普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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大分県
塩崎洋一

塩崎洋一

昭和63年に大分県で普及員として奉職。 令和4年3月に早期退職して農業に踏み込み始めたが、普及現場の要請により中部振興で普及活動の第二幕、北部振興局で普及活動第三幕を終えた矢先、北部からさらなる要請があって第4幕が上がった。なかなか自分のやりたいことに集中できない、でも断れないジレンマを抱えながら、それでも全力で普及員をやる気持ちです。

役目の違い

2025.06. 4

 今日は肥育農家Sさん(タフガイ)から「除角するから手伝ってくれ」と言われ、牛さんを捕まえたり、保定するのを手伝いに行きました。
 もちろんルーキーのOくんも一緒です。また、この日は行政の畜産担当のSさんも、手伝ってくれました。たまに現場に行かないと、感覚が鈍るようです。


 役目の違いですが、Sさんは行政担当なので、普段は違う事務所になります。農業振興・畜産振興というカテゴリーでは同じ仲間でも「普及」と「行政」という異なる業務になります。
 ですが、普及目線や現場感覚を持って行政をやるのは、とても大切なことだと私は思います。場面によっては逆も然り。普及現場で農家さんに補助事業活用を勧めるなどが、このことにあたりますね。


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左からSさん、Oくん、Nさん。この日は8頭予定でしたが、先日市場から買ってきたのが1頭、具合が悪くて治療中とのこと。その1頭は、場所があるなら、別飼いにした方が良いと勧めて、早速、別牛舎に移しました。 治療もしやすくなるし、症状改善にともなって餌食いが良くなる様子もわかりやすいからです


 ところで、畜産普及現場では獣医さん方との役目、役割の違いがあります。
 普及第一幕の時に、こんなことがありました。
 三幕の昨年、県でトップをとった肥育農家Gさんとこでのこと。


●Gさん :塩崎さん、牛が足を引きずっているけん、家保(家畜保健衛生所)に電話したら、ビタミン(A製剤のこと)飲ませろと言われたんじゃが。


●塩崎 :餌は何kg食いよるかな、食い詰まりは?


●Gさん :11kgは間違いねえ食いよる、食い詰まりもねえ。


●塩崎 :ならそりゃ、違う、こん餌をそんだけ食いよりゃ、ビタ欠(ビタミン欠乏)じゃあねえ。足かかえて爪ん裏を見てな。アナマタ(蹄の裏側を痛める外傷のようなもの)やっちょるで。


 事務所で電話で対応した後、しばらくして牛舎へ出向きました。
 牛さんの足を見て、間違いはなさそうでしたが、やっぱりその後の連絡で、共済獣医に治療してもらったとの事です。
 牛さんがこのような飼養管理であれば、どういう生理状態になるか。この状況は外科的か内科的か、あるいは給与している飼料バランスの問題か、といった判断からの対応です。


 和牛肥育では、肉質等級を上げるため、飼料のビタミンAを制御して霜降りを作るのですが、度が過ぎればビタミンA欠乏という病気になります。適切にやれば、ビタミンA不足の状態です。前者は治療、後者は栄養改善すれば良いのですが、霜降りを進めるためには、後者の状態を維持させるのが、高品質牛肉を生産する『技術』と言えます。水を制限して果樹や野菜を甘くするような栽培技術と似ています(畜産専門外の方に解りやすい書きぶりを御了承ください)。


 つまり、肥育農家Gさんの出来事は、その牛さんがどのような餌をどれだけ食べているかを知らずに、足が腫れて引きずっているということだけでの判断から、そうなったと言えます。
 普及員は、直接治療などしませんが、畜産経営の上で家畜に生じる色々な状況を見て、経営主の農家さんにアドバイスする、これは経営のリスク回避の上から、大切なことです。

こんな牛舎になります

2025.05.27

 この日は、第三幕で資金対応していたK農場さんところに伺いました。
 制度資金活用で、直営施工での牛舎建設だったので、申請から借入まで少々時間がかかりましたが・・・。
 数年前に同じやり方で牛舎を建設した際はすんなり申請が通過したのに、今回はなぜそんなに時間がかかるのか。
 金融機関からの質問に対して、「ならば補助事業同様に、当初見積金額と実績額を二段書き、そして『○○一式』という書き方ではなく、事業費の積算をすべて整理する、であれば良いでしょうか」と返したところ、「それなら良いです」とのこと。
 要は、直営施工では、融資した資金の使途が不明確になることがあって、制度資金の主旨からズレてしまうことがある、ということでした。
 この類いの件は、このくらいにした方が良さそうですので、ここまでに。


 直営施工ではあるけど、工期の都合で、屋根工事だけは業者さんにお願いするとのこと。
 この日、融資後の進捗が気になって訪問すると「屋根工事業者さんが、こんなのを作ってくれました」と見せてくれたものがこちら。


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 牛舎で完成骨格模型を見るのは、初めてのこと。
 業者さんの「粋」に感動です。

この景色に癒やされる

2025.05.15

 この日は、第三幕でも伺った海の見える農場で牛さんの体側です。道中の景色、特に天気が良いと癒やされます。後で気づくのですが、こういう景色、特に海を眺めるのは、心の健康に良いのだとか・・・・。


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青い海・青い空 海辺の普及活動がやっぱり気持ちよい・・・・


 体側が終わった後で、Oくんが何か聞き取り調査をしていました。
 自分から積極的に動けるようになる感触、こうした農家さんとのやりとり、会話、対話のなかからも育まれます。


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聞き取り調査中のOくん、漏れ聞こえる単語に思わず「それ、酪農家さんでのことじゃ、肉用牛には違うで」と言ってしまった。頑張れルーキー!


 普及方法の研修で習うかどうかは分かりませんが、対人関係の中で、相手の方とのコミュニケーション、言葉そのもので伝わるのは1割か2割。あとは表情や雰囲気などで伝わっていくとのこと。


 では、私たち普及員は、農家さんに何をどう伝えるのか。
 色々な問題・課題があるとして、「ここをこのように改善すれば良くなる。だからこうやってみませんか」「こうやってみましょう」というところです。


 このように伝えるとして、伝わったかどうかは、どのようにわかるのでしょうか。
 後日、農家さんが「それを実行してくれた」「その結果が変わった」となって初めて「伝わった」と実感することになるのです。もちろん、こちらが「何とかしてあげたい」と思わなければ、この体験も得られません。

普及活動 第四幕が上がった

2025.05. 2

 昨年第三幕が閉じて、年が明けました。
 しばらくすると事務所から、「年末に送別会をしなかったので、3月末の全体送別会に是非」と声がかかりました。
 もちろん参加したのですが、その席上、と言いますか、廊下ですれ違いざまに「塩崎さん、良かったら4月から来てもらえないか」とのこと。
 「実は農大から外部講師を頼まれています。私は良いですが、事務所として問題がなければ構いません」と答えていました。すると1カ月も経たないうちに、「4月の歓迎会に参加しませんか」となった次第です。頑張ります。


 ということで、昨年関わった案件に引き続き、ブログを挙げていきたいと思います。
 この日は子牛の体側でしたが、4月に着任したルーキーのOくんと出かけました。
 気持ちの良い春空の下、牛の捕まえ方やロープワークを教えながら、許可をもらってデータ取り。農家さんにバックするとは言え、農家の財産を扱っていることの大切さを伝えながらの現場でした。


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 Oくんを真ん中に、右は先輩のSくん3年目。左は広域指導班のKさん。Kさんは塩崎が広域時代の十数年前、当管内で肉用牛担当でした。
 その頃に牛さんはこうして捕まえて、繋ぐ、と教えていたのですが・・・・。

時には自分の普及活動

2024.12.30

 この日は、肥育のSさんところで、体重測定でした。
 年末で勤務期間終了なので、挨拶もしておかねば、と思ったところです。


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まずはGET。ロープで輪投げです。農場によっては、長めのフックで鼻ぐりを引っかけたり、いろいろです


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他の牛を捕まえることを考慮して、繋ぎます。注意するのは、他の牛が、この子を繋いだロープの下をくぐることです。だから長めに、なるべく高さのあるところで繋いでおきます。捕まえながら、牛の観察もします。こいつ、元気ねえなあ、とか


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終わったあとの雑談が大切。60年やってるSさんでも、うっかりがあったりします。雑談の中から、牛舎での改善点を提案したり、本人が解りやすく、やりやすい方法で伝えます


 さて、ブログを始めた南部振興局勤務の前の広域普及員時代、県庁の普及主務課でのこと。


塩崎「耕種園芸の反収調査は坪刈りとかじ、男(子)でん女(子)でんでくるけど、肉用牛の反収はデイリーゲン(DailyGain:1日増体)やから、体重量らんとならん。けど、牛捕まえよっち怪我したら、公務災害になるんかな。『若えもんを鍛えてくれ』ち言われてん、畜産担当は牛を捕まえなならん」


主務課担当「公務災害にはならんから、そりゃあ、農家か農協に捕まえてもろうて」


塩崎「そげぇ言うてん、それじゃあ普及員が牛も引ききらんじ、農家ん信頼は得られんで」と返すが、議論にもならず。
 技術もデータ収集も普及方法もセットだという、典型的な会話です。


 ですが、やっぱり大きくなった肥育牛は、大変です。でも、やらねばならないし、牛に怪我はさせられない、自分も怪我をするわけにはいかない。若手に怪我はさせられないけれど、覚えさせねばならない。こんなことの繰り返しです。
 たまに思いますが、試験場でのデータと現場でのデータ、やっぱり違うなあ、と。私だけでしょうか。


 さて、これにて普及活動の第3幕が終わります。
 これまでお読みいただき、ありがとうございました。

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