シコクビエ
2008年10月07日
概要
「由来と特徴」
●シコクビエは、イネ科、オヒシバ属に分類される一年生草本作物です。
●穂の形態が指のように見えることから、英語でfinger milletといい、日本の地方名でもカモアシヒエと呼ばれたりします。
●原産地は、エチオピアからウガンダにかけての東アフリカ高原地帯です。
●紀元前1,300年頃にはすでにインドで栽培されており、東アジアに伝わったと考えられています。
●日本には、縄文時代晩期に伝えられたと考えられています。
シコクビエのはさがけ
「栽培状況」
●現在の栽培地は、東アフリカ、インド、ネパールが中心です。イネが栽培できない東南アジアの中山間地でも、栽培されています。
●日本では、中部地方、近畿地方、四国地方の中山間地でわずかに栽培されている程度です。
「利用法」
●原産地の東アフリカでは、粥や団子状にしたウガリが主食として食べられるほか、ビールとして醸造され、家庭で飲まれています。
●インドやネパールでも、ロティというパンにしたり、醸造、蒸留して飲まれています。
●日本では、岐阜県や徳島県で「だんご」として食べられています。
主な品種と種子の入手方法
●シコクビエの改良品種は、日本にはありません。
●在来品種としては、地方に残存する、わずかな品種があるだけです。
●よって、種子の入手は困難で、栽培地の農家から分けてもらい、自家採種で増殖するしかありません。
栽培
「播種前の準備」
●アワやキビの場合と同様に、雑草防除のためには、プラウ耕により深く耕すとよいでしょう。
●プラウが無い場合は、ロータリー耕あるいは鍬で土を細かく砕いておくと、出芽率が良くなります。
●シコクビエは、特に初期生育が悪く、雑草との競合に弱いので、極力、雑草種子が発芽しないような耕種的防除が必要です。
●施肥は、堆厩肥を10aあたり4t程度施します。ただし、施肥量が多いと倒伏しやすくなるため、残肥のある土地では施肥量を少なめにしましょう。
●堆厩肥が入手できない場合は、化学肥料(窒素、リン酸、カリ)を10aあたりそれぞれ3~5kg程度、元肥で施します。
「播種」
●関東の場合、4月下旬から5月下旬まで可能です。
●10aあたり600g~1kgの種子を準備し、畦幅50~60cm程度で、点播か条播します。
●点播の場合は株間10~15cmで、1株あたり5~10粒程度播種します。
●条播の場合は播き幅10cm以内で播種し、出芽揃い後2週間頃とさらに2週間後の2回に分けて間引きします。
●間引きの目安は畦1mに30株程度残すようにします。
●播種深度は1cm程度とし、深くならないように注意します。
左上 :シコクビエの畑移植栽培 / 右下 :シコクビエ条播
「除草と土寄せ」
●シコクビエは、特に生育初期には雑草負けするので、株元を念入りに除草します。
●節間伸長が始まる播種後50~60日くらいまでは、2週間ごとに除草し、土寄せしましょう。
「移植栽培」
●雑草との競争力を高めるため、移植栽培がおすすめです。
●発根力が大きく、活着が容易なので、移植栽培に適しています。
●育苗はイネの場合に準じます。
●分けつ能力が高いため、移植本数は2~3本で十分です。
●田植機で移植すると、作業時間は大幅に短縮できます。
●主稈は75日前後で出穂し、さらに45日程度で登熟します。
●ただし、分けつの出穂が遅れながら徐々に続くため、成熟期は不揃いとなります。
「収穫・調製」
●穂が茶褐色になり登熟したら、収穫可能です。
●収穫期は東北地方で9月上中旬、関東地方で9月中旬~10月上旬です。
●バインダーまたは手刈りで、結束して1週間程度、天日または通風乾燥します。
●栽培規模が大きければ、汎用コンバインが利用できます。
●脱穀にはイネ用の脱穀機を代用できます。ゴミなどを取り除くために篩(ふるい)にかけ、風選します。
左上 :コンバイン収穫 / 右下 :小型収穫機による結束
(提供 ともに信州大学農学部 井上直人教授)
「病害虫」
●病気は、時折穂いもちにかかることがあります。
●害虫は、メイチュウの被害を受けることがあるので耕種的あるいは化学的防除で軽減できます。
●特に暖地で多く発生し、8月以降、多発する場合があります。
●高冷地では、害虫の発生はほとんどみられません。
●シコクビエの指定農薬はありません(2024年現在)。
倉内伸幸
日本大学生物資源科学部教授
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