ヒゲ親父が語る天敵の話 【14】
2009年11月10日
意外な発見 ・ “スワルスキーはミカンハダニがお好き”
山中 聡
スワルスキーの話を続けます。
スワルスキーカブリダニ(商品名スワルスキー)は、アザミウマ類、コナジラミ類幼虫を主として捕食する天敵です。今年1月中旬から、販売が開始されました。野菜類への利用が進み、施設栽培のピーマン、ナス、パプリカ、キュウリ、サヤインゲン等に非常に良く定着して、天敵を利用した害虫防除プログラムが各地で広がっています。
右 :スワルスキーは、ミカンハダニを捕食すると赤味がかる
スワルスキーはアザミウマ類、コナジラミ類幼虫を好んで捕食するものの、野菜類に主に発生するハダニ(ナミハダニ)に対しては、餌がなくなったときに「仕方なく食べるおやつ程度」の捕食反応しか示さないといわれてきました。
ところが昨年、スワルスキーカブリダニが、ミカンや各種柑橘類に発生するミカンハダニを好み、積極的に食べつくすということがわかりました(神奈川県農業技術センター根府川分室 真壁研究員の研究による)。
同分室でのハウスミカンのミカンハダニに対する防除試験には、10年生の温州みかんの木を用いました。この程度の木には約1万枚の葉がありますが、すでに100葉当たり40匹程度のミカンハダニが発生していました。ここにスワルスキー250匹を2週連続で計500匹放飼したところ、100葉当たり8匹程度に減少しました。
九州での試験では、16年生の大きな木(数万枚の葉があります)に100葉当たり90匹程度のミカンハダニが発生している状態で、1樹当たり250匹のスワルスキーを、3週連続で750匹放飼した結果、1カ月後には、100葉当たり、なんと1匹に減りました。
ミカンハダニは柑橘類の主要害虫で、化学農薬が効きにくくなって、防除が難しい害虫です。防除には農薬散布が何度も必要なため、スワルスキーをうまく利用できれば、今後の害虫管理、省力化に貢献できるものと期待しています。
左 :こぼれないよう、ティシュペーパーの上に載せて放飼
果樹類は野菜類に比べて使用できる農薬が少なく、天敵を利用した防除プログラムが確立されていません。スワルスキーが使えるようになれば、果樹での抵抗性害虫管理、減農薬栽培などが可能になると期待しています。
やまなか さとし
東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長