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麦・大豆

大豆編 大豆作の問題雑草と対策

(2024年11月 改訂)

大豆作における問題雑草とは?

 大豆作に限りませんが、①発生しやすいかどうか、②防除が難しいかどうか、③被害の大きさ、によってその雑草の問題の大きさが決まります(図1)

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図1 大豆作における問題雑草とは?

「発生のしやすさ」
●大豆作で一般的となっている雑草(ヒエ類、メヒシバ、タデ類、シロザ、スベリヒユ等)は、発生しやすい雑草と言えるでしょう。
●一方で、最近問題となってきた外来雑草については、これまで見かけることがなかったからといって、発生しにくいとは限りません。同じ地域内のどこかで発生事例があれば、自分のほ場でも発生する可能性があると考えたほうがいいでしょう。

「防除の難しさ」
●土壌処理剤や茎葉処理剤などの除草剤がよく効くものや、中耕培土で死滅しやすいものは、防除しやすいと言えます。
●たとえ大きな被害をもたらす雑草であっても、簡単に防除できるのであれば大きな問題にはならないでしょう。
●逆に、効果の高い除草剤が少ない雑草や、中耕培土をしてもすぐに再生する雑草は防除が難しいと言えます。
●ただし、除草剤や中耕培土で防除しやすい雑草であっても、適期に処理できなければ効果が低くなることがあります。
●適期に処理できない要因として、天候や作業体制があります。
●特に、多くのほ場で生産されている方は、すべての播種が終わってから土壌処理剤を散布するのでは、遅すぎることもあります。播種と土壌処理型除草剤散布の同時作業を行える作業体制を構築しましょう。

「被害の大きさ」
●発生しやすくて、防除が難しいものでも、ほとんど被害をもたらさない雑草であれば大きな問題にはならないでしょう。
●逆に、大きな被害をもたらす雑草については、当然ながら優先的に防除しなくてはなりません。
●被害の種類もさまざまです。
●大豆作では、光、水、養分の競合によって減収をもたらすもの、つる性雑草など収穫作業などを阻害するもの、収穫物に混入して汚損粒の原因になるもの、などが代表的な被害です(図2)

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図2 大豆作で被害をもたらす雑草
 左 :生長が早く大型になるオオオナモミ。競合を引き起こします
 中 :つる性雑草のアレチウリ。競合により収量減となる他、つるがコンバインに絡んで収穫作業を阻害します
 右 :落葉期以降に発生するニシキアオイ。汚損粒の原因になりえます

問題雑草の対策 ~防除のポイント

「被害の種類に応じた防除のポイント」
●競合によって減収を引き起こす雑草については、より早い段階で防除することが重要となります。ヒユ類、オオオナモミ、アメリカセンダングサ、クサネム類などです。

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 :ホソアオゲイトウ /  :オオオナモミ

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 :アメリカセンダングサ /  :クサネム

●帰化アサガオ類やアレチウリなどのつる性雑草については、つる化する前のタイミングで防除を繰り返すことが必要です。

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 :マメアサガオ /  :アレチウリ

●収穫する際に多くの水分を保っているような雑草は、汚損粒の発生原因となります。この場合、通常の防除体系だけでは汚損粒被害を回避することができません。落葉期以降にも処理できる除草剤の使用や手取り除草などが必要になります。ヒロハフウリンホオズキ、イヌホオズキなどが代表的な雑草です。最近では、落葉期以降に発生するニシキアオイも要注意です。

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 :イヌホオズキ類 /  :ニシキアオイ

「防除が必要な期間について」
●大豆の生育が進んで、畝が完全に大豆で覆われてしまえば(外に比べて10%以下の明るさになれば)、多くの雑草は、正常に生育できないことがわかっています。
●大豆の被陰効果が得られる時期の目安として、大豆の草高と条間の幅が同じになる時期があります(図3)

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図3 大豆による被陰効果が得られる時期の目安
大豆の播種条間の幅に対して草高が同じになる時期以降に発生したマルバルコウは生存できません


●難防除外来雑草として知られているマルバルコウ(帰化アサガオ類の1種)の防除研究で見つけられた指標ですが、他の雑草を防除する際にも参考になるでしょう。
●ただし落葉期以降に発生する雑草については、汚損粒発生防止のため、さらに防除が必要となります。

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マルバルコウ

雑草防除の基本

●雑草防除の基本は大豆の被陰効果が十分得られるまで雑草の生育を抑えることです。このため、適正な播種による欠株低減とともに、スターター窒素の施用、適度な土壌水分等による初期生育の確保し、雑草との競合力を高めることが重要です。
●大きな被害をもたらすもので、比較的防除しやすいものは、まずしっかりと基本を押えて防除しましょう(図4)

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図4 大豆作における基本的な雑草防除のフローチャート
ただし、落葉期以降に発生する雑草はさらなる防除が必要です


●播種後の土壌処理除草剤の散布は、初期競合を防ぐために必須です。試験的に茎葉処理剤のみで防除しようとした例では、雑草が大型化し茎葉処理剤の効果もなくなってしまいました。
●土壌処理剤は多くの種類の雑草に効果がある一方で、極端に土壌が乾燥している条件や砕土率が低い場合に処理すると、効果が低くなる場合があります。
●土壌処理剤の効果が切れた後に行う中耕培土や茎葉処理除草剤の散布は、オプションとなります。
●茎葉処理剤は、発生している雑草に応じて選択する必要があります。大まかには、一年生イネ科雑草が生えている場合は一年生イネ科用の除草剤を、一年生広葉雑草が生えている場合は一年生広葉雑草に効果の高い除草剤を処理します。
●一年生イネ科雑草用茎葉処理剤は雑草の生育に合わせて処理できますが、一年生雑草(イネ科を除く)用茎葉処理剤であるベンタゾン液剤を全面処理できるのは大豆2葉期以降です。
●その時期にすでに後発生の雑草が多く見られる場合は、ただちに茎葉処理剤を散布する必要があります。
●茎葉処理型除草剤は、雑草が成長すると十分な効果が得られないことも多いので、早めの散布を行います。アサガオ類では3葉期までの散布で高い効果が得られます。
●大豆による被陰効果が得られ始める時(大豆の草高が条間の幅と同じになる時期)まで土壌処理型除草剤の効果が持続していれば、中耕や茎葉処理型除草剤処理は省略可能です。雑草が生えていない状態での中耕は埋土種子からの雑草発芽を促進してしまうことがあります。
●ただし、中耕培土は雑草防除だけが目的ではありませんので、排水対策や倒伏防止などその他の効果も合わせて判断する必要があります。
●茎葉処理型除草剤は散布回数に制限がありますので、雑草発生量が多い時は、固定式タイン型除草機などの株間除草機などを併用することも重要です。
●降雨などの影響で茎葉処理型除草剤や中耕培土ができなかった場合は、非選択性除草剤による大豆生育期の畦間・株間処理が有効です。大豆茎葉に接触すると薬害を生ずるので、注意しながら散布します。
●落葉終期~収穫14日前までのグリホサートカリウム塩液剤の処理により、収穫作業の障害となる雑草を防除し、手取り除草することなくコンバイン収穫することが可能です。

難防除雑草対策

●難防除雑草対策は「入れない」そして「拡げない」が基本です。
●難防除雑草の侵入経路のひとつとして、未熟堆肥による侵入があります。堆肥が未熟だと含まれる雑草種子を死滅させるほど発酵温度が上がらないためです。最高温度が60℃以上になった堆肥中ではほとんどの雑草種子が死滅することがわかっていますので、かならず完熟堆肥を用いることが大切です。
●完熟堆肥を入れていても、水系を通じて侵入する場合や機械に付着して侵入する場合などがあり、完全な侵入防止を実現するのは不可能です。
●そのため、早期発見、早期対策が重要となります。見知らぬ雑草が少しでも生えていたらすぐに抜き取るようにしましょう。

「-ほ場に入れない-難防除外来雑草対策の基本①」(図5を参照)

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図5 難防除外来雑草の侵入・分布拡大パターン
アレチウリなどに見られる典型的なパターンです。他の経路も考えられます


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 :マルバアメリカアサガオ /  :オオブタクサ

「ほ場周辺の難防除雑草を適期に防除」
●難防除雑草の多くがほ場周辺に定着してから、ほ場に侵入してきます。この段階で徹底して防除しないと、ほ場内にも広がり、作物に大きな被害が出ます。そのため、畦畔などのほ場周辺の管理も重要です。
●ほ場周辺は作物がないため、雑草はのびのびと生育することができ、ほ場の中で発生するよりもはるかに多くの種子をつけます。
●また、ほ場の中と比べて面積は小さいので、ここの管理を徹底するほうが、省力・低コストで効果的に雑草管理ができます。
●ほ場周辺の雑草を管理するタイミングですが、種子を生産させないこと、雑草は花が咲いて種子を形成することを念頭に置くといいでしょう。
●ポイントは花が咲く前に管理することです。
●当たり前のことを言っているようですが、実際には、つい手の空いた時だけ草刈りしている場合が多いようです。タイミングを外すと種子生産を防ぐことができません。
●ほ場周辺の管理では、花が咲く時期に合わせた防除が必要です(図6)。防除時期は地域や対象の雑草種によって異なりますが、関東南部では6月上旬、8月中旬、9月下旬ころが該当します。地域で一斉防除の日を決めて取り組むといいでしょう。

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図6 帰化アサガオ類を増やさないためのほ場周辺管理


「-拡げない-難防除外来雑草対策の基本②」
●侵入防止に努めることと同様に重要なことが、雑草を拡げないことです。
●複数のほ場を作付している場合では、機械に付着する土による拡散を防ぐために、必ず雑草の発生が少ないほ場から順に作業するようにします。
●また、防除しづらい雑草は地域全体にあっという間に拡がります。なので、地域全体で取り組むことも重要です。
●もしもほ場に侵入してしまった場合には、あまり発生本数が多くない初期の段階で徹底的に防除して種子を落とさないことが大切です。
●まん延してしまった場合は、使える防除手段を駆使して防除体系を組み立てる必要があります。

帰化アサガオ類対策

●つる性の一年生雑草で、東北地方以南の多くの地域の大豆作やその周辺で、すでにまん延しています。
●アメリカアサガオ(葉が丸い変種はマルバアメリカアサガオ)、ホシアサガオ、マメアサガオ、マルバルコウがあります。
●つるになると除草剤、機械除草のいずれも防除効果が低下するので、つるになる前に防除する必要があります。
●花期は8月中旬以降です。
●後述するように帰化アサガオ類は除草剤に対する反応が種によって異なるので、発生する種を確実に同定することが重要です。
●子葉のみでの種の判別は難しく、本葉や前年の発生状況などの情報と併せて判別します。
●出芽は大豆の栽培前から生育期間中の10月頃まで続きます。
●また、10cm程度の土壌の深い層からも出芽するため、土壌処理型除草剤の効果は低いです。開花時期は出芽時期により異なりますが、開花から1カ月程度で種子が結実します。
●つる性で大豆に絡みつきながら生育するため、多発ほ場では大豆を覆い隠してしまい、機械収穫が不可能となります。
●フルチアセットメチル乳剤の処理効果は帰化アサガオ類の草種によって異なりますが(図7)、体系処理を実施することでいずれの草種でも高い防除効果が得られます(図8)

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図7 ベンタゾン液剤とフルチアセットメチル乳剤の主な雑草に対する効果の差のイメージ図


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図8 帰化アサガオ類の防除体系の一例

●イネ科雑草が多い場合にはイネ科用茎葉処理型除草剤を別途散布する必要がありますが、フルチアセットメチル乳剤との併用で大豆の薬害が助長される可能性があるので注意してください。
●イマザモックスアンモニウム塩液剤を処理した帰化アサガオ類は完全に枯死には至りませんが、長期の生育・つる化抑制効果が期待できます。
●イマザモックスアンモニウム塩液剤を処理した大豆では条件によって顕著な初期薬害(矮化)が生じることが確認されていますが、収量に対する影響は小さいと考えられます。
●大豆の播種時期によって帰化アサガオ類の発生量・発生時期は異なり、要防除期間(狭畦栽培:大豆播種後~5葉期程度まで)の帰化アサガオ類の発生数は晩播で多くなる傾向にあります。よって、播種時期が遅れた場合にはより除草剤の適期散布を心がけ、必要に応じて追加の手取り除草も行いましょう。

ホオズキ類対策

●熱帯アメリカ原産の一年生雑草で、ほぼ全国に分布しており、大豆作では主に温暖地以西で問題となっています。
●主に深さ3cm程度までの土壌の浅い層から出芽し、草丈は最大1m以上となります。
●温暖地では降霜まで生育を続け、大豆の成熟期でも植物体や果実に水分を多く含むため、茎汁や果肉が大豆の汚損粒の発生原因となります。
●一つの液果に約200粒の種子が入っています。
●花期は7月下旬以降です。
●近縁種としてホソバフウリンホオズキやセンナリホオズキがあり、ヒロハフウリンホオズキと同じように大豆作で問題となります。
出芽期間が長期に渡るため複数回の防除が必要です(図10)
●また、大豆播種前に繁茂している場合は非選択性茎葉処理型除草剤で防除します。
●リニュロンを成分に含む土壌処理型除草剤の効果が高いので、播種後に必ず散布します。
●アタックショット乳剤はヒロハフウリンホオズキの5葉期を目安に散布します。
●フルチアセットメチル乳剤散布後も出芽が続くため、さらに中耕培土1~2回が必要です。
●大豆2葉期に残草が少ない場合には、中耕培土後に発生するヒロハウリンホオズキを対象に開花期までにフルチアセットメチル乳剤を散布したほうが効果的です。

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図9 ヒロハフウリンホオズキの防除体系の一例

その他

●被害が大きく防除が難しい外来雑草がまん延したほ場では、防除コストが膨大になります。
●また、アレチウリなどのように防除体系が確立されていないものもあります。
●地域全体に拡げないためにも、場合によっては他の作物への転換も考える必要があるでしょう。
●タイミングを逃すと雑草防除の難易度は跳ね上がります。広範囲にほ場が散らばっていたり、大豆の生育に大きな差があると雑草の発生状況の把握が難しくなりますので、状況把握しやすいようにほ場を団地化したり播種時期をなるべく統一して大豆の生育を斉一化することも検討しましょう。

執筆者 
黒川俊二
京都大学大学院農学研究科農学専攻

小荒井 晃
農研機構 植物防疫研究部門 雑草防除研究領域

(参考)
●農研機構 2012. 帰化アサガオ類まん延防止技術マニュアル : 大豆畑における帰化アサガオ類の防除技術
●農研機構 2022. 診断に基づく大豆栽培改善技術導入支援マニュアル「大豆栽培における難防除雑草の防除」

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