普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
   普及指導員とは・・・こちら

RSS

大分県
塩崎洋一

役目の違い

2025.06. 4

 今日は肥育農家Sさん(タフガイ)から「除角するから手伝ってくれ」と言われ、牛さんを捕まえたり、保定するのを手伝いに行きました。
 もちろんルーキーのOくんも一緒です。また、この日は行政の畜産担当のSさんも、手伝ってくれました。たまに現場に行かないと、感覚が鈍るようです。


 役目の違いですが、Sさんは行政担当なので、普段は違う事務所になります。農業振興・畜産振興というカテゴリーでは同じ仲間でも「普及」と「行政」という異なる業務になります。
 ですが、普及目線や現場感覚を持って行政をやるのは、とても大切なことだと私は思います。場面によっては逆も然り。普及現場で農家さんに補助事業活用を勧めるなどが、このことにあたりますね。


blog_shiosaki187_1.jpg
左からSさん、Oくん、Nさん。この日は8頭予定でしたが、先日市場から買ってきたのが1頭、具合が悪くて治療中とのこと。その1頭は、場所があるなら、別飼いにした方が良いと勧めて、早速、別牛舎に移しました。 治療もしやすくなるし、症状改善にともなって餌食いが良くなる様子もわかりやすいからです


 ところで、畜産普及現場では獣医さん方との役目、役割の違いがあります。
 普及第一幕の時に、こんなことがありました。
 三幕の昨年、県でトップをとった肥育農家Gさんとこでのこと。


●Gさん :塩崎さん、牛が足を引きずっているけん、家保(家畜保健衛生所)に電話したら、ビタミン(A製剤のこと)飲ませろと言われたんじゃが。


●塩崎 :餌は何kg食いよるかな、食い詰まりは?


●Gさん :11kgは間違いねえ食いよる、食い詰まりもねえ。


●塩崎 :ならそりゃ、違う、こん餌をそんだけ食いよりゃ、ビタ欠(ビタミン欠乏)じゃあねえ。足かかえて爪ん裏を見てな。アナマタ(蹄の裏側を痛める外傷のようなもの)やっちょるで。


 事務所で電話で対応した後、しばらくして牛舎へ出向きました。
 牛さんの足を見て、間違いはなさそうでしたが、やっぱりその後の連絡で、共済獣医に治療してもらったとの事です。
 牛さんがこのような飼養管理であれば、どういう生理状態になるか。この状況は外科的か内科的か、あるいは給与している飼料バランスの問題か、といった判断からの対応です。


 和牛肥育では、肉質等級を上げるため、飼料のビタミンAを制御して霜降りを作るのですが、度が過ぎればビタミンA欠乏という病気になります。適切にやれば、ビタミンA不足の状態です。前者は治療、後者は栄養改善すれば良いのですが、霜降りを進めるためには、後者の状態を維持させるのが、高品質牛肉を生産する『技術』と言えます。水を制限して果樹や野菜を甘くするような栽培技術と似ています(畜産専門外の方に解りやすい書きぶりを御了承ください)。


 つまり、肥育農家Gさんの出来事は、その牛さんがどのような餌をどれだけ食べているかを知らずに、足が腫れて引きずっているということだけでの判断から、そうなったと言えます。
 普及員は、直接治療などしませんが、畜産経営の上で家畜に生じる色々な状況を見て、経営主の農家さんにアドバイスする、これは経営のリスク回避の上から、大切なことです。

塩崎洋一

昭和63年に大分県で普及員として奉職。 令和4年3月に早期退職して農業に踏み込み始めたが、普及現場の要請により中部振興で普及活動の第二幕、北部振興局で普及活動第三幕を終えた矢先、北部からさらなる要請があって第4幕が上がった。なかなか自分のやりたいことに集中できない、でも断れないジレンマを抱えながら、それでも全力で普及員をやる気持ちです。

上へ戻る

カレンダー

loading ...

みんなの農業広場に戻る

アーカイブ