現在、原油高騰に加え、バイオ燃料への利用拡大によるトウモロコシ需給の逼迫等で、家畜用の配合飼料価格が急騰しています。
それに対応するための手段として、普及センターでは家畜の自給飼料を増産する、様々な方法を農業者の方々や試験研究機関とともに検討しています。
先日は、その一貫として取り組んだ、トウモロコシの不耕起播種栽培の現地試験圃に関する収量調査を、試験研究機関と共に行いました。
畑を耕起せずに播種することにより、種まきに関する作業時間が大幅に削減される他、作業のためのトラクター等の燃料等も削減できます。
写真 右:試験研究機関と連携の元、調査を実施しました
調査は、トウモロコシ畑に入り、一定距離に生えているトウモロコシを刈り取る作業を複数回繰り返します。
刈り取ったトウモロコシをトラックで運び出した後、草丈や穂(人間用であれば食べる部分)が付く高さ、茎葉と穂全体の生での重さ、水分を除去した重さ、また穂の生重・乾物重等を計測します。
調査のためトウモロコシ畑に入っていくのですが、葉は手や顔の皮膚を傷つけるだけでなく、運が悪ければ切れてしまいますので、暑くても長袖で作業することが多く、頭部もできるだけ保護します。人間の背丈よりも高いトウモロコシの上部の穂(雄穂:ゆうすい)からは、容赦なく花粉や花等のかけらが落ちてきます。そのためにゴーグルを装着する場合もあります。
写真 左:暑いなか、完全防備でほ場に入る試験場職員(ゴーグルをしています) / 右:トウモロコシのとがった切り株
また、調査のためのトウモロコシは鎌で切り取るのですが、その切り株は上の写真のように、斜めにとがっていますので、踏みつけないように注意が必要です。
そして、最大の危険を防ぐ手段はこれ。なんのためかわかりますか?
写真 左:畑に入る前に、爆竹やロケット花火を鳴らします / 右:体には鈴をつけ、音を出しながら作業をします(筆者)
もうおわかりでしょうか。
トウモロコシ畑には、野生の熊がいる可能性があるのです。
そのため、最大限の注意を払いながら、調査を実施しました。
写真 左:複数の鈴をつけた同僚普及指導員 / 右:クマに倒されたトウモロコシ。この対策も大きな課題です
新しい技術を理解してもらうためには、現地で実物を見てもらうことも重要ですが、そのことと併せて、数値(=データ)を提示することも極めて重要です。
今回の調査で得られた生育の結果(=収量など)を提示・検討し、さらには新たな課題が無いかも検討しながら、新しい技術を現場に定着させていきます。
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岩手県中央農業改良普及センターの滝沢村駐在で、主に畜産を担当しております。
本県の畜産は、養豚や養鶏もありますが、主に関わっているのは、酪農経営・黒毛和種(肉用牛)の繁殖経営・日本短角種の振興などです。