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再生農地での作物のつくり方



アワ

2008年10月07日

(2024年2月 一部改訂)

概要

「由来と特徴」
●アワはイネ科、アワ属に分類される一年生草本作物です。
●アワの原型は、よく道端や農地で見かける雑草のエノコログサ(俗名:ネコジャラシ)と推定されています。
●エノコログサは、東部アジア、シベリアからヨーロッパ、アメリカ北部まで広く自生していて、栽培アワとよく交雑し、簡単に種子をつけることができます。
●原産地は東~中央アジアと推定されていて、アジアで栽培されているだけでなくヨーロッパではイタリア、ドイツ、ハンガリーなどで栽培されています。
●アメリカへは初期移民がヨーロッパから伝えて、少量栽培されていましたが、1849年から栽培が奨励され、20世紀にはアメリカの雑穀の90%を占めました。
●日本へは、朝鮮を経て最も古く渡来し、縄文時代には既に栽培され、ヒエと並んで我が国最古の作物で、イネ伝来以前の主食であったと考えられます。

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点播したアワの成熟期

「栽培状況」
●日本のアワは、栽培上から春アワと夏アワに分けられます。
●春アワは春に播種するアワのことで、北海道・東北地方に主に分布し、一方夏アワは夏に播種するアワで、7月下旬頃の夏に播種するものを指し、九州地方に分布しています。

「利用法」
●利用面からは、ウルチアワとモチアワとに分けられます。米と混ぜて粟飯とする場合はウルチ性が適し、団子や餅、菓子などにする場合はモチ性が適しています。
●台湾では、モチアワがハレの場の儀礼用として、アワ酒やアワ餅に加工されて重要な役割を果たしています。一方、ウルチのアワは重要視されていません。
●アフガニスタンではクルシックと呼ばれるパンにして食べられています。

主な品種と種子の入手方法

●日本では2,000以上の品種があったといわれていますが、同名異品種、異名同品種もかなりあり、未整理の状態です。 
●しかもその多くの品種が、現在では絶滅してしまった状態です。
●主な品種は、岩手県でつくられる大槌10(モチ)、虎の尾(ウルチ)、あわ信濃1号(ウルチ)、あわ信濃2号(モチ)などがあります。また、岩手県では43年ぶりに育成品種ゆいこがね(モチ)が品種登録されました。この品種は市場ニーズが高い黄色の発色が良く、さらに機能性成分であるルテインを多く含んでいます。
●種子は種苗会社で販売していないので、最寄りの農協や農家から分けてもらうか、インターネットなどで検索し入手するしかありません。

栽培

「播種前の準備」
●雑草防除のためには、プラウ耕により、深く耕すことをすすめます。
●プラウが無い場合は、ロータリー耕あるいは鍬で土を細かく砕いておくと、出芽率が良くなります。 
●アワは多湿をきらうので、水はけの良い畑を選んだ方が生育が良くなります。
●施肥は、堆厩肥を10aあたり4t程度施します。
●酸性土壌にも強く、pH5.0~6.0前後で十分に生育します。 
●堆厩肥が入手できない場合は、化学肥料(窒素、リン酸、カリ)をそれぞれ10aあたり5kg程度、元肥で施します。 

「播種」
●播種は、関東の場合、5月上旬から6月下旬まで可能です。
●10aあたり600g~1kgの種子を準備し、畦幅50~60cm程度で、点播か条播します。
●点播の場合は、株間20~30cmで、1株あたり5粒程度播種します。
●条播の場合は、播き幅10cm以内で播種します。
●播種深度は1cm程度とし、深くならないように注意します。
●出芽揃い後2週間頃と、さらに2週間後の2回に分けて、間引きます。
●間引きの目安は、畦1mに30株程度残すようにします。

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アワ育苗

「除草と土寄せ」
●生育初期には雑草負けするので、株元を念入りに除草してあげます。
●節間伸長が始まる播種後60日くらいまでは2週間毎に除草し、土寄せしてあげましょう。

「出穂から収穫、調製まで」
●約2カ月で出穂し、さらに40日程度で登熟します。
●穂が黄化し登熟したら収穫可能です。
●収穫は、バインダーまたは手刈りでおこないます。結束して1週間程度天日、または通風乾燥します。
●栽培規模が大きければ、汎用コンバインが利用できます。
●脱穀には、イネ用の脱穀機を代用できます。
●ゴミなどを取り除くために篩にかけ、風選します。

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アワとヒエのはさがけ

「病害虫と鳥獣害対策」
●病害はほとんど気にしなくても良いのですが、鳥害を受けやすいので、防鳥網などで対処すれば減収を抑えることができます。また、トウモロコシと同様に、メイチュウに食害されやすいので耕種的あるいは化学的防除で被害を軽減できます。

執筆者 
倉内伸幸
日本大学生物資源科学部教授

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