提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

再生農地での作物のつくり方



モロコシ栽培

2009年01月28日

(2024年3月 一部改訂)

概要

「由来と特徴」
●モロコシは、イネ科、ソルガム属に分類される一年生草本作物です。タカキビとも呼ばれます。
●原産地は、チャド東部からエチオピア東部にかけてのサバンナ地帯と推定されています。
●栽培されるモロコシは、大きさや早晩性などの変異が大きく、利用目的によってさまざまなタイプがあります。
●草丈が100cm前後と短く、穂が全体の量に比べて大きい「子実型」、草丈が300cmを超えて穂が全体の量に比べて小さい「ソルゴー型」、それらの中間の「兼用型」があります。
●4000年前の種子がアフリカの遺跡からみつかっており、起源地から西アフリカやインドに伝わったと考えられています。
●日本では、弥生時代以降に栽培されるようになったと考えられますが、確かな証拠はありません。

epro_morokoshi_image2.jpg
アフリカやインド由来の白いモロコシ 

「栽培状況」
●現在の栽培地は、インド、アフリカ、中国、アメリカなどの高温・乾燥地帯が中心です。トウモロコシよりも乾燥に強く、広い地域で主食用や飼料用に栽培されています。
●日本では、本州、四国、九州地方などで飼料用として栽培が盛んであり、水田転作作物としても各地で栽培されています。

epro_morokoshi_image1.jpg
伝統的なモロコシの品種の穂はまばらで開く特徴がある(長野県)

「利用法」
●原産地のアフリカでは、種子は粉にして、ひき臼やつき臼を使って餅のような「そばがき」状食品にして、利用されています。 
●中国でも、粉にして団子や焼餅にして食用とするほか、酒(白酒)の原料にしています。
●日本では、粉にして食べるのが主流で、熱湯などを粉に加えてかき混ぜる「ソバがき」状の食品や団子として、食べられてきました。 
●穂の長い型のホウキモロコシは、穂を箒として利用されています。

主な品種と種子の入手方法

●地方在来品種は、日本では山間地に多数ありますが、他殖性なので改良品種と混ざり合い、純粋な在来品種は減りつつあります。
●改良品種は、日本では約50品種が流通していますが、種苗業者が輸入する品種は入れ替わりが激しく、一代雑種が主流です。
●飼料用でも、子実型や兼用型として流通しているものなら、栽培して食用に使えますが、ソルゴー型は極晩生なので困難です。
●温度や日長に対する反応の遺伝的な違いで極端な生育の差がでるので、地域ごとに適した品種を選ぶ必要があります。
●市販種子は、種苗業者や農協などで簡単に入手できますが、在来品種は栽培地の農家から分けてもらいます。

epro_morokoshi_image3.jpg
穂首が垂れ下がる日本では珍しい品種(山梨県) 

栽培

「播種前の準備」
●トウモロコシの管理とほぼ同じ要領でおこないます。
●トウモロコシより種子が小さく、また初期成長が遅いので、雑草防除のために深く耕します。
●ロータリー耕あるいは鍬で土を細かく砕いておくと、出芽率が良くなります。
●湿害を受けないように、水はけの良いpH5.5~7の畑を選びます。
●堆肥は10aあたり1~6tほど、元肥は10aあたり窒素8~10kg、リン酸10kg、カリ8kgを目安に施します。
●遅播きの場合には元肥を重点にし、早播きの場合は幼穂形成期(本葉7~8枚)の時に根元に窒素5~10kg相当を追肥し、土寄せ(培土)しましょう。

「播種」
●播種する時期は、平均気温が15℃以上になってからを目安にし、遅霜が来ない時期にします。中部地方では5~6月です。
●日長に敏感な品種を早く播くと、栄養成長が小さいまま出穂し、収量が得られない場合があります。
●播種量は、栽培目的と品種の型によって全く異なりますが、子実型の場合には、10aあたり1~2kgが標準です。
●草丈が他の雑穀に比べて高いので、畦幅70~90cmで条播し、株間は10~20cmにします。
●株あたりの播種粒数は2~3粒にし、後で間引きします。粒が比較的大きいので、播種機も利用できます。
●播種深度は2cmほどにし、足で丁寧に鎮圧します。なお、ばら播き(散播)してからロータリーカルチベーターを用いて軽く表面のみ攪拌し、その後で鎮圧する方法もあります。 
●モロコシは草丈が大きな雑穀なので、子実の収穫を目的に栽培する場合には間引きをして、株あたり1個体にします。

「除草と土寄せ」
●初期成長が遅いので、草丈が50cmほどになるまで、1~3回適宜除草(中耕)が必要です。
●土寄せをすると、明らかに収穫量が多くなるので、畦間の除草と追肥を兼ねた土寄せ(培土)がおすすめです。

「収穫・調製」
●種子の褐変程度と硬さで登熟程度を判断します。種子をつぶして乳汁が出なくなり、爪で割れにくくなれば収穫適期です。品種によって子実の色が違うので、注意して判断します。
●手刈りの場合には、穂だけを切り取り結束して(写真参照)、軒先などに2週間以上干します。雨に当たるとカビが生えたり穂発芽するので、注意します。
●脱穀には、イネ用の脱穀機を代用できます。ゴミなどを取り除くため風選し、また篩(ふるい)にかけます。
●貯蔵する場合、過湿によるカビに注意します。

epro_morokoshi_image4.jpg
穂刈り収穫して、軒先で乾燥(奈良県) 

「病害虫」
●病気が少ない作物と言えるでしょう。
●害虫の被害は通常ではほとんど無く、稀にメイガ、ヨトウムシに食べられることがあります。
●殺虫剤などの薬害が出やすいので、指定農薬と濃度に注意します。
●主な病害としては、すす紋病、紋枯病、紫斑病などがあります。強い品種を選び、施肥量を減らします。
●紋枯病は水田転換畑で発生しやすいため、排水と通風を良くします。

執筆者 
井上 直人
信州大学 農学部教授

(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

◆その他の雑穀に関する情報はこちら