に、ドローンの活用や農福連携の取組み等を紹介させていただきました。今後は一農業者として、普及指導活動を見守っていきたいと思います。
長い間ありがとうございました。
2019.12.17
当地区で行っている、NPO法人の福祉ネットや行政、JAが協力した農福連携による労力支援活動の続報をお伝えします。
前回お伝えしたみかんの収穫補助作業の体験会を踏まえて、一戸の農家から希望があり、福祉ネットを経由して契約した3事業所が、交代で作業を実施しています。
さらに今回、昨年度からの取組みであるセンサー選果機での作業について、12月から2月までの選果期間すべてで可能にするため、複数の事業所を集めた体験会を実施しました。
4事業所から5グループ約30名が参加し、交代で体験していただきました。
必ず手袋をして、ていねいに扱うことや、コンテナに入れる量、いっぱいになったコンテナの移動方法等を指示した後に、事業所ごとに作業を実施しました。
このように、複数の事業所が交代で作業することで、選果期間全体を通して安定的な作業が可能となり、計画的な選果・出荷に対応できることが期待されています。
また、空いた時間の作業として、果実をビニルで個装する作業と、包装袋へのシール貼り作業も体験してもらいました。これらの作業については、これまでの福祉事業所の作業状況を目にしていた選果場職員から提案があったもので、農福連携に対する理解の深まりの一端と感じています。
左 :新たにビニル個装作業を体験
右 :シール貼り作業体験に取り組む利用者
今後、福祉事業所の支援作業が、選果場でいつでも目にすることができれば、その働きぶりを見た農家からの新たな作業依頼にもつながるのではと、期待しています。
2019.11.21
当地区では、NPO法人の福祉ネットや行政、JAが協力した農福連携による労力支援体制の構築を図る活動を行っています。今回は、私が担当する果樹における取組み状況を報告します。
昨年度は、みかん選果場でのデコポンのセンサー選果、堆肥袋の回収作業、剪定枝の集積作業などがありましたが、今年度は、新たな作業にもチャレンジしました。
一つは春の摘蕾作業でしたが、長いゴールデンウイークと作業時期が重なり、スケジュールが調整できず、不調に終わりました。
そんな中、先日取り組んだのは、収穫したみかんを入れたカゴを回収して、コンテナに移し替える収穫補助作業です。この作業を支援することで、一般の雇用者は収穫だけに専念でき、収穫作業の効率アップが期待できます。
今回、この作業が農福連携に向くかどうかを判断するために、体験会を開催しました。
カゴいっぱいにならなくても空のカゴと交換することや、コンテナに入れるみかんの量等、注意点を説明して作業を行ってもらいました。関係機関や実際に求人している農業者も集まり、作業状況を確認した結果、作業を依頼したいという農家の要望がありました。
現在、契約に向けて、福祉ネットとスケジュールや事業所の調整等に取りかかっている所です。
左 :支援者を通じて作業内容を利用者に説明 / 右 :体験作業風景
一方で、昨年実施したセンサー選果作業も、今年度新たに希望する事業所が見つかっており、数カ月間を交代で、継続してできるよう調整しています。
昨年度からの作業受託活動を経て、福祉事業所の作業を目にする機会が増えたことで、農福連携の可能性を感じている農家も増えてきているように感じています。作業内容と賃金等の調整等難しい部分もありますが、今後も農業部門の労力不足解消と福祉事業所の就労支援という、お互いの目標が果たせてwinwinとなれるよう、マッチングと作業体系の構築を進めていきます。
2019.08. 7
昨年度に導入した撮影用のドローンは、飛行制限区域以外の場所での飛行は高度を守った上で自由にできるため、普及活動に日々活用しています。しかし、農業用マルチローターでの農薬等の散布には、農林水産航空協会が認定する専門の資格が必要になります。この資格は使用する機種ごとに取得する必要のあるもので、機種に応じた操縦技術と知識をしっかり身に着けないと得られないものとなっています。
この資格を取得するため、同僚の作物担当の普及指導員と、佐賀県農業大学校の学生2人の4人でスクールに行ってきました。
まず、座学で航空法や農薬取締法、使用する機種の操作法等を学び、実技として農薬散布用のマルチローターを操作して、農薬散布(デモのため水ですが・・・)を行いました。
日頃利用しているドローン操作とは違い、GPSを切った状態でのホバーリングや、ナビゲーターとタイミングを合わせた散布作業等が必要です。GPSに頼り切った操作に慣れていて少し甘く見ていた自分としては、猛暑の中で、かなり疲労のたまる講習となりました。その結果、数日間奮闘したおかげでなんとか学科と実技の検定を通過し、無事に認定を受けることが出来ました。
左 :飛行コースに立てられた旗に沿って操縦
右 :猛暑の中、交代で実技講習
このマルチローターですが、果樹を担当する自分としては、カンキツでの活用を考えています。近年は、各地で傾斜のあるカンキツ園での試験も増えており、当県でも果樹試験場での農薬散布試験が計画されています。ただ、果樹では登録農薬が少ないことが、普及に向けた大きな課題です。
しかしながら、元々無人ヘリ防除での歴史のある水稲よりも、スピードスプレーヤーやスプリンクラーでしか省力が図れなかった部門でうまく活用できれば、画期的な省力技術になると思っています。そのためにも、ドローンでの農薬散布技術が現地に普及できるよう、試験場等と協力して進めていきたいと思います。
2019.07. 1
当地区では、NPO法人の福祉ネットや市町、行政、JAが協力して、農福連携による労力支援の取組を行っています。
山間部のホウレンソウ栽培に始まり、みかん選果場でのデコポンのセンサー選果、堆肥袋の回収作業と進めてきました。その後の展開状況について報告します。
予定していたみかんの剪定枝の集積作業も契約が成立し、作業も無事終了しましたが、果樹関係では時期的にも農福連携に向く作業が見当たらなかったことから、野菜や花の部門で取り組みを検討してみました。
その結果、タマネギの葉切り、根切り作業で人手が足りず困っているとか、ほおずきの芽かき作業はできないか? と、現場からの要請や担当者からの提案がありました。これを受けて、福祉事業所の利用者が作業可能かどうか、作業精度に問題はないかを把握するために、作業の体験会を開催しました。実際に体験してもらうことで、利用者サイドの問題点の掘り起こしや、農業者も利用者の作業状況の把握と理解が深まってきます。
まず取り組んだ、ほおずきの芽かき作業の体験会では、作業内容を分かりやすく図示したパンフレットを用いながら説明をした後に、実際の作業に取りかかりました。
始めは不安げに脇芽を探って芽かきをしていましたが、しばらくすると慣れてきたのか、かなりスムーズな作業をする利用者も見受けられました。
左 :ほおずきの芽かき作業方法を指示 / 右 :担当者が付添って指導
また、タマネギの葉切り、根切り作業も体験会を開催しました。
葉を切る位置等の簡単な作業内容を説明して始めましたが、経験者もいたため、予定していた量を計画通りに実施できました。ただ、両作業ともに作業の終盤であり、今年度での契約につながるかは難しいと思われますが、次年度の作業化開始時期に農業者から要請があれば、的確に対応できる準備ができたと考えています。
今後も関係機関の連携のもとに、部門を問わず、農福連携に向く作業を探していきます。それらを組合せて年間を通した作業体系にすることで、福祉事業所の安定的な就労体系の構築にもつながると思います。
これらの取組が、農業部門の労働力不足解消と福祉事業所の就労支援という、双方にとって嬉しい状態になることを期待しています。