ヒマワリ栽培
2008年10月07日
ヒマワリの概要
「作物としての特長」
●ヒマワリは、北米原産のキク科の作物です。
●130~180cmある長大作物で、養分吸収力が大変強いです。
●ロシア、ウクライナ、東欧に多く、北米(アメリカ、カナダ)、南米(アルゼンチン)、アジアでは、中国、インドなどの内陸乾燥地帯に多い作物です。
●用途から、油糧用、食品用、観賞用に分けられます。
●国内では、景観形成のための観賞用としてのイメージが強くあります。
●世界的には重要な「油糧作物」であり、ヒマワリ油は、ダイズ油、パーム油、ナタネ油に次ぐ、第4の植物油です。
●2000年以降、脂肪酸組成が育種的に改良され、従来のハイリノール油から、カノーラ油(ナタネ油)と脂肪酸組成がほとんど変わらない「中オレイン酸品種」が主流になってきています。
ヒマワリの開花風景
「加工・利用」
●油糧種子は、専門の搾油施設で、ヒマワリ油に加工します。
●食品用種子は、専用の脱皮機で殻を剥離し、焙煎して、ヒマワリナッツとして菓子などに利用します(国産の専用機は市販されていません)。
●国内のヒマワリ産地ではヒマワリ油、ヒマワリ石けんなどの食品、油脂関連製品を地域特産品として開発・販売しています。
ヒマワリ製品の数々
種子の入手方法
「入手方法」
●北海道では農協を通じて、油糧用及び食品用種子を購入できます。
●民間種苗会社数社から、油糧用、食品用、観賞用種子が販売されています。
ヒマワリ種子。油糧用品種(左)と食品用品種(右)
「入手時の注意」
●必ず、用途(油糧用、食品用、観賞用他)を確認して、購入します。
●食品用及び鑑賞用品種の種子は、含油率が低く、搾油には向きません。
●油糧用品種の種子は、圧搾のため果皮と胚が固着しており、食品用には不向きです。
●緑肥用には、比較的安価に流通している油糧用種子を用います。
栽培
「栽培条件」
●比較的乾燥を好む畑作物で、生育期間の降水量が500~600mmあれば十分です。
●砂質から粘土質土壌まで、土を選ばず栽培することができますが、排水が良好で通気性のよい土壌が最適です。
「播種前の準備」
●プラウによる耕起、ロータリーハローによる砕土を十分に行います。ロータリ耕でもかまいません。
●転換畑では、明きょや暗きょといった排水対策を十分に行います。
●安全な地下水位は30~40cmです。地下水位が上昇すると、ヒマワリの養分吸収および乾物生産が進みません。
●隣接田からの侵入水や、降雨などによる水位の変動にも、注意します。
「施肥」
●養分吸収力が強いため、全層施肥よりも、作条施肥によって効率的に養分を吸収させます。
●土壌の栄養条件にもよりますが、標準施肥量としてN:6~9kg/10a、P2O5:10~15kg/10a、K2O:6~12kg/10aとします。
●耕作放棄地の場合は、雑草鋤込みによる残存窒素も考えて、施肥量を増減してください。
ヒマワリ播種作業
施肥例
「播種~種子生産の観点からの要点と注意点~」
●播種期は、北海道では5月上~中旬です。
●本州では4~6月上旬まで、幅広く播種ができます。
●畦幅70cm程度、株間25~30cmとし、播種機を用いて2粒播きとします。
●北海道の栽培暦は以下のようです。
栽培歴(北海道の例)
(クリックで拡大します)
「病虫害対策」
●油糧用ヒマワリの登録殺虫剤はありません。
●空洞病の防除には、開花後、ボルドーもしくはドイツボルドーAの500倍液を、収穫14日前まで、複数回、散布します。
●播種後は、トリフルラリン乳剤300ml/10aを施用して、雑草の発生を抑え、ヒマワリの初期生育を助けます。
油糧用ひまわりの登録農薬
●菌核病や空胴病、べと病他の病害が発生しやすいので、連作は避けます。
●菌核病では、菌密度が高くなる7月下旬から8月上旬の時期に開花しないような播種時期を選びます。
耕種的防除を心がけましょう。
左から上から 菌核病により倒伏したヒマワリ / 菌核病による頭花部の被害
「収穫・乾燥調製」
●収穫は、手刈りと、機械による収穫があります。
●手刈りの場合は、開花後40日程度で、花托の裏が黄色みを帯びてきた頃が収穫適期です。
●頭花部を鎌で刈り取り、ビニルハウス内で乾燥させます。
●乾燥後、豆用脱穀機で脱粒し、唐箕風選をして、油糧用種子として調製します。
●機械収穫の場合には、十分乾燥させてから、汎用コンバインで収穫します。
●収穫後の種子は、平型乾燥機で水分13~15%まで乾燥させます。
●唐箕風選をして、調製します。
コンバインによるヒマワリ収穫
執筆者
本田 裕
(独)農研機構 食農ビジネス推進センター 連携推進室
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