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麦・大豆

麦編 ランク区分 オオムギ

(2021年10月 改訂)

はじめに

●オオムギに求められる品質は、用途別に異なります。
●オオムギのランク区分は、
(1)六条オオムギおよびハダカムギ(麦茶用以外)、
(2)二条オオムギ(麦茶用以外)、
(3)麦茶用二条オオムギ六条オオムギおよびハダカムギ の3種類があります。
●麦茶用以外の用途は、主食用(麦飯用)、焼酎用、味噌原料用などです。これらの用途では、搗精(とうせい)(回転する砥石で外皮やぬかを取り除く作業)してから加工利用されるため、精麦適性が高いことが求められます。
●種子用や麦芽の原料として使用されるオオムギ(ビールオオムギ等)はランク区分の対象外です。

「ランクの付け方」 
●用途別に4つの評価項目があり、基準値と許容値が設定されています。(容積重と細麦率は基準値のみ)
●評価項目4つのうち、基準値を満たす項目の数でランク区分が決定されます(表1)。基準値や許容値はオオムギの用途および種類によって個別に定められています。

 表1 麦のランク区分
2021mugi_rank_oomugi_h1.jpg

六条オオムギおよびハダカムギ(麦茶用以外)の評価項目

「容積重」 
●容積重は、1Lの容積に入るオオムギの粒の重さ(g)で示されます。
●ブラウェル穀粒計(写真1)、または電気式穀粒計(写真2)で測定します。
●容積重が重い方が精麦歩留(精原麦に対する精麦の重量比)も高くなるため、望ましいです。
●雨害、日照不足、干ばつ、高温等による登熟不良、極端な早刈り、病害、倒伏、遅刈りによる雨濡れ、穂発芽等の障害によって容積重は軽くなりやすいです。
●粒の充実を良くするような施肥管理は、容積重を向上させます。

2021mugi_rank_oomugi_1.jpg
写真1 ブラウェル穀粒計による容積重の測定>
150gのオオムギを自然に詰めた時の容積を測定し、1L当たりの重さgに換算します


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写真2 電気式穀粒計(株式会社ケツト科学研究所 PM-840-2)
一定容積のカップで測り取ったオオムギを入れることで、非破壊で水分と容積重を測定できます


「細麦率」 
●全重に対する篩(ふるい)を通過した麦(=細麦)の重量の割合を示します。値が小さいほど細麦が少ないことを意味します。
●大麦の芒(ボウ)やはだか麦の頴(エイ)を取り除いて、基準の縦目篩(たてめふるい)を使って測定します。篩目の大きさは、オオムギの種類によって異なります。
●細麦率が低いほど評価が高くなります(写真3)
●穂数が多すぎた場合や倒伏した場合、細麦率が増加します。


写真3 六条オオムギの細麦率の調査(左:2.2mm篩上/右:2.2mm篩下)
六条オオムギでは2.2mm篩下の麦が細麦となる


「白度」 
●精麦の表面の白さを示しています。値が大きいほど白いことを意味します(写真4)
●基準の歩留まり(オオムギの種類によって異なります)まで搗精して、白度計(写真5)で測定します。
●白い粒が好まれるため、白度が高いほど高品質と判断されます。
●硝子率(後述)が高くなると、白度の低下につながります。


写真4 白度の違い(左:白度38.8/右:白度46.4)
*55%搗精をした六条オオムギ


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写真5 白度計(株式会社ケツト科学研究所 玄米・精米白度計C-600)
精麦をセルに入れ(写真右)、表面の白度を測定します


「硝子率」
●試料中に含まれる、硝子質粒、半硝子質粒、粉状質粒の割合を示します。値が大きいほど硝子質粒の割合が多いことを意味します。
●半透明で硝子状の部分が切断面の70%を超える粒を硝子質粒、30%以上70%以下の粒を半硝子質粒、30%を下回る粒は粉状質粒とします(写真6)
●麦粒を切断し、切断面を観察することで判定します。
●硝子率は100粒の切断面を観察し、次の式により算出します。

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●硝子率が高いと白度が低下したり、精麦時間が長くなったりするため、低い方が望ましいです。
●子実たんぱく質含有率が高いと、硝子率が高くなる傾向があります(図1)
●止葉抽出期以降の遅い窒素追肥は子実たんぱく質含有率を高めるため、避けるようにします。
●もち性や破砕澱粉粒形質(fra)のオオムギは、硝子率が低くなる傾向があります(図1)

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 写真6 硝子質粒と粉状質粒の違い(上段:粉状質粒、中段:半硝子質粒、下段:硝子質粒)
*六条オオムギの断面


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 図1 子実たんぱく質含有率と硝子率(島崎・関(2020)日作紀改変)
〇:ファイバースノウ(うるち性)、△:はねうまもち(もち性)
同じ子実たんぱく質含有率でも、もち性の方がうるち性よりも硝子率は低い


 表2 六条オオムギ及びハダカムギ(麦茶用以外)の評価基準

二条オオムギ(麦茶用以外)の評価項目

「容積重」「細麦率」および「白度」は、前項の六条オオムギおよびハダカムギ(麦茶用以外)と共通の評価項目になりますが、基準値は異なります(表3参照)

「正常粒率」
●全重に対する、粒厚1.8mm以上の精麦の重量の割合を示します。
●歩留まり65%まで搗精して、1.8mm以上の縦目篩に残った粒の供試重量に対する重量比で求めます。この時、砕けた粒は除きます。
●搗精した時の製品歩留まりに関係するため、正常粒率は高いことが望ましいです。

 表3 二条オオムギ(麦茶用以外)の評価基準

麦茶用二条オオムギ、六条オオムギおよびハダカムギの評価項目

ランク区分は、「たんぱく」と「細麦率」によって決定されます。「細麦率」は、前項の二条オオムギ(麦茶用以外)、六条オオムギおよびハダカムギ(麦茶用以外)と共通の評価項目になりますが、基準値は異なります(表4参照)

「たんぱく」 
●子実中に含まれるたんぱく質の量の割合(子実たんぱく質含有率)です。
●窒素定量法あるいは近赤外分析計(写真7)により測定します。
●たんぱくIでは基準値を1つ達成、たんぱくIIでは2つ達成、たんぱくIIIでは3つ達成とみなされます(表4)。
●子実中のたんぱく質含有率が高いと、麦茶の風味や香りが良くなるので、たんぱくが高い方が高品質となります。

 表4 麦茶用二条オオムギ、六条オオムギ及びハダカムギの評価基準


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写真7 近赤外分析計(Perten Instruments インフラマティック 9500)
ホッパーにオオムギを入れることで、非破壊で子実たんぱく質含有率、水分等が測定できます

麦芽の原料として使用されるオオムギ(ビールオオムギ等)の評価項目

●麦芽の原料として使用されるオオムギは契約栽培であり、ランク区分による品質評価は利用されていません。
●麦芽はオオムギを発芽させて製造します。オオムギ麦芽は、ビールやウイスキー等の原料として使用されます。
●大麦を発芽させて麦芽を製造するため、発芽が斉一で発芽率が高いことが求められます。
●成熟期に降雨にあったり、登熟不良だと発芽率が低下します。
●均一性が求められるため、整粒歩合が高い方が高品質です。
●子実たんぱく質含有率は、10~11%の範囲が適正とされます。

執筆者 
池永幸子
農研機構東北農業研究センター畑作園芸研究領域

島崎由美
農研機構 中日本農業研究センター水田利用研究領域

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