提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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取り組みレポート



蕎麦(そば)から始まる農地再生と地域作り(栃木県那珂川町)

2010年12月03日

 栃木県那珂川町久那瀬地区は、県東部の八溝山系の中山間地にあり、那珂川に沿って水田が広がる、起伏のあるところだ。果樹による観光農業や農産物直売などが盛んながら、近年は売り上げや来訪者数が伸びないのが悩みである。

 平成19年4月に組織され、ホタルの里づくり、ヒガンバナ植栽、魚道設置など水、環境を守る多様な取り組みをしている「久那瀬農地水環境保全会」は、県の食の回廊づくり事業である「八溝そば街道」振興の一環として、同地区の耕作放棄地を活用してソバを生産し、地域活性化をはかることになった。11月、クボタeプロジェクトの支援を得て、耕作放棄地の再生に取り組んだ。対象地は5年ほど耕作放棄され、シノ竹が密生した畑0.3ha。


  
左 :再生前は、4~5mものシノ竹が密生
右 :数年前に刈り取ったシノ竹ですら、既に3mほどの背丈に 


 11月9日、地元関係機関とクボタグループが共同で、草刈り及び耕耘作業を実施した。翌10日は、栃木県及び県耕作放棄地対策協議会主催の「耕作放棄地再生対策研修会」が開催され、再生作業現地実演研修として、クボタeプロジェクトの作業の見学が行われ、圃場の全面草刈り、耕耘(プラウ耕)が実施された。県および周辺市町村、農業委員会、JA、土地改良区などの関係者約100名が参加した。


  
左 :セイタカアワダチソウがはえた場所から草刈作業を開始。画面奥は、背の高いシノ林
右 :セイタカアワダチソウの刈取り後、プラウで反転耕起作業


  
左 :高さ4~5mに伸びたシノ林の刈取と細断  
右 :シノの根茎は強いため、確実に反転できるよう慎重にプラウ耕作業が行われた


  
左 :2日目、残ったシノ竹の刈取り作業
右 :県及び県耕作放棄地対策協議会主催の研修会で、放棄地再生作業実演を視察

 

  
左 :シノの刈取り実演の様子 
右 :プラウ耕でシノの根の反転作業を実演


 参加者からは、
「大型草刈機の威力を見せてもらった。細断されたシノ竹が有機質肥料に生まれ変わるのもすばらしい。(耕作放棄地の再生には)地域をあげて取組む必要があるとのクボタeプロジェクトの考え方に感銘をうけた。再生が困難と思われた放棄地が見る間にきれいになり、地元の農家に生産意欲が出てきたのがうれしい」(県関係者)

「周辺の地権者にも声をかけて、耕作放棄地再生の作業を見に来てもらったが、あれだけ生い茂ったシノ竹が、一気に粉砕されて、皆びっくりした。那珂川町の耕作放棄地再生につながりそうだ。町が耕作放棄地面積率県内ワーストワンを返上するべく取り組む中で、クボタeプロジェクトの支援は有り難かった。お陰様でイノシシの被害も減るだろう」(那珂川町関係者)
などの感想が聞かれた。



全対象面積の反転作業を終了


 今回のクボタeプロジェクト再生作業は、シノ竹の細断とプラウ耕による土壌の反転までで終了した。反転したシノ竹の根茎を冬の寒さにさらし、できるだけ枯死させた上で、来年の春に砕土・根茎の除去・整地の支援を行って、関係者に引き渡す予定になっている。
 再生された農地では、久那瀬農地水環境保全会と地元のそば生産組合が協力して、来年からそばの栽培に利用していく計画だ。(みんなの農業広場事務局)