「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【97】
2022年02月17日
~子どもから大人まで~「野菜が好きになる」事例紹介(三宅島「栄養・食生活ネットワーク会議」)
東京都島しょ保健所三宅出張所から依頼を受けて、2月14日、三宅村、御蔵島村の健康福祉課、産業課、医師、商工会、小学校教諭などをメンバーとする栄養・食生活ネットワーク会議の中で、リモートで講演を行いました。
「栄養・食生活ネットワーク会議」は、昨年訪ねた大島同様、三宅島、御蔵島の島民の野菜摂取量が他の地域に比べて少ない傾向にあることから、成人病予防のため、野菜摂取量向上の普及啓発を目的に設置された会議です。
保健所ではかねてより、外食や中食の利用が多い状況をふまえて、1食当たり120g以上の野菜を使用したメニューがある店「野菜メニュー店」の普及促進に力を入れてきましたが、流通や栽培環境など、離島ならではの状況下での野菜の摂り方が大きな課題となっています。
今回の講演では、『~子どもから大人まで~「野菜が好きになる」事例紹介』として、島民の皆さん、とくに子どもたちに、野菜と触れあう機会を設けるための事例を紹介しました。
ここ数年、東京都内の小学校では、食育として校内に畑を作る学校が増えています。都会の真ん中にある学校でも、保護者やボランティアを募って土を耕し、栽培の専門家を招いて立派な畑を作っています。中にはその地域に残る伝統野菜を作り、その土地の歴史を学ぶ学校もあります。また、ある学校では、その土地に伝わる野菜を使って漬物を作り、食文化を学んでいる例もあります。
「土作りから収穫まで、食べものができるまでを毎日見ている子どもたちにとって、自分が育てたものは、すべておいしいのです。体験するから関心も出てくるし、それが学ぶ意欲にもつながります」と、ある学校の校長先生が話すように、実際に野菜を育て、自分で調理をして味わうことで、野菜への興味がわくはずです。
野菜不足を感じている人の多くは、野菜が摂れない理由として、「時間がない」「調理の仕方がわからない」をあげています。幼い頃から野菜に興味を持ち、野菜の調理方法を学べれば、野菜離れ解消の一助になるのではと思います。
実際に小学校で野菜の栽培を行っている学校では、子どもが収穫して持ち帰った野菜を親子で一緒に料理したり、野菜について話をしたりしながら、野菜を食べる機会が増えているという話も聞きます。
三宅島は立地上、強風や雨天が多く、栽培できる農産物と栽培が可能な時期が限定されますが、特産品でもあるアシタバのように品種を選ぶなどして、子どもたちに栽培の楽しさ、野菜のおいしさを知る機会をもってほしいと思います。
流通面でも、生鮮品が届きにくいという厳しい状況があるので、干し野菜や冷凍野菜を活用したレシピ提案なども重要になりそうです。
最後の講評に代えて、大島での講演同様、どのくらいの量の野菜をたべれば一食120gになるのか確認できるよう、30種類の野菜の元の大きさの重量と、その野菜の40gの大きさの画像を紹介しました。お店だけでなく、家庭でも1種類の野菜のみを使用するのは現実的ではないので、40gの野菜を3種類使用した場合を想定しました。実際に画像を見た参加者の多くがメモを取っていました。
価格が高い、船の欠航で野菜が思うように届かないなどの問題は、一朝一夕で解決できませんが、今回の提案が少しでも役立つことを願っています。

たしろ ゆきこ
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。