「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【87】
2021年04月16日
密を避けて楽しめる観光農園 ~井出トマト農園~
緊急事態宣言解除が解除されたものの、まだまだ緊張感のある毎日が続いており、外出も躊躇してしまいますが、「密を避けて収穫体験ができる農園がある」と知り、訪ねてきました。
大きなハウスでトマト狩りができる、井出トマト農園です。事前予約制なので、密になる心配がありません。
■湘南で愛情を込めて育てたトマト
井出トマト農園は、神奈川県のほぼ中央に位置する藤沢市北部の、周りに畑が点在する、のどかな場所にあります。90年の歴史のあるトマト農園で、現在は9棟のハウスがあり、大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトを常時10品種以上栽培しています。ハウス内には大きなコンピュータが設置してあり、気温や湿度、日射量や風速などがデータ化され、暖房設備やハウスの屋根の開閉が自動で作動し、トマトの生育に最適な環境作りをしているとのことです。
収穫体験ができるハウスは2棟。最初に案内されたハウスでは、9種類のトマトが栽培されています。大きなハウスに天井に届くほど高くトマトが伸びている様子は圧巻です。水耕ロックウール栽培で、真っ白いシートが敷かれたハウス内はとても清潔感がありました。
この農園では、40分間好きなだけトマトを食べられるというスタイルなので、端から順に収穫しつつ、味見をしました。
①桃太郎
最初はおなじみの大玉トマトの「桃太郎」。しっかりした果肉がジューシーです。
②サングリーン
めずらしい緑色のミニトマト。熟しても緑色なので見極めが難しいですが、ほんのり黄色っぽくなり果肉がやわらくなったものがおいしいとのこと。
③レッドヴィラ
小さめの大玉トマト。真っ赤な色はリコピンが多いため。味が濃く固めの食感です。
④ピッコラカナリア
オレンジ色がかわいらしいミニトマト。甘味もたっぷり。
⑤トスカーナバイオレット
ワインレッドのミニトマト。紫色はアントシアニン。ほどよい酸味があります。
⑥プリンセスロゼ
淡いピンク色のミニトマト。酸味が少なく上品な甘味。
⑦リリアーナ
縦長のミニトマト。しっかりした果肉で甘味も強い。
⑧マルティーナ
旨みの強い中玉トマト。
⑨フルティカ
甘味と酸味のバランスのよい中玉トマト。
⑩ハニードロップ
もう1棟のハウスでは、この農園でしか栽培されていないという、ミニトマトの「ハニードロップ」のみが栽培されています。試食の前に「ハニードロップはここでしか食べられないので、最初のハウスでおなかいっぱいにならないように注意してくださいね」と言われたのが納得できる、甘味の強いミニトマトです。
スタッフの皆さんが販売用のトマトを収穫していたので、収穫するタイミングの「色」の見極め方など教えてもらいましたが、その時の気温や生育状況によっても変わるため、色だけでは一概に判断できないとのこと。コンピュータで管理された栽培とはいえ、人の経験が大事なのだと感じました。
併設の直売所では、さまざまトマトのほかに、トマトの加工品が販売されています。
トマトジュースは大玉トマト「桃太郎」とミニトマトの2種類があり、試飲させてもらいましたが、どちらもトマトの個性がそのままのおいしいトマトジュースでした。特にミニトマトのジュースは、料理のソースとしてそのまま使えそうなほど、甘味と旨みのしっかりしたジュースでした。
トマトのジャムは桃太郎、赤のミニトマトに加えて、黄色のミニトマト「イエローアイコ」を使ったものもありました。試食すると、パンだけでなくお肉料理にも合いそうだったので、購入してみました。
自宅に戻り、鴨のローストのソースとして使ってみたところ、思った通りのおいしさ。上品な甘味と杏のような香りが赤身のお肉を引き立てます。乳製品とも合いそうなので、ヨーグルトやチーズに添えてもよさそうです。
このような農園があれば、ぜひまた訪ねたいと思います。

たしろ ゆきこ
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。