再生農地で学校給食や体験用食材を作付けて、美しい田園風景を取り戻そう(静岡県小山町)
2015年08月17日
静岡県小山町大胡田地区は、日本一の霊峰富士山を東に望む中山間地域である。あたり一面田んぼで、出穂を迎えるこの時期はしっとりとした田園風景が広がっている。
「水が張られた水田に映る逆さ富士が見事で、映画やドラマのロケ地としても有望」という美しい景観の真ん中に一カ所、耕作放棄された田んぼが目立つ。せっかくの景観を損ねるだけでなく、害虫の温床となり周囲の田んぼへの悪影響も見逃せない。長年、隣接する田んぼの持ち主はもちろん、地域の頭痛のタネだった。
相続をきっかけに新地主の許可を得て、放棄田3枚(形状は段々)・計約17aの農地再生が進められることになり、7月28日、クボタeプロジェクトにより、草刈りと耕起が行われた。耕作放棄地再生研修会も兼ねており、集まったのは、再生後の農地管理をおこなう小山町認定農業者協議会(以下、協議会)、小山町役場、小山町農業委員会、県東部農林事務所、(株)クボタ、(株)関東甲信クボタ等)※から関係者約30名。
※ 実施主体 :小山町認定農業者協議会。協力団体 :小山町農林課、小山町農業委員会、静岡県東部農林事務所、日の出会、新柴桑木担い手グループ、NPO法人三島グランドワーク。
左 :作業開始前に、手順や機械の説明が行われた / 右 :耕作放棄地(作業前)
大胡田地区では15年前に圃場整備が実施されたが該当農地は参加せず、以来、耕作放棄の状態が続き、カヤや藤ヅル等の雑草が繁茂し、伸び放題になっていた。排水路は埋まり、農道との境もはっきりしない状態だ。
作業開始後、まずは乗用草刈機(43馬力)が雑草等を刈り込んだ。あっという間に草が刈られ倒れていくようすを、皆、「すごいなあ」「早い」と見守った。二度目は刃の高さを低くして、地表近くの草を刈り込むとともに、鋤き込みやすくするため細断した。
左 :作業前 / 右 :草刈り作業。あっという間に草が刈られていった
続いて、プラウ耕(2連深耕プラウ)による荒起こし。表面から20cmくらいまでをていねいに起こしていった。低木等はなかったが、長年の耕作放棄でクズが地中深く根付いているところは、協議会メンバー等が鎌を片手に一本ずつ切っていった。
左 :プラウをトラクタに取り付ける / 右 :プラウによる荒起こしの作業
左 :裁断された草の山
右 :掘り起こされた太い根を手作業で切っていく
8月中にもう一度ロータリー耕をして、再生作業は終了の予定だ。その後は8月末までに、協議会が中心となり、ソバとタマネギの植え付けを行うことになっている。協議会は収穫体験事業や学校給食への食材提供に実績があり、タマネギは学校給食へ、ソバは景観を楽しんだあと、ソバ打ち体験用に収穫するという。
小山町役場農林課の鈴木陽一参事は、「ここを町内にある放棄地解消対策の参考とし、また解消に向けPRしていきたい」と話す。町役場と県農林事務所が今後も協力し、再生農地を地域で有効利用していく。(みんなの農業広場事務局)