「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【125】
2024年06月14日
滝野川ゴボウの花を見てきました
一昨年開催された地域支援講座「江戸東京野菜 その歴史と育て方や調理法を学ぶ」(東京都小平市の公民館主催)が、本年も開催されることとなりました。
▼「江戸東京野菜 その歴史と育て方や調理方法を学ぶ」に参加
▼「江戸東京野菜 その歴史と育て方や調理方法を学ぶ」に参加(続)
前回同様3部構成で、第1回は江戸東京野菜の第一人者で江戸東京野菜の復活普及を行っている大竹道茂先生による「江戸東京野菜の歴史を学ぶ」、第2回は小平市内で江戸東京野菜を栽培している農家の宮寺光政さんの圃場見学「江戸東京野菜の育て方を学ぶ」、そして第3回は、私が担当する「江戸東京野菜の調理方法を学ぶ」です。
先日、その第1回が開催されたので、聴講してきました。
江戸東京野菜とはどのようなものなのか、東京の地形や栽培される野菜の種類、江戸時代に全国各地から江戸に持ち込まれた種による野菜の栽培についてなど、講義の内容は多岐にわたっていました。都内の各地域で古くから作られてきた伝統野菜にまつわる話には物語があり、とても面白いものでした。
松平右馬頭(後の第五代将軍徳川綱吉)が脚気を患い、静養で訪れた練馬村でダイコンを栽培させたところ、とてもよいダイコンが出来、またそれを食べたおかげで脚気が治ったという話や、八代将軍徳川吉宗が鷹狩りに出かけ、食事をするために訪れた香取神社で提供された青菜入りの餅のすまし汁を気に入り、名前のなかったその青菜に、その地名をとって「小松菜」と名付けた話など、参加者の皆さんも興味を持ったようです。
また近年は、町おこしとしてその土地にゆかりのある江戸東京野菜を栽培する地域が増えており、北区滝野川にある滝野川八幡神社の境内で、令和4年から滝野川ゴボウ、滝野川大長ニンジン、滝野川カブの栽培を始めていることが紹介されました。
滝野川ゴボウは1メートル近くにも育つ長いゴボウですが、境内には耕作地はないとのこと。いったいどのように栽培しているのだろうと思っていると、講義の画面に映し出されたのは、塩ビ管に立派なゴボウの葉が生い茂っている様子でした。
ちょうど今、そのゴボウに花が咲いていると知り、実物を見学しに出かけてきました。
神社に着くと、三カ所三様にゴボウが育てられていました。50cm四方ほどの植木鉢に植えられたもの、植木鉢の上にプラスチックダンボールを三角形に組んだもの、そして地面に塩ビ管を立てたもの。植木鉢のゴボウには赤紫色のアザミのような花が咲いていました。また、境内には滝野川大長ニンジンの白い花も種取り用に残っていました。
お参りするのも忘れて見学していると、宮司の奥様が、栽培の様子や近隣の皆さんがいかに滝野川ゴボウに関心をもっているか、お話してくれました。
神社で育ったゴボウの種が保育園や学校にも広がり、塩ビ管栽培が広まっているとのこと。滝野川では江戸時代から昭和の初期まで、農業、種苗業が盛んに行われ、この地を通る旧中山道はタネ屋街道と呼ばれていました。子どもたちは伝統野菜の栽培を通して、自分の住む地域の歴史や野菜に興味を持つことでしょう。
境内にある色鮮やかなかわいいイラストとともに立っている塩ビ管は、近隣の東京国際フランス学園の生徒たちが種まきをして育てているものとのこと。日本人だけでなく外国のお子さんも成長を楽しみにしています。私も収穫の頃に再度訪れてみたいと思います。

たしろ ゆきこ
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。