荒廃したりんご畑が雑穀を栽培する畑に復活(岩手県軽米町)
2009年05月11日
岩手県の北端に位置する軽米町。桜の花が開き始め、ようやく春が訪れた丘陵地帯で、パワクロによる整地作業が行なわれた。クボタeプロジェクトによる、4回目の耕作放棄地再生支援作業。かつてのりんご畑は、耕種作物の栽培できる農地に再生した。地元・長倉地区の農業者や二戸農業改良普及センター、(株)クボタ関係者らは、約60aの土地がみるみる整地されていく様子を、晴れやかな表情で見守った。
左 :整地された農地の前で記念撮影 / 右 :地元農家の方々が作ったマップ
昭和50年代前半、八戸平原総合農地開拓事業により拓かれた60haの基盤整備地の一部が、今回の対象地。現在は25戸の農家が葉たばこや麦、雑穀などを作付けしているが、りんご畑だったこの土地は、20年ほど前から遊休化していた。
地域の農業者で組織する「長倉地区資源保全隊」の日向文男隊長は、「開拓当初は21戸あったたばこ農家が年々減り、現在は11戸。農業従事者の高齢化も進んでいます。4年ほど前から雑穀栽培に力を入れており、この土地も活用しようと考えていましたが、我々の手には負えない状況でした」と、クボタeプロジェクト応募の経緯を語る。
2008年8月21日、支援作業に先駆けて現地確認に訪れたクボタeプロジェクト関係者も、600本の切り株とわい化栽培用支柱が残されたまま、草むらになったその場所を見て、「これはたいへんだ」と思ったという。
第1回目の作業が行なわれたのは、昨年9月27日。大人の体を覆うほどに伸びた草を、全員が汗だくになりながら刈り取った。
左 :現地での打ち合せ / 右 :地元農家と(株)クボタの共同草刈り作業
第2回目は10月7・8日に行なわれた、りんごの木の抜根作業。しっかりと根を張った切り株を取り除く作業は、専門の業者に頼まざるを得なかったが、支柱撤去だけでも重労働だった。
第3回目は11月26日の耕起作業。国内最大級トラクタ、135馬力のパワクロが登場し、プラウで土を起こした。ここまでくると、あとは砕土・整地作業を残すのみ。反転した雑草の根を冬の寒さに当てながら、春を待った。
そして、ようやく迎えた第4回目の、4月17日。76馬力のパワクロが用意され、バーチカルハローで耕耘。黒い土が表面に現れた圃場に足を踏み入れた農家のみなさんは、踏み固められていない土の感触を確かめながら、パワクロの威力を実感した様子だった。
左 :耕起してひと冬越えた状態 / 右 :ふかふかの土はパワクロのなせる技
左 :表面に現れた太い根は手で取り除く / 右 :みるみるうちに作業が進む
地元の営農組合「グリーンヒル長倉」の内城章会長は「本当に助かりました。地力を上げるために牛糞堆肥や炭などの有機肥料を入れ、5月にキビの種をまく予定です。地域に耕作放棄地を出さないよう、今後ともがんばっていきます」と、力強く決意を表明。
それを受けて(株)岩手クボタの千葉隆専務取締役は、「たいへんな作業でしたが、何よりもここの農家のみなさんの真摯な取り組み姿勢に引かれ、支援をさせていただきました。事業はこれで終わりですが、これからがスタートでもあります。今後も情報交換をさせていただきながら、農地再生のお手伝いをしていく考えです」と語った。
長倉地区の農業者は、環境保全型農業に取り組む「エコファーマー」に認定されているため、この畑で栽培される雑穀も、減農薬・減化学肥料で作られる。
耕作放棄地が見事な農地に生まれ変わっただけでなく、そこで付加価値の高い作物が収穫されるようになれば、一つのモデルケースとして注目されることだろう。ここでの成果が全国に波及していくことを、プロジェクトに関わったすべての関係者が願い、新たな挑戦を誓い合った。(橋本佑子 平成21年4月17日取材)
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