信州発 “農”と言える日本人 【24】
2011年03月31日
自分の流儀
高見澤勇太
『長野県農業士協会・南佐久支部』に、ゴルフ大好き人間“林篤志”がいる。
人生の中で、常にゴルフを最優先に考えている男だ。
自分の部屋で、パッティングとアプローチの練習ができる。そのため部屋で寝ることはできない。
夏場はもちろん農業をしているが、農閑期になると、小中学校のスケートのコーチをしながら、週3回は牛丼屋で夜勤のアルバイトをしている。寝不足と闘いながら、1日たりともゴルフクラブを握らない日はない。
林の当面の目標は、ゴルフで南牧村ナンバーワンになることだ。多分その日も近いと思う。
もう一人、自分の周りでゴルフが上手になりたいと思っている女性がいる。
名前は白鳥玲子(仮名)。彼女は私の中学時代の同級生で、東京都在住の開業医である。
白鳥は週に5日練習場に行き、レッスンを受ける。そして週1でコースにも出る。にもかかわらず、腕前のほうはまだまだビギナー。ハーフで60回を切ることはほとんどない。
だいたいのスポーツは、練習を重ねていけば少しずつ上達する。
しかしゴルフは、練習をたくさんしても、少し上達したかと思うと突然打ち方が分からなくなり、以前より下手になってしまうことがある。そして、それを修正することはとても難しい。
林の場合は、頭の中で考えたゴルフを体で表現できるように、練習を重ねる。
ゴルフ仲間やプロなどからアドバイスをもらうと、とりあえず実践してみる。自分に合った技術は取り入れて、合わないものは捨てていく。難しいゴルフ理論の話はするが、彼のめざすゴルフは『シンプル・イズ・べスト』である。
白鳥の場合は頭が良いので、レッスンプロに教えてもらったことを理解して、そのまま実践しようとしている。プロの難しい理論を頭の中では処理できているようだが、体への伝達と表現ができていない状況にある。
白鳥に必要なものは、自分なりのアレンジである。自分に合った自分のスイングを見つけなければならない。
農業にも同じことが言える。
農協の営農指導員や県の普及指導員は、どの農家にも同じ指導をする。しかし、農家の考え方や畑の状況は十人十色である。各農家が自分のレベルや営農のスタイル、畑の性質を判断して、作付けしなければならない。他人のまねだけでは農業経営はできない。
農業でもゴルフでも正しいと言われている、思われていることだけをやっていて成功するのなら、こんな簡単なことはない。画期的な技術は、代胆な発想や突拍子もないアイデアから生まれることが少なくない。
今回はゴルフを通して、農業への取り組み方や、とらえ方の新たな視点を再認識した自分であった。
たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」