信州発 “農”と言える日本人 【38】
2012年05月22日
菅原文太さんの農園
高見澤勇太
先日、映画俳優の菅原文太さんが代表を務める「竜土自然農園 おひさまの里」へお邪魔した。
おひさまの里は山梨県北杜市にあり、わが家から車で約1時間の場所にある。
訪問するきっかけは、南牧村の菊池村長と文太さんが知り合いで、「ぼかし肥料」を作るための新しい作業場の開所式に同行することになったため。
文太さんは2009年から、北杜市を拠点に本格的な農業活動を開始した。
化学農薬や化学肥料を使用しない自然農法で作物を育てる。その基本となるのが、ぼかし肥料である。
ぼかし肥料の説明は自然農法の第一人者、NPO法人百匠倶楽部ネット理事長の後藤清人さんが来園して、話してくれた。
後藤さんは現在80歳を超えるお歳である。40年以上にわたり農薬・化学肥料・畜糞を使わず、微生物と米ぬか、ふすま、くず大豆、おから、もみ殻、そば殻などの格安で手に入る資材を使ってぼかし肥料を作ってきた。一般の有機農業者が陥りがちな、過剰有機物投入による硝酸態窒素問題を解決した、「自然生態系耕土農業」を確立している。
文太さんが代表を務めるおひさまの里だが、第一線で現場を指揮しているのは、奥様の文子さんである。
おひさまの里を見学した晩に、お礼のメールを文子さんに送った。すると、こんなメールが返ってきた。
「土中の微生物を増やすことは、これからますます注目されると思っています」
「今流行(はや)りのこと、今人気があるもの、今だれでもやっていることは、いずれ交代変化するのが世の常だと思います。それと同時に、いつの世も変わらない大事なことがあります」
「安全な食料を供給することは、政治の第一責任で、これはいつの世も変わりません。慣行農業は、戦後の食糧難の時代、その記憶がなまなましい時代には役割がありましたが、今は量を追う時代ではなく、質を求める時代だと思い、私たちは若い世代と子供たち孫たちの世代の健康を守るために、農業に入りました」
「もちろん自分たちもおいしい野菜、米を食べたいこともありますが(笑)」
「これからも農業者同士、手をつなぎましょう。また遊びに来てください」
菅原文子
自分は現在の農業形態のままでよいのだろうか・・・。
とても考えさせられる一文だった。
たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」