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「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【117】

2023年10月17日

能登ワイン ~ワインづくりは農業である~


野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 先日、能登半島を旅行してきました。今回の旅行の目的は日本海のおいしい海の幸を堪能すること。そして、もう一つは鳳珠(ほうす)郡穴水町にあるワイナリー「能登ワイン」の見学です。

 能登ワインは2003年、のと里山空港のオープンを前に、地域振興の一つとして荒廃地となっていた栗園でブドウ栽培を始め、「過疎が進む地元や地域社会をワインづくりという産業で元気にしたい。ワインのおいしさとともに能登の豊かな食や文化を発信していきたい」との思いから、ワイナリーをスタートさせました。


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「能登ワイン」()と山に囲まれたブドウ畑(


 穴水町は、美しい自然環境と穏やかな気候に恵まれており、山々に囲まれた地形が風除けとなって、ブドウ栽培に適しています。また、特産の「能登カキ」の殻を乾燥させ石灰の代わりにまくことで、ミネラル豊かな土壌となり、質のよいブドウが育つのだそうです。

 訪ねた時には、収穫間近の黒ブドウ「ヤマソービニヨン」が実っていました。初めて聞く名前のヤマソービニヨンは、日本固有品種のヤマブドウとヨーロッパ系品種の「カベルネ・ソーヴィニヨン」を人工交配して造った、赤ワイン用ブドウ品種です。カベルネ・ソーヴィニヨンの持つ上品な香りとヤマブドウの持つ野性味ある風味が特徴で、能登ワインには欠かせないブドウです。一粒味見をさせてもらいましたが、甘みと渋み、ヤマブドウの香りがあり、生食でもおいしいブドウでした。


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 :ヤマソービニヨン
右 :根元には牡蠣の殻


 栽培方法はヨーロッパで一般的な垣根式で、腰の高さあたりにきれいに揃って実っていました。収穫方法を尋ねると、横に移動する台車のようなカートを使って行うとのこと。「このブドウもそのように収穫するのですね」と聞くと、「これは来週、近隣の中学生が収穫するために残しているブドウです。これをワインにして、成人したときにプレゼントします」とのこと。なんとも素敵な取り組みです。


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写真は垣根式。日本では棚栽培が多いとのこと


 ブドウ畑の次は、醸造所の見学です。醸造所に入ると「ほかのお酒、日本酒やウィスキーなどは、きれいな水のある場所で作られます。しかし、ワインの場合、良質なブドウからしか良質なワインはできないのです。だから、ワインづくりは農業なんです」と説明を受けました。

 
 この日、醸造所で作業が行われていたのは白ワインでした。白ワインは、収穫後すぐにブドウの実と枝を取り分ける機械にかけられます。実だけになったブドウはプレス機にかけられ、ジュースとなります。時折「プシュー」という音がしていたのは、その音でした。この果汁をステンレスのタンクに入れて発酵が進むと、ワインとなります。また、品質のよいワインは木樽に移して熟成させます。


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 :ブドウの実と枝を取り分ける機械
 :品質のよいものは樽に移されてさらに熟成させる


 赤ワインは、実と枝を分ける機械にかけたあと、すぐにタンクに入れられ果皮、種子ともにタンクに入れて発酵させます。この工程により、果皮から赤ワインらしい赤い色み、種子からは渋み成分のタンニンが生まれます。これをプレス機にかければ、赤ワインとなります。


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 :ワインを発酵、熟成させるステンレスタンク
 :プレス機。ブドウの果皮・種と果汁をプレス機にかけて分ける


 初めて味わうヤマソービニヨンの赤ワイン、最近栽培を始めたというジョージアの品種「サペラビ」などの試飲もしました。ぜひ、能登の特産と一緒に楽しみたいと思いました。


 今年は猛暑の上に雨も少なかったので、ブドウの出来があまりよくなく、ワインの生産量も少なくなりそうだとのこと。ブドウの収穫量がそのままワインの生産量に直結するワインの醸造。「ワインづくりは農業だ」。まったくその通りだと思います。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。


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